2008.0914 日

新幹線の指定席は万全に取ってあったのだが、さて荷造りもしたし寝よか、と早めに就寝して一時間後に電話が鳴った。誰じゃぼけ、と殊更バクレツに不機嫌な声を作って「ぁい」と返事をすると香港Jで、「すいません、寝てました?」とマシンガンのように喋りだし、こちらは仕方ないのでダレ切って蒲団に横たわったまま40分英会話(伏線)。

で、明けて翌日。起きると私は寝坊しておりました。3つもかけた目覚ましを止めた記憶すらない。怒りに震える手でそのままイマイズミコーイチに電話、予定では前日に大阪へ行っているはずだったイマイズミコーイチは準備が間に合わずに今日発になっていて、でも自分が予約した電車では早すぎるなあ、とのことで別々に行くことになっていた、のだが結局自分も遅刻なので同じのぞみに乗ることにした。

新宿から大崎、品川と乗り換えて新幹線ホームに降り、自由席(指定列車を逃したので)の1〜3号車付近で待っていると、到着ギリギリでイマイズミコーイチが大荷物抱えてよたよた走ってきておはよう、行きましょう。車内は空いているので3列席に陣取って家で食べ損なったパンなどをかじり、イマイズミコーイチは自販機でバカ高いオレンジジュースなどを買って飲んでいる。いったん大阪へ寄らなくてはいけないイマイズミコーイチは新大阪で降りて、自分はそのまま岡山まで新幹線。待ち時間がほとんどないので岡山駅は素通りして瀬戸内線に乗り換え、便所バチが迷い込んできてしまった電車で海を渡る。線路は思ったより海上部分は少なかったけど、それでも「うみらー」と海無し県生まれは内心ハタ坊になっていたのでした。

高松。

一時間弱で高松駅に到着する。とりあえず暑い。暑いがそれは別に高松のせいではない。日陰が全くない中を煙草を一本喫って、駅からすぐのビルに歩いていく。背の高いビルと、隣の低くて横長の建物のあいだにはスロープ状の丸い通路が設けられており、ばっちりランドマークではあるのだがどうも高い方のビルは半分足りないような気がするなあ、とどうでもいいことを考えつつビルに入ると「香川レインボー映画祭」のポスターが貼ってあり、それを見ている男女のカップルの背後から覗いてみるが会場がどこだかよく判らない。吹き抜けの一階では何かのイベントをやっており(日曜だしね)、キャラメルポップコーンの甘い匂いが漂う中を案の定自分は反対側(低いほう)のビルに突入してしまい、カンで上ったところは何かの模試会場で、どうもここではないらしい、と高校生の群れを抜けて例の通路で四階に下がり、エスカレータで一階に下がって再びエレベータで四階へ、ここだ。シアターは五階のようだが直截はエレベータで行けず、子供が充ち満ちいるキッズコーナーのよなところをエスカレータで上がってやっとこさ「会場」に辿り着いた。


ついた

見るからに客ではなさそうだが何か用がありそうな自分にスタッフの方は少々面食らった様子だったが、「『初戀』スタッフでござります」と言うと「あ、実行委員長を呼んできます」とFさんを呼びに行ってくれた。やがて来たFさん(女性)は控え室に案内してくれ、荷物を置いた自分はスタッフのみなさんとちょっとお話しした後、一人で出かけることにした。イマイズミコーイチの到着はちょっと先だし、お腹も空いた、と言うとFさんは「じゃあこれを」と「さぬきうどん食べ歩きMAP」をくれた。このマップ、そのまま観光案内にもなっているという優れた地図で、じゃあ行って来ます。玉藻公園(高松城址)脇を抜け、いい加減に歩いていると海に突き当たり、そこに製麺所が経営しているうどん屋があったので暖簾をくぐるとカウンター席のみの「うみべのれすとらん」。ハエが飛んでますがかけうどん大で、「あいよ」つうわけでおっさんが天ぷらを揚げているのを横目で見つつ出てきたうどんの旨かったこと、汁で腹がたぷたぷになっている。

会場に戻ろうと歩き出してしばらく、お城の脇に差し掛かった辺りで携帯電話が鳴ったので出ると隣県から見に来てくれたTさん(漫画家)からで、「いま高松駅に着いたよ」と言うので「5分で行きます」と早足になって横断歩道の無いところを突っ切り、ビルに入るとさっきのイベント会場、Tさんに電話をかけると「あ、見つけた」とビルの中から手を振っている。お久しぶりです、どのくらい久しぶりか判らなくなってしまっています。どこかでお茶でも、と駅の前を過ぎようとすると映画祭のスタッフがチラシを配っている。最後まで宣伝するのだね、とちょっとココロ打たれ、さっき会場で話をした男の子だったので挨拶をすると彼はTさんを見て「監督さんですか?」と言い、予想外な質問に2人でちょっと慌て、「この方は違います、たぶん一時間ほどすると難民みたいな人が来ますからそれが監督です」と意味不明なことを言うと「判りました、ではお見かけしたら会場へお連れします」と言った。ここのスタッフは優秀です。


お城の目の前にあった建物

いったん駅と反対方向に向かったものの、パッと見カジュアルな喫茶店は見あたらず(あるんだろうけど)あんまり時間もないし、おとなしくシンボルタワーに戻りましょうか、と再び駅前を過ぎてビル内のフレッシュネスバーガーに落ち着いた。Tさんと本当に久々にゆっくり話ができてとてもうれしい。時間はあっという間に過ぎて4時、その辺を散歩しましょうか、と店を出ると電話が鳴り、イマイズミコーイチから「いま駅に着いた」とのことであれ、さっきのスタッフくんは見つけられなかったか、と駅に向かうとすでにチラシ配りは終了しているらしく誰もいませんでした。イマイズミコーイチの後ろ姿が見えたので捕まえて、再度タワーに戻って今度はタリーズに入る。屋外の喫煙席でお茶を飲んでいるとやがて出演者のHさんがやって来た。今回旅行も兼ねて来ていたHさん+ご友人とちょっとお話をして、じゃあ僕らは先に会場へ行ってるね、と別れて四階へ。

会場に戻る途中で携帯電話にFさんからの着信が残っていることに気づき、やばい心配してるかも、と早足で向かい、イマイズミコーイチはギリギリでスタッフのみなさんにごあいさつ、あと15分くらいで舞台挨拶なので、と急いで打ち合わせ…のはずだが何でかその場で「終わった」とか言ってるので「じゃあ僕は展望台でも見てくるかな」と先に出て行ったTさんの後を追って男女カップルばかりの八階経由で三十階へ。たしかに素晴らしい眺め、海もビルもガガガガーン、と見えて楽しいが2分眺めたただけで戻らなきゃ。


海がガーン

客席に行くTさんと別れて控え室に向かうと、イマイズミコーイチは舞台挨拶のインタビュアーAさんと打ち合わせをしており、なんだやっぱ打ち合わせは終わってなかったのですか、と遅れて加わる。あ、自分は音楽を作りまして、と自己紹介をするとFM局のパーソナリティーをしておられるというAさんは「そうですか、それならご紹介いたしましょう」と言ってくれた。AさんがMくんというスタッフに「CDは売ってないの?」と聞くとMくんよどみなく「ないです」とあっさり言い切るので隣で自分は滑り、「あの、受付で販売してますおまけつき…」と弱々しく主張する。

客入れドアとは別の扉から呼び込まれて入場、お客さんは前の方から詰めて座っているせいか、さすがに満席ではないもののスカスカ感はない。スクリーンは部屋にしては若干控えめ。「どうぞ真ん中へ、舞台に上がっちゃってください」と言われたのでなんか妙に司会のAさんと遠くなってしまったが、さすがに事前打ち合わせがあっただけあり質問ばっちり、回答はオタオタといういつものQ&A、これが海外だと通訳というワンテンポがあるので質問の意味がいきなり判る(当たり前だ)というのは新鮮だなあ、とぼやぼやしていると考える時間がなくなるのだった。Aさんは音楽についても触れてくれ、「何かございましたら」と振ってくれたのですかさず「ええとCD売ってますので、あの、よかったら…」と尻すぼみなPR。でも挨拶中にサウンドトラックを流してくれて、ここの映画祭はたいへん配慮が細やか。最後にHさんを客席からお呼びして簡単に挨拶をしていただき、僕らは会場外へ出た。

イマイズミコーイチに「どうする、観ていく?」と聞くと「うどんうどん」とじたばたするのでFさんに「この近所で食べられますか」と聞くと例のうどん MAPを取り出して「ビル内にありますからご案内しましょう」とわざわざ店の前まで連れて行ってくれた。昼間自分が行ったとことは全く違ってデパートのお高級うどん、さすがに昼と同じものは…ということで自分は生醤油うどん、うまい。食べ終わって駅のキオスクに向かい、この先お世話になる皆様におみやげをちょろっと。いつだったか「さぬきうどんパイ」という頓狂なものを土産にもらった記憶があったので探したけどさすがにありませんでした。そうそう、と駅で今夜の切符を買うが、新幹線高ぇ。


うどんうどん

会場に戻り(さすがに四階のお子様は帰ったもよう)、最終プログラムなので受付は半分片付けてあり、あれCDがちょっと売れていて、いい傾向である。「そろそろ」ということで場内に入り、最後の曲が流れる中で終了を待っていると何か下北沢での記憶が走馬燈のように浮かんで消え、エンドロール(短いんで、ちょっと待っててね)のあとで実行委員長Fさんごあいさつ。おつかれさま、でございます。スタッフのみなさんと客出しをして、話しかけてくれる人、目が合うと笑顔を見せて帰っていく人などに、あまり「買って」オーラが出ないように気をつけつつ「四国のみなさん(ほんとに近県から来ている人が多い、逆に香川の人にあまり会わなかった)、さようなら」。

隣設のテーブル席でTさんとお話ししていると、最後の片づけ(山積みになったアクエリアスとか)をした会場はあっという間に何もなくなり、テープ返却とCD精算(かなり売ってくれた)をして、映画祭オフィシャルのなかなかかわいいカンバッヂをもらって撤収、「このあと8時15分から隣で打ち上げをするんですけど、お時間あればご一緒にいかがですか」と言ってくれるのだが僕らの電車は8時39分、「20分くらいなら」と移動をするとまだ店には入れないとのことで、ここで帰るというTさんを送って高松駅へ、途中岡山から来たという方とお話をし、駅で確認するとTさんの電車は僕らより遅いことが判るが「どこかで時間つぶしているよ」と言うのでTさんとはここでさようなら、来てくれてありがとう。

打ち上げ会場に戻ると何だかよく判らないうちに乾杯前の挨拶をすることになり、2人ともアドリブ利かない中をかわるばんこに謝辞を。「ほんとに上映の機会が限られているので、今回上映の機会を設けていただいて感謝しています」と言ったとき、自分としては後半部分に力点を置いたつもりだったのだが発語してみると何でか前半の「上映の機会が少ない」という箇所にムラムラと憤りがこみ上げてきて途中で林家彦六のように莫迦野郎、とか言いそうになってしまい、いけないこの人たちは上映してくれた方々、と我に返ってお疲れさまでした。


撤収迅速

案の定ちょっとだけ、と言いながらギリギリまでみなさんとお話などをしていると本当に時間がやばくなってきてしまったので、じゃすいません食い逃げします、と席を立つとすかさずスタッフの方が自分のでかい方の荷物を持ってくれ、「急ぎましょう」と走り出す。スロープのエスカレータをダダダダダ、と駆け下りて委員長Fさんに手を振り、駅までは本当に近いのだけれどダッシュ、すいません打ち上げ中に駆け足させて、とゴールインするとTさんが時間を見計らってくれたのだろう、改札前で待っていてくれた。切符を自動改札に通しつつ見送ってくれる2人と握手、なんか選挙運動中の人みたい。お騒がせしました、もっと余裕を持って丁寧にみなさんとお話をできたら、というのが超反省点です。滞在時間正味7時間の四国、また来たいです。ありがとうございました。