2008.0425, fri

 朝飯のために起床。3人ともここのパンケーキが好きなので何枚も取ってきて食べるが今日はパイナップルも入ってるね、と言っていたらどうもバナナ入りとパイン入りの二種類あるようでした。自分はパイナップルの方が好き。今日はオムレツを焼いてもらおう。唯一インドネシアっぽいのはナシゴレンくらいだったり。イマイズミコーイチは「こんなに朝からもりもり食べるのって海外行った時だけだねえ」などというが、究極的には7時くらいまで用事が無いのでヨユーである。食後、今日はクラトン(王宮、またはスルタン・パレス)に行ってみようか、でもガイドブックによると金曜は11時半に閉まっちゃうからちょっとしたら出よう、とその前にインターネット(有料)やりたい、と2人が言うのでロビーに出て行ってレセプションに申し込む。30分15,000ルピアだそうなので先にナミさん、次にイマイズミコーイチでメールチェックなどをしていたがイマイズミコーイチがうっかり30分を超過してしまい、ちと延長。その間に自分は受付の女性に「クラトン行きたいからタクシーを呼んでもらえますか?」と聞くと「あら、クラトンならすぐですよ、歩いて15分くらいですから散歩がてら歩いてみたらどうですか」と言うので僕らはそれを鵜呑みにして(伏線)じゃあ歩いていこうか、と出発した。

 観光マップで大体の場所と方向が判ったのでホテルを出て右、次の角でまた右、たらたら歩いてここがポールの言っていたスーパーか、と言いながらも歩道はどこからどこまでという感じの露店が出ていて歩くスペースなどありはしない。面白いけど暑いし、ちょっと止まって地図で道を確認してると人が寄ってきて「どこ行くんだ?バイク乗せてやろうか?」などと声をかけてくるのでおちおち呆然としてもいられない。一番しつこかった人はクラトンの近くの白い門が見えてくるまで付いてきたが、僕らがそこをくぐろうとすると「行っちゃダメだ」などと叫んでいる(ようだ)。構わず門をくぐると前方に何か公園か建物のようなものが見え、左手の鉄柵の向うには象が、何だこれ。象の前では小さな縁日のようなものが開いており、子供が遊んでいる。さてあっちの建物に行ってみよか、と歩き出すとまた声をかける人が居る。「スルタン・パレスはそっちじゃないよ」だそうでホントかよ、ともちょっとは思うが、でもかなり近いはずなのでまさかここでウソは言わないだろう。しかしどこが15分だ(この時点で40分ほど掛かっている)。やがてそれらしい門が見えてきた。けど閉まっている。ほんの少しだけ開いた扉から中を覗いてみると中に居たおっさんが笑顔で「どうぞ」と招き入れてくれた。あ、入っていいんだ。


象の前にて、大変エコな人力遊具

 おっさんは「大丈夫ですよ、でも門を開けておくと鶏とか入って来ちゃうので」と言いつついきなりガイドを始めてくれる。「今、芝生に農薬を撒いているので建物の中に行きましょう」と左手の白っぽい建物に指さす、正直なところこの人が善意の方なのかガイド押し売りの人なのか判らないが既に彼のペース、「ここは食堂です。で、あそこにあるのが先代のスルタンの肖像です」とだだっ広くて薄暗い部屋に一枚だけぽつんと掲げられたおじいさんの肖像画を「写真を撮ってもいいですよ」と言ってくれるのだが暗いし、と眺めるだけにする。ジョグジャのスルタン、は現在も何代目かがいるようなのだが、後で調べたら例の「先代」は対オランダ独立運動への貢献により、インドネシアが共和制に移行した後でも特別行政地域としてスルタン領の存続を認められ、現スルタンもジョグジャカルタ特別州の知事であるそうな。「では次」とおっさんは奥へと歩いていく。「ここでは靴を脱いでください」と言われてお堂のような建物の中へ、「ここは瞑想室です」内部には何もなく、床がひんやりとしていて気持ちいい。腰くらいの高さに穿たれた窓から半身を乗り出すとかすかに風が感じられる。いいとこだ。そのまま入り口とは反対側に抜け、長い廊下に座っておっさんがまたいろいろ話をしてくれるがいつしかおっさんは僕らの「今後の予定」を勝手に決め始め「まずベチャ(自転車タクシー)に乗って州が支援しているジョグジャカルタアートセンターに行くといい。そこは平日しか空いていないので君たちはラッキーなことに今すぐ行けば本物のバティック(臈纈染め)が適正な値段で買える。その後またベチャで戻って来れば隣のタマン・サリ(離宮)で夕方、伝統舞踊をやっているから」などとどんどん予定が決まっていく。おっさんは娘の写真を取り出して僕らに見せたりやりたい放題であるが、僕らの他には観光客っぽい人もほとんど居ないし、もしかしたらヒマなのかも知れない。

 プールなども見せてもらったあとで、靴を履いた僕らは再び最初に入ってきた門の正面にある建物の内部に案内された。ここは踊りなども行われるステージで、鋭角な屋根を持つ正方形に近い建物、でかい鐘楼のようだが中央部には照明が吊されている。壁はなく柱や梁には凝った装飾が施されており、四方から差し込む日光が美しい。ここでべたっと座ってしばし涼む。そろそろ行こうか、どうも北と南でエリアが分かれているらしく、ガイドブックによると入場料も取られるようなのだが僕らタダで入っちゃってるし、多分王宮の半分も見ていないはずだがよく判んないもののこのままおっさんに付いていくことにする。さっきの門を出て日なたを歩く。やっぱ暑い。歩きながら「この辺りの家はスルタンに貸与されているので家賃がありません。だから私達はスルタンのために仕事をします」どうも無給で王宮の管理をしているようだった。外側のちょっと大きな通りに出るとベチャが待機しているのだがおっさん、「ではコレに乗ってアートセンターに行きなさい」と僕が1人先発、イマイズミコーイチとナミさんが後発(2人乗りなので)で出発した。ありがとう、と言うべきなのか未だによく判らないもののいろいろどうも~。とおっさんとお別れ。さて僕らは何処へ行くのやら。


床が涼しいでした

 このベチャ、ジョグジャ以外の地域では廃れつつあるそうなのだが扱いとしては自動車と同じらしく、堂々車道を通る。が、なにしろ人力なので車並みのスピードは出ない。しかし車とタメ張って交差点を渡りタクシーに道を譲らせ、運転手は後ろで漕いでいるので正面剥き出しの客(わし)は照りつける日光と鼻の先に迫った自動車に絶えず脅かされるのでなかなかスリリングでありました。後ろを2人の車がちゃんと同行しているのか気になるものの、幌が付いているので振り返って確認のしようがない。諦めていると途中一度2人の車が僕らと並んでイマイズミコーイチとナミさんが呑気に手を振っている。あ、ども。やがてどこかの建物の入り口に突入してベチャは無事止まった。あ~あ。

 着いたところは奥まった建物で、ここでもまた別のおっさんが「どうぞ」と笑顔で迎えてくれる。本日は初老のおっさん祭りである。中にはキャンバスのように木枠に張られたバティックがものすごい数立てかけられ、あるものはディスプレイされている。バティックの知識などあまりなかったのだがここでは布自体を絵画のように扱っているらしい。「では」とおっさんは奥へ案内してくれ、若い女の子がバティックを制作中のところに椅子を持ってきて説明し出す。「バティックは本来とても手間の掛かるものです。1枚に二週間かかるのが普通ですが、観光客向けに作られたバティック風の布は1日で何十枚も出来ます。この『コカ・コーラ・バティック』は洗うと色が落ちてしまいますが、本物のバティックは何度洗っても色落ちしません」などと続き、自分らは工場見学に来たのだっけか、と思っているとおっさん、「ここには学生の描いたものから巨匠の作品まで、高いものも安いものもいろいろある。せっかく来たんだからいいのをゆっくり選んでいくといい」と言う。見ているとなんか欲しくなってきて、自分は薄い布に描かれた鳥の絵が気に入り、同じ作者の作品を見せてもらうが、やっぱ最初に見つけたヤツがいいなあ。しかしこれはバカでかくて(屏風みたいな大きさ)2万円くらいだそうである。「本当に買うなら二割まけるよ」と言うのだが自分の部屋には置けないよ、と断ると「こう考えたらどうだ。これを買う。その後で大きい家に越せばいい」と拡大主義的なことを言う。んな事言われたってなあ、と自分は小さいのを検索するがイマイズミコーイチがやってきて「三割まけてもいい。でもあそこの外人には内緒だよ、って言われた」だから値段だけじゃないんだってばおっさんよう。


自分が買ったバティック、これは小さいもの

 さてナミさんは、と見るとアヴァンギャルドな柄のを数点とっかえひっかえして悩んでいる。「あなたのガールフレンド(3人の関係は?と聞かれて説明が面倒くせえ、と思ったイマイズミコーイチはナミさんとはカップルだと名乗る)は目が高い、いいものばかり選んでくる」と褒められているが当のナミさんは大きさと値段で悩みに悩み、しかも片方はおっさんの作品なので更に悩み、結局おっさんのでない方のだけ一枚買うことにした、はずなのだが何故かレジの後ろでは2枚とも布を木枠から外していて、ナミさんは、と見ると「2枚買っちゃった…」と微妙な顔をしている。なんか土壇場で大幅値下げがあったらしいが、それにしたってかなりなお買い物、気づけば僕ら以外の人が誰もいないけど、ひょっとして閉店時間か?イマイズミコーイチは何も買わずに店を出て、入り口で煙草を喫っている。さて帰ろうと思ったらさっきのベチャが待っていて「さて次は何処へ」とか声を掛けて来て、バティックのおっさんまで出てきてしまってまたしても勝手にプランが設定されそうになったので、ひょっとしてクラトン~ベチャ~バティック屋まで全部込みでマージン取ってんじゃないのか、と思うがいいんだもう…。

 あのね、とにかく3人きりになりたい、とはもちろん言いませんでしたが「ちょっとお茶でもして、プランを考える」とようよう振り切ってちょっと歩き、(結局バティックおじさんお勧めの店になってしまったが)カフェでジュースとか飲む。壁一面にいろんなカレンダーが掛けてあるというユニークな店でしたが何だろうこれは。やでやでやっと放って置いてもらえる、と思ったら「コナミ(スポーツの方ね)」シャツを着たあんちゃんが日本語で話しかけてきてしまってお願い、しばらく構わないで。さてこれからの予定ですが、7時から上映なので6時半前にホテルを出るとして目標で5時半にはホテルに戻りたい。となると行けるとしてもあと1~2カ所だな。昨日ポールに教えてもらった美術館に行きたいから、タクシーでそこまで行ってからホテルに戻ろうか、と行動予定は決まって。

 で、タクシーを拾う。あまり自覚はないが初めてインドネシアに来た時はおっかなくて自力では乗れなかったのだが成長したもんだ。メーターさえ倒してくれればいいんだもんね、とそこへ僕らを呼ぶ声がする。最初は無視していたが良く見るとさっきのクラトンのおっさんである。どこまでおっさんフェアーか今日は。おっさんはどこまでも陽気に「どう?いいのはあった?これからどこへ行くんだ?」などと矢継ぎ早に聞いてくるので「アファンディ美術館」と答えると「今日は金曜だから休みだよ、夕方はタマン・サリで舞踊をやるし」などとまだまだ予定を立ててくれるのではあるがインドネシア人の「金曜は休み」というのが大して当てにならないのは経験上身に沁みているので「オーケーオーケーエブリシングオーライ」とかわして、なおもタクシーの運転手さん(辛抱強くドアを開けて待っていてくれた)に何事か言おうとするので「マジオーケーだから、ありがとうまたね」と言って車に乗り込んだ。いい人なのか何なのか。


一枚では撮りきれませんが、ヘンな建物の群れ

 案の定、開いてやがんの美術館。意気揚々と敷地内にはいるとスケールのでかいトンチキな建物が奥まで並んでいてワクワクである。最初の建物で入場料を払って、全然冷房の効いていない展示室(一館一室)で油絵を観る。去年が生誕100周年に当たっていたためか、ここではごく初期の作品から晩年の作品まで、主に油絵が中心に展示されている。具象から抽象へと変化したようだが、どちらも面白い。自分は海に月が出ている風景画が気に入って絵葉書を買った。壁沿いに階段がしつらえてあって、高いところの絵を目の高さで観ることが出来るのだが、その縁にびっしりアファンディのかぶり物(売ってもいた。イマイズミコーイチが試着したところ入らなかったが子供用か?)が並べてあって非常に気色悪い。本人がややタレント的だったりするところとか、どうも岡本太郎を連想してしまう。次の館は印象派のような柔らかいタッチの絵で、自分はあんまり惹かれなかった。二階に上がる階段があったので登ってみたがそこは保管庫のようで薄暗いロフトに未整理の絵が雑然と立てかけてある。「この先立ち入り禁止」のロープが切れているのに降りる時になって気が付いたが怒られなかったのでまあいいでしょう。更に奥の館はおそらく別の作家の特別展、電気が付いていないが入ってみるとやがて係りの人がやってきて明かりを付けてくれた。ここもまたトンチキな内装で、階段が手型だったりとか。

 入場券にはドリンク一杯サービスとあったので、小さいテーマパークみたいな喫茶に入って(店員さん達がカウンターでえんえんゲラゲラ笑っている)それぞれ瓶ジュースを飲みながら日陰で休息。向こうに見える高架の下には川が流れているよ。あ、確かこの辺にフライドチキン屋「スハルティ」があったよねえ、行ってみようかということになり、でも歩けるのかな、日本と地図の縮尺が違うからなぁ、とまだゲラゲラ笑っていた喫茶カウンターの人に聞いてみると「ここからだと2キロくらいあるから、タクシーに乗った方がいい」とのことなので通りに出てタクシーを拾う。「スハルティ、フライドチキン」と言うと運転手さんは判ったようで車は走り出した。すぐに着いたが運賃10,000ルピアを払ってお釣りをくれない。でもまあ数十円なのでいいか、と降りてわ~い今回は自力で来たよ。外に面した席について注文、アヤム・ゴレン(フライドチキン)、ナシ・グゥドゥク(煮込み+ご飯)、ガドガド(ピーナツソース掛け温野菜)にテンペ(発酵大豆を固めたもの)にトーフ(厚揚げみたいなの)に人数分のご飯を頼んでいただきます。やっぱチキンはうまいなあ。ジャカルタより旨いかどうか、そんなあからさまには判らなかったけど若干塩味が効いていて僕は好きでした。初めてのナミさんも「チキン美味しい」と食べてくれたので安心した。手、油でギットギト。


ごはんごはん

 食後、ナミさんが「バティック屋で予想以上に買い物しちゃったから、ATMでお金をおろしたい」と言う。ここまで来れば昨日ポールに連れていってもらったショッピングモールは近いよね、水とか買い足そうかとまたタクシー。方向からして反対側から乗るんだろう、と道を渡ってヘイタクシ、乗り込んで「アンバルクモ・プラザ、またはカルフール」と言うと運転手、「ミニマム10,000ルピア」と言う。あ、そうかメーターは5,000ルピアからスタートするけど、最低金額は10,000ルピアなのか。だからさっきの運転手はお釣りをくれなかったんだ。抗議しなくて良かった…のか?ナミさんは現金を引き出し僕らは菓子とかを買って、ナミさんは昨日お世話になった店員さんに再会して感激していた(今度は「レジャーシートはどこに?」とか聞いていたが結局無かったもよう)。またタクシーでホテルへ、日本で同じだけ乗ったらいくら掛かるんだ。

 予定より早く着いてしまったのでちょっと泳ぐ事にする。着替えていて気が付いたのだが、自分日焼けして海パンの跡が付いている。跡が付くくらい焼けたのっていつ振りだ、と思うがしかし昨日数時間泳いだだけなのに。「プールは6時まで」と書いてあるのだがまだいいでしょう、と薄暗くなった水にもぐったり浮かんだり。後できいたら外部の人は6時までということで宿泊客はいつ入ってもいいようでした。結局夜の水泳は出来ませんでしたけど。ナミさんは「『初戀』の前に他の映画を観に行こうかなあ」と言っていたがあっという間に時間は過ぎ、僕らはちょっとビール。ナミさんも加わって呑んでいるウチに「あ、映画行けないや」ということになってそろそろ行かないと、と支度をしタクシーを呼んでもらって乗り込んだがメーターが付かず、運転手は「25,000ルピア、オーケー?」と言うので「ヤダ、倒して」と言う機会を逃して定額制ですちきしょう。途中前を走っていた無理矢理なバイク(後部座席の人が自転車を持ってる)を見て大笑いをしながら今日の会場「kinoki」に到着した頃にはすっかり暗くなっていた。


無理目な移動

 「kinoki」はちょっと起伏のある庭にカフェテリア、その奥に劇場といった造りになっていた。飛び石のような石段を登って左手の入り口から建物内部に入ると、ロビーで夕飯(兼打ち合わせ)をしていたニーノが「ごめ~ん、今ボクは(汗で)湿ってるよ~」とか言いながらとととと、と走ってきたので本当に湿ってた映画祭ディレクターとおはようの抱擁。確かに中はちょっと暑くて、じっとしていると汗がにじんでくる。正面ロビーに向かって左側がシアター、昨日の会場よりかなり小さく、視聴覚室というか小さめの教会みたいである。ここでも入り口付近にはスチール写真を展示してくれている。ニーノが2枚のパネルを取り出し「これは別パネルの粘着テープのせいで表面が一部剥がれてしまった。本当にごめん」と謝るのでそっか、仕方ないけどここで処分かなあ、と言うと近くにいた男の子(スタッフか?)が「もし捨てるのなら欲しい」と言い出したのでいいよ、と言うと「じゃあサインもしてくれる?」と自分とイマイズミコーイチに言うのでそれぞれ一枚ずつ、オートグラフを余白に。田口さんすいません、色紙になってしまいました。君の名前は?と聞くと「DION」だそうでじゃあディオンくん、大事にしてくれると嬉しいです。スタッフと一緒にテーブルを動かしたりして会場設営、入場はすぐに始まり僕らは呼び込まれてご挨拶、前の方のお客さんは床に直座りですが30人くらいかな。「では始めます」と暗くなってハバカリロゴマークが映し出されたがあれ、縦横比が違うよ。ニーノに「多分16:9になっている。4:3に直せる?」と言うと「判った」と言って一旦上映を止め、リモコン片手に4:3指定をしたのだが画格は変わらず、「多分プロジェクターの設定が入ってしまっているんだと思う、ごめん直せないや」と言うのでイマイズミコーイチにそれを伝えると「無理なら仕方ない」と諦めて僕らは会場の外へ、お茶でもしますか。


扉の奥が劇場

 ニーノもディオンを伴い食べかけのご飯を持ってやってきて、しばらく何だかんだと話をしていたが「そうそう、明日のボロブドゥール行きなんだけど」と言い出す。ジョグジャカルタに行くと決めた時に「是非ボロブドゥールに行きたい」と言ったら「オッケー、車と運転手を手配する」と言ってくれ、どうせなら朝方行きたいなあ、と更に我が儘を言うと「判った。このディオンが運転する」と何だかんだと話していたが結局「5時にホテルに迎えに行って出発、ボロブドゥールに朝行って帰りはボク(ニーノ)の家に寄ってランチ、そこからドライバーを交代して、行けたらブランバナン(別の遺跡)寄って、最後はホテルまで送る」という素晴らしい計画を立ててくれた。付き合わされる方はかなりな負担だと思うのだが…、でも僕らもどうしても行きたいので甘えさせてもらうことにした。

 「じゃ、僕らはミーティングをするからごめんね」とニーノ&ディオンは別の席に移動し、3人でめいめい飲みたいものを(お茶とかビールとか)いただきつつしばしぼやっとする。あ、と自分は思いついてナミさんに「そろそろリサが着くんじゃないかな、電話してみたらどうだろう」と提案する。リサというのは僕らが初めてインドネシア(ジャカルタ)に行った時に通訳をしてくれた日本語が上手い女の子で、ナミさんも全く別経路で知り合いだと言うことが後になって判り、去年彼女が東京に来た時に4人で会ったのだがその時にジョグジャに行くなら一緒に遊ぼうよ、と言っていたのが実現して今日の夜に飛行機で来る(しかもボーイフレンド付き)ことになっているのだった。もう空港には着いたはずなので、事前にメモしてきた電話番号をナミさんに教えていたので掛けてもらう。しばらく呼び出し音が続き、相手が出たようなのだがナミさん、????という顔をしている。英語で「あの、これはリサの携帯ですか?」「いえ、ジョグジャにいます」「日本人です」などと喋っている。電話を切ったナミさんは何事、と注目している自分たちに「おっさんが出たけど、リサの番号じゃないって」えー。「ロンボク(ジャワやバリより東の島)にいるのか、あなたの国籍は?と聞かれたけど…」わからん。3人で?????になっていると電話が鳴り、「わっさっきの電話から掛かって来ちゃった」と電話に出るナミさん。「はい、はいそれはどうも」などと言っていて今度は何じゃらほい。「…ロンボクに来た時には私の所に寄りなさい、名前はローランド、だって…」僕らも笑うしかないが、自分は何を間違えたんだろうか。「取りあえず[リサ:おっさん]に登録を直して掛かってきたら出ないようにしよう」と言うのだが、そうね、でも考えようによってはロンボクに知り合いが出来たとも言える、と無責任な事を言うとナミさん「でもあたしはロンボクには行かないよ」、そうですねすいません。

 そろそろ上映が終わるらしいがここのお勘定は、と思っているうちニーノが「Q&Aだよ~早く来て~」と呼ぶので何となくそのまま場内に入って(のみにげ)、エンドロールが流れる中(やっぱり明かりは付いてる)どもどもども。今日も結構残ってくれていて嬉しい。会場の造りが全然違う(+マイクがハウって使い物にならないので地声)ので、昨日よりお客さんとの距離が近い感じである。が、質問は全然出ず、みんな遠慮しているのか聞きたいことがないのか、手は上がらない。だもんでニーノが「恥ずかしがってるみたい」と自分で質問を振る。「この映画の制作背景や、お2人の活動経歴などを話してもらえませんか」と言うのでイマイズミコーイチが話し、今日はちゃんとメモを取って通訳に徹するわたくし。ついでに英語でメモを取るようにしたら隣にいたニーノもインドネシア語に訳す時にちらちら参照していたのでメモ偉大なり、ナミさん(今日も記録カメラマン)ご助言ありがとう。半ば無理矢理ニーノが質問を振った欧米人が結構喋ってくれて同性婚の事とか、昨日と同じような内容の話をした。質問をしない他の人も聞いてはくれているみたいなので、雰囲気は決して悪くなかった。


Q&Aちう

 終わった後で、お客さん数名に話しかけられる。一緒に写真を撮ったけど、ここ暗いからなあ、ちゃんと撮れたんだろうか。さっき結局オンリーワンの発言者となってしまった欧米人男性が僕らの所へ来て、「映画はとても良かった、君の音楽も好きだ」と言ってくれCDを買ってくれた。更に話をすると彼がさっきニーノが言っていた「ボロブドゥール行きの帰りの第2運転手」のパスカル氏(フランス人)だそうなんでした明日はよろしくお願いいたします。これにて「初戀」ジョグジャカルタ上映は全日程(2回)を終了、みなさまありがとう。写真展を撤収し上映ディスクを引き上げ、明日は映画祭の最終日なので上映はクロージングフィルム一本だけ、つうか僕らはその前に世界遺産見物だー。まだまだ忙しそうなニーノに「じゃ、帰るね」と声を掛けると「待って、僕も一緒に出るから」と片付けをしている。ふと見ると去年のベルリン国際映画祭バッグ(参加者がもらえる)がソファに投げ出してあるので「誰の?」と聞くと「僕の。ジョンに『ちょうだい~ちょうだい~』って言ったらくれた」ってこの、おねだり上手。全然デザインが違うけど、僕らは今年のを持ってるよ。あ、そうだと思いついて「"First Love"ってインドネシア語で何て言うの?」と海外に行くたびに聞いている質問をディレクター様にしてみたら「"Cinta Pertama"だよ」ってことで、そうかチンタ・プルターマ…か…。

 タクシーでホテルへ着くとレセプションで「ナミさんに伝言です」。見るとリサからで、「ごめん、ホテルに着いたけどもう寝てしまうので明日電話して。部屋番号は…」とあり、偶然なのだがリサ達もこのホテルを予約していたのでした。そうだよねもう遅い(11時半)もんね、とは思うのだが彼女たちもボロブドゥール行き参加予定なので明日では間に合わない。恐る恐る僕らの部屋から電話をしてみると幸いまだ起きていたようで、ナミさんが「5時出発」と言うと案の定固まっているようだったが「判った、彼とも相談して後で電話する」と言って終話した。しばらく電話が来なかったのでちょこっとだけビール飲んで待つ。彼氏と揉めているのだろうか、などと言っていたが30分程して電話が鳴り、「大丈夫、明朝5時にロビーで待ち合わせよう」という事になった。自分は思い出して「そういやリサの携帯番号っていくつ?」と聞いてみましたがメモしてきたのとは局番以外ぜんぶ違ってました。自分は何を思い違いしたんだか。



2008.0423 バリ経由ジョグジャ行き
2008.0424 上映一日目
2008.0425 上映二日目
2008.0426 ボロブドゥールほか
2008.0427 布まみれ、帰国