2008.0423, wed

 昨年のこと。ジャカルタのジョン・バダルから、彼が主宰するQ! Film Festivalで「初戀」を上映したいという話が来たのが1月の初めで、でも映画祭の開催期間は8~9月なのでまだまだ先、と思っていたら3月になって同じくジャワ島のジョグジャカルタに住んでいるニーノから連絡が来て、「4月にあるジョグジャのQ! Film Festivalで上映させて欲しい」と書いてきたのだがイマイズミコーイチと二人、ううむ勿論上映はしたいのだけど僕らも現地に行きたい、しかし今から準備しても間に合わない、としばし逡巡したのち恐る恐るニーノに「ごみん、どうせやるなら行きたいから、次回でもいい?」と書き送ったらすぐに「ぜんぜん問題ナッシングだよん(実際こういうノリの英語で)」といった返事が来てやでやで、じゃあ来年ね、ということになった。当時はほとんど上映も決まっておらず、しかもその2ヶ月後には国内上映に関してたいへん結構な辛酸を舐めさせられる日々が待ち受けていたのだがま、その話は置く。その後ニーノとは9月にバリでのQ! Film Festivalで会えて、「んじゃ、来年の4月にジョグジャに来てね~」とか超簡単に言われて帰国、以降東京でのレイトショーだの香港LG映画祭だの香港特集上映だのベルリン国際映画祭だの大阪レイトショーだのがあってその全てに行ったりしているうちにあっという間にまた3月で、ジョン・バダルからは「ジョグジャは今年も4月開催だから、ニーノと連絡取ってみて」ということで行くぜジョグジャカルタ、どんなとこだか良く知らないけど。

 今回は映画関係者の同行は無しで2人で行くか、と思っていたのだが映画も観てくれた友人のナミさん(女性)を誘ったら「行く行く」ってことで出発日を合わせてチケットを取り、ニーノにホテルの手配を頼んでからついでに3月いっぱい上野でやっていた写真展のプリントを先行で送り、なんだ今回はけっこうスムーズ、とか思っていたのだがやはりトラブルは起きてしまい、送った写真が届いてない。映画祭は20日に始まっているのだが何度検索画面を見ても「4/15 ジャカルタにて保管」となったままのステータスを睨みつつ仕方ない、代替の写真をイマイズミコーイチが携えて成田集合が9時、つうことは自宅を7時出発…。ともあれワールド・パークスと提携していたはずのガルーダ・インドネシア航空がいつのまにやら独自のマイレージプログラムを始めており、何でかって言えばガルーダがどこぞの安全条件を満たしていないので提携を一時中止されているからで、そりゃ何でかって言えば昨年3月にジョグジャカルタで墜ちてしまったからで、でもってそのガルーダ・インドネシア航空に乗って海パン持ってジョグジャカルタに行って参ります。マイル、この攻略できないもの。


これが10$

 3人とも遅刻もなく第2ターミナルに集まって、何だか知らないけどやたら長い行列に並んでチェックイン、でかいゴルフバック持ったおっさん軍団の後ろで3人、「何でわざわざインドネシアでゴルフかねえ」とひそひそ声で話しつつ、その他もちろんサーファー集団などもおりどうか席が近くなりませんように、と思っていたにもかかわらず、右手に見えますのは金髪率の高い若年層男性、前はゴルフおやじ、左手には「戦史」なんちゃらとか書かれたミニコミ誌を持ったとっつあん坊やみたいな集団(年齢層からして実戦体験者ではなかろ)で後ろのガキが始終背もたれを蹴る、というなかなかの悪条件に恵まれてしまいました。ジョグジャカルタまでは直行便が無いので行きはデンパサール(バリ島)を経由することになっており、成田からそこまでが6時間ほど。個人テレビとかは無い席なので3人でくだらない話をしたりいきなりビンタンビールを飲んで眠ったり新聞を読んだりしているうちに夕暮れ間近のバリへ到着した。ここで一旦出国してデンパサール→ジョグジャカルタの国内線を発券しないといけない(ついでに荷物も持って行ってくれないので一旦引き取り)ので大量に日本人が並ぶ行列の最後尾でだらだらイミグレーションを待つ。今回からは一週間までの滞在ビザが10US$となったためナミさんが持ってた米ドルをお借りして支払い、荷物を引き取って外に出たときにはすでに薄暗くなっていた。

 去年はやたらなタクシーの客引きがいた空港外のベンチに腰掛け、あれ、今回は誰も来ないねえ、と煙草を喫う。残念ながら暑い、そして風が無い。じっとしていると汗ばんでくるのでそろそろ行きましょうか、と国内線の入り口に向かうとガルーダのチケットセンターがあったので順番待ちをして結構待たされ、たと思ったら「チェックインはここじゃないので中に入ってください」と言われてぎゃふん。自宅プリンターで出したeチケットを見せるとあっさり中へ通してくれ、セキュリティーチェックをくぐってから発券をし、さてバリだ、バリです。空港内では何もする事がないのでただベンチに座って土産物屋を眺めたり、虫が大発生している喫煙所で一服したりしているうちに時間、今回は数字だけはインドネシア語で0〜9まで数えられるようになっていたので呼び出しアナウンスもなんとなく判ります。もちろん英語でもアナウンスするんだけど。搭乗口に向かおうとすると以前(初めての時だったか)やはりこの空港で従業員らしい人に「自分が持っている硬貨1000円分(コツコツ集めたとおもわれる)を紙幣に換えて欲しい(紙幣だとインドネシアルピアに両替できるから)」と頼まれて換えた事があったが今回も来てしまった。換えても良かったけど今回は本当に千円札が無かったのでごめんねー、ということで。


着いたー、とか言ってる

 ジョグジャまでは所要時間1時間くらい、しかも時差が1時間あるので現地時間スケジュールで見ると10分後には着くという悪い冗談みたいな予定表である。ではあるが紙ボックスに入った肉まんパンみたいなのが出て、しかもナミさんのに入っていたキットカットにはウェハースが入っていないというミラクル、ちなみにチョコだけだとけっこうくどいです。しかし航空会社のいらん配慮なのか、僕らの後ろはほぼ日本人のおっさんおばはんツアー集団で、「高松から」「金沢では」「んまあ〜」といった会話が休み無しに聞こえてくるのでこの台無し感、さて着いた。入国手続きはバリで済ませているので後はラゲージを引き取って空港の外へ、ここがジョグジャかー、としか言いようがないのだがさて誰か迎えに来てるのやら。前日にニーノ宛で「空港には誰か来る?」とメールしたのだが返事は来ず、まあいいやニーノの携帯番号も知ってるし、ホテルの住所もあるもんねーとか思って広くはないロビーを歩き出すと前方から赤いシャツ着たニーノがてけてけてけ、と小走りで近づいてくるのが見えた(ディレクター直々のお出迎えである)。ハロー、しかし更に痩せたような気がするが、ちゃんと食ってる?初対面となるナミさんをご紹介して駐車場に停めてあった黒いバンに乗り込む。この車は誰の?と聞くと「期間中映画祭で借りてる」との返事で、後方には映画祭ポスターがべたっ、と貼ってありました。 ちなみに帰国後にチェックしたらニーノが僕らの出発「後」に出したメールが届いており「明日は僕が迎えに行くよ!cu soon!!」とありました(意味ねぇ)。

 ニーノ運転の車に乗って市街地へ、既に暗いので街の様子はあまり判らないけど空港からの道はジャカルタと似ているような。道すがらディレクターくんに「で、どうだね映画祭は」と聞いてみたところ「今年は結構いい」とのこと。「オープニングパーティーには600人来たし、オープニング作品にもたくさんお客さんが来た。ジョグジャの人はパーティーの方が好きなので、映画によってはお客さん5人とか、そういうのもあったけど…」とやや不安にさせるような事を言うが、取りあえず盛況なようでした。市街地、というよりは住宅地と商業地が混在したような辺りを進み、すっかり街灯も少なくなって、やがて車は竹壁に覆われた門の前に止まった。「着いたよん」とニーノが言い、門をくぐるとわ、睡蓮の咲く池にかかる太鼓橋がお出迎え、でもってレセプションの向うには既に緑が生い茂っているプールが見える。ガイドブックに出ていたのでプールがあるのは知っていたが、去年バリで泊まったホテルに負けず劣らずのリゾートなのでした。キーをもらってライティングされた水を眺めながらプールサイドを歩き、部屋に入るとお約束天蓋(兼蚊帳)付きベッドで、そしてすでに2匹のヤモリが玄関口にへばりついているのでイマイズミコーイチはとても喜び、「かわいー」と見とれている。しばらくするとニーノが「どう、気に入ったー?」とか言いながら入ってきたのでオフコース、いつもいいホテルで嬉しいよ。


ガイドブックには「ムード満点でカップル(略)」とか紹介されてましたが、ま…そうね。

 別室のナミさんも来てニーノに日本から持ってきたお土産を渡し、ご飯食べよう、とプールサイドのレストランへ向かう。席について4人、ビールを頼んでイマイズミコーイチとナミさんはナシ・ゴレン、自分はナシ・チャンプルを頼む。しかしテンペがうまい。来る前は「実は以前ジャカルタで食べたインドネシア料理があんまり口に合わなかったんだよね」と及び腰気味だったナミさんも「おいしい」と言っているので取りあえず安心である。どっかで携帯で話してたニーノは戻ってきてビールを飲み、「これからまたミーティングだから、飲んだら行くね(車で)」と恐ろしいことを言うので僕らは「安全運転」と声を揃えてお見送り、「明日は上映があるからマリオボロ・モールのマクドナルド前に5時半集合ね」と言い残しニーノは大量の紙袋(僕らのお土産+イマイズミコーイチが持ってきた写真)を持ってひらひらと手を振った。引き続き食事、ビンタンビールは旨いけどさすがにレストランでは高いのであと一本で止め、イマイズミコーイチはメニューを凝視しつつ「このバナナのがなぁ…」とぶつぶつつぶやいているとウェイトレスのお姉さんが「デザートかお飲物は?」と絶妙なタイミングで聞いてきたのでこってりクリームの乗ったバナナデザートを注文、あとで聞いたら「バナナが少なかった」と少々不満そうではありました。

 やでやでやっと着いた、と部屋で荷物をほどいて、寝ようと思ったら電話が鳴り、ナミさんより「さっきレセプションから電話があって朝食は含まれてないって」と言っている。帰りがけに確認した時は朝飯は6時(早え)~10時で無料、ってことでしたがタダでないらしい。まあ仕方ないやね、僕らは両替してないので有料だと足りないかもだけど部屋に付けてもらえばいいや、と思ってシャワーを浴びて寝よう、と思ったらまた電話が鳴り今度はレセプションからで「あー、朝食は料金に含まれます」だそうでどっちだよ。ナミさんに電話したら「あ、あたしんとこにも電話があった。友達にも連絡しといて、って言ったからそれで電話があったんだと思う」とのこと。イマイズミコーイチは「タダか、なら何としても行かねば」と気合いを入れている。そう…ね。



2008.0423 バリ経由ジョグジャ行き
2008.0424 上映一日目
2008.0425 上映二日目
2008.0426 ボロブドゥールほか
2008.0427 布まみれ、帰国