『すべすべの秘法』
2014年/日本/カラー/81分/HDV/STEREO/英語字幕付

両親と京都に暮らすリョータは東京での短期研修が決まり、「東京のヤリ友」であるイッセイの家に泊めてもらう事になった。朝はそれぞれが仕事に出かけて夜は一緒に過ごして寝る、ただそれだけになるはずの5日間。家に到着した最初の夜、イッセイはごく自然にリョータとセックスしようとするのだが、リョータは素直に応じることができない。実は彼には東京に来る前から一つ、気がかりな事があったのだった…。

今泉浩一は、1990年よりピンク映画(日本におけるポルノ映画)男優としてキャリアをスタートさせ、並行して1999年よりインディペンデントで一貫してゲイ映画を撮り続けている。セクシュアル・マイノリティーの映像作家が極端に少ない日本において、ドラマ性のある映像作品をコンスタントに生み出している作家という点で特異な存在である。ごく小規模な制作チームながらその作品は国内よりもむしろ海外で高く評価され、過去の作品はベルリン国際映画祭を初めとする数多くの映画祭に招待を受け、各地で上映を重ねてきた。またメインキャストにいわゆる職業俳優ではなく、常に映画初出演のノンプロを起用するのも特徴的なスタイルとなっており、各作品において随所で彼らの瑞々しい姿を捉えている。今泉は度々「演技経験のない出演者は時に(プロの俳優が決してする事のない)こちらが思いも寄らない表現をする事がある。そして自分が監督としてそれを最大限に生かせた、という手応えを感じる瞬間は、何ものにも替えがたい」と常々語っている。

今泉浩一の新作長編「すべすべの秘法」はゲイ漫画家、たかさきけいいちによる短編漫画を原作とした、6本目にして自身初となる原作もの。取り立てて派手な事件も事故も起こらない「きわめてありふれた」ゲイの日常を描く、これまでにない味わいを持った作品となっている。本作は2013年10月末に開催の第8回ベルリンポルノ映画祭での上映を前提に、同映画祭ディレクターであるユルゲン・ブリューニンクからの提案を受け制作され、同映画祭で「RETRO KOICHI IMAIZUMI」と題された特集上映の中の一本として世界初公開された。
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