2010.1114 星期天

 とにかく朝飯のために仮眠のようなベッドから起床する。フロント脇のレストランは満杯だったか工事中だったか忘れましたがとにかく閉まっているので17階の別レストランに移って(メニューは全く同じ)喰って、部屋に戻ってまた寝る。再び起き出したのは12時も大分過ぎてから、午後一発目にどこか(忘れた)の取材がある。14時にフロント階でマコやジョナサンたちと待ち合わせて、エレベーターで上層階にある客室に向かう。たぶんここでだったか、或いは上映の時だったかな、何を昂奮したのかジョナサンがわあわあ自分に話かけて来て、あまりにも機関銃のように英語で喋くるため自分が「???」つう表情になったのに気付いたジョナサンは隣にいたマコに通訳させるべく(とんだとばっちり)彼女に向かって「英語のまま」何事かどががががが、と発語しているのでああ世話の焼ける、と自分はジョナサンを一発どついてから「落 ち 着 い て 中 国 語 を 話 せ!!!」と厳命する。やれやれ、さてインタヴュー会場でマコは「台湾は高い建物が少ないので、こんなに上から景色を観る事ってあんまりないんですね」とか言いながら自分も写真を撮っている。ここも地震国だからかなあ。確かに窓の外から見える景色は「見下ろす」という感じで遠くにはけっこう山も見える。まあ上映も終わっちゃったし取材に写真撮影に、と私は普段着と寸分変わらないユニクロTシャツ一枚で臨んでいるわけですが、別に手は抜いていません。抜いてはいませんが肝心のインタヴュー内容は忘れました。時間は経っていても印象的な問答はいつまでも憶えているので、ということはきっとものすごく斬新な質問は無かったという事だなきっと(写真は何だか入念に撮られたような記憶がうっすら、でも「あああどこもかしこも逆光じゃないか…」とかカメラマンが頭を抱えていたような…)。


「明るい部屋」

 取材は二時間程度で終わって、これでもう映画祭関係の「お仕事」おしまい。他の映画全然観なかったねえ今回、と言いあいながら今後の僕らはボーナストラックみたいなバカ観光客である。付き合わされるマコは堪ったもんではないと思うのですがすみません、明日には帰ります。というわけでお茶が買いたい、と自分がちょろっと言っていたのを忘れていなかった超優秀アテンドさんは事前に調べてくれていたようでお買い物ツアーを組んでくれていた。「小龍包、食べたいですか」つうことでまずはショッピングモールのフードコート(の、その辺の椅子で)で喰う。うまい。したらMRTで移動して、臺北101つう超高層ビルに向かう、前に最寄り駅近くの立ち飲み屋みたいなところでフィッシュ&チップス買って喰う(だいたいにおいて芋を喰わせておけば私はおとなしくしてますよ)。臺北101はさすがに高いが最上階まで登るのは天気も悪いのでまあ、止めにしてツタヤみたいな本屋に突入する。何故なら台湾全図が買いたいという自分のご要望からです。初めて行った国では必ずそこの(できれば現地の人向けの)地図を買う、というオブセッションがあるため毎回ツアースケジュールに微妙な負担を掛けているのは私ですが、私は前世がシーボルトだったようなので仕方が無いのですよ。

 くるくる巻いた地図をバックパックに挿してご満悦の自分はご機嫌のまま次の目的地に向かう(お茶である)。何かつらつら書いていると自分のやりたい事ばっかのような気がして申し訳ないが、イマイズミコーイチは基本海外でいわゆる「みやげもの」を買わないし他は「とにかくおかま活動」くらいにしか食費以外のお金を使わないので勢い自分の要望が通りがちではある。しかし自分の立場で考えてみると「東京で(各種条件の)いいホテル」とか「着物を買うなら」とか「日本っぽい食事」とか「温泉行きたい」とかそういうのって訊かれてもどこがいいのかさっぱりなので、実は現地の人に取ってもこういうガイドってあんまりラクな事では無いと思う。案の定マコも「これから行くお茶屋はインターネットで調べました」と言っているのでそらそうだ、台湾人がみんな観光客をご満足させるお茶屋を即答できるわけではもちろん無いわな、というわけで夜の道沿いをでけでけ歩いて着いたのは「天仁茗茶」というところ。パック品も置いてるけど通訳さんが居るので量り売りを…と説明を聞きつつ試飲などしていると視界に何か白いものが入って来た。道路側に面した店舗の奥はおそらく店主の住居になっているようなのだが、そこで二匹の子犬がちょろちょろしているのが遠目に見えたのだった。自分はすっかり関心がそちらにいってしまい、なんだかお茶はどれでも美味しいような気がして来て早々に会計をしてしゃがみこみ、とこちらへ子犬が寄って来たので「あの、触っても、いいですか?」と頼んでもらう。相当小さいが訊くとやはり生後数週間だそうで、この時期の子犬は過度に人間がいじくり回さない方がいいらしいので遠慮がちに。それでも「いいよ」と店のおっさんが言ってくれたのでベビードッグとちょっとだけ交流する。かあいいなあ、イマイズミコーイチはひっくり返って腹を出している子犬に鼻先を突っ込んでもふもふしている。


「とうきょう、いったことある?」

 ああたのしかった、とここでマコに電話が入る。「ジョナサンさんです」と言ってしばらく話しているが電話を切ってマコは少し笑い「一緒に夜市に行きませんか、って言ってます」とのこと。台湾ナイトマーケット、の事は全然知らなかったけど香港の女人街みたいなもんかな?予定も約束も無いので行こうかな、と言った後マコに「ジョナサンの話ってさ、判りづらくない?」と訊いてみるとまた少し笑って「そうですね」だと。もうこんな若い娘さん(ただし、ものすごく聡明)にまで判られてしまってウチらのディストリビューターは、と自分らの☆を再確認するのだったがめげてばかりもいられない。最後の夜(まだ夕方だけど)なんでね。

 夜市はいろんなところでやってるらしいけど、あとでガイドブック見たらこの時に行った士林(故宮博物院のあるところ)のは有名なとこだったみたい。地下鉄で駅に向かい、しばらくマコと3人でぶらぶらする。何と言うのか香港の女人街及び男人街とは違う、のは露店が道路を占拠しているのではなくてあくまで歩道に店があるところかな。それにしてもすごい人出、行きたいところに辿り着くのにえらい時間がかかる。ややあってジョナサン+ヘンリー(ひとり足らんが港版「かしまし娘」、でも2人でじゅうぶん)と合流したが「実はわたし台湾には初めて来たのですが(おまえはウン十年ホンコンに住んでで何をしていたのか)ずっと探していたCDがありましてそれでもう嬉しくってわたしは…」とべらべらべらべら喋るジョナサンの話に相槌を打つふりをしながら食べ物屋が多いねえ、とヘンリー(この人は別にやかましくはないが結局のところジョナサンの相方なので後は推して知るべし)に言うと「じゃあBig Chickenを食べよう」とにこやかに言う。ああそうだこの人は食い気の人だった、とちょっと後悔しつつ何すかそれは、と訊くと何のことは無い、鶏の唐揚げなんですがただし莫迦でかい。揚げ売りしてる露店は大繁盛で凄い並んでいるのですが自分はとにかく行列が嫌いなので「ほなではミーの分もプリーズ」と言い残してしばらく雑踏に身を隠す。せっせとトリを揚げてる店員さんの背後から並んでいるみなさんを隠し撮り(イマイズミコーイチには気付かれた)。


牛丼もある(かもしれない)

 唐揚げをまりまりと喰う。今日は朝飯以来食事をちゃんとしてなかった、というかこれもジャンクフードですがまあいいや、あっという間に平らげて(マコも食べてた)、と今度は黒いビニール袋(半透明化する前のゴミ袋のミニチュアみたいである)にストロー挿して紐で吊るしたものが現出する。何コレ、と訊くと「ミルクティーです」だと。ずびずびずびと吸い上げながら煙草を喫う。さてここらで引き揚げるかな、そろそろマコを解放してあげないと、とジョナサンたちに別れを告げて…でも今日はまだ酒呑んでない、とふと口に出してみるとマコは「じゃ、ちょっとビールでも」と言ってくれる。可愛いのになんていい子なんだ、と感激しつつ出会って割とすぐに「お二人はお酒、好きですか?」「私はとても好きで…」とかいった背筋がぞくぞくするような会話があったのを思い出し、結局毎晩通ってしまうことになった西門紅樓に向かう。オープンテラスの隅っこに陣取ってビールを空けつつちょっと個人的な話などをして(つうか、こういう時に天下国家の話をしてもしかたないし)、とそこへ塩澤さんが来た。「じゃあそろそろ、帰りますね(明朝迎えに来ます)」とやがてマコは去って行き、残された自分らは閉店間際のゲイショップをちょろちょろ見つつ、も少し呑んでおしっこしてからホテルに戻った。塩澤さんは台北郊外の九份だったかな、どこかに足を伸ばすと言っていた。


ウルフ・ホール(うそです)

 
3年前に私が取ったメモにはこの後「3時頃まで Jth」というおそろしい走り書きがあるのですがそれを思い出そうとすると頭上に濃ゆい薄桃色のもやが立ちこめてくるので一先ずここで止めにいたします。


2010.1112 羽田発松山行、上映一回目
2010.1113 上映二回目
2010.1114 三泊目
2010.1115 桃園発成田行