2009.0622 星期一

10時に起きて、やはり自分が一番寝坊してふらふらしながら着替え、荷物を降ろしてさて、とここでイマイズミコーイチはベッドに横になってしまい、監督にハエがぶんぶんたかっています。「なんかね、蚊も蝿もすごくいっぱいくる」そうなのだが日本では一番蚊に食われる自分がほぼ無事で、中国の蚊に食われる人はやっぱ先祖が渡来系なのでは、と適当な事を言いながら外に出て玄関近くでは天辺くんがスタッフの人と話しているのが見えたので行くと、「隣(敷地内)の美術館を見せてくれるそうです」と言う。はて隣は美術館だったか、というのはさておきガラス張りのでかい建物に入ってみると展覧会はまだ準備中のようで、壁に掛かっていない作品があったりスタッフらしい人がなにやら計測していたりするが展示されているものは面白い。ディルド使った作品がいくつかありましたがふと、表にあった木の枝でどうにもチンコにしか見えないのがあったのを思い出した。

見て回って(結構広い)2〜3階もあるらしいのだがそろそろポポと約束した11時になりそうだったので部屋に戻り、相変わらず蝿が止まったままのイマイズミコーイチを揺するがはかばかしい反応が無いのでまた外に出て、スタッフ大部屋(無人)や向かいの事務スペースにいた犬を写真に撮ったりしていたらやがてポポが車でやってきた。あ、崔さんもいる。イマイズミコーイチを起こし、車に荷物を詰め込む。崔さんが「アリガトーウレシカッター」と言いながら僕らと抱き合って、日本に来る事があったら知らせてね、と手を振って車は晴天の宋庄を走り出した。いい映画祭でした。欲を言えばあと野菜の体験収穫(芋掘りとか)できれば完璧でしたが。


宿舎敷地内にあったこんなもの

道はバスと大差ないはずなので1時間くらいか、一昨日見たような景色が一瞬よぎったかと思うと車は細い道に入って川というか用水路というかの傍で止まり、ポポが「アパートに寄って荷物を置いてくるのでちょっと待ってて」と向かいの建物に入っていき、僕らは勝手に車外に出て煙草喫ったりしていると運転手さんも戻ってきて一緒に煙をふかしたり。やがてポポが戻ってきて「お待たせ、行こう」と再出発。日本にいる頃に「最終日のホテルは僕のアパートにすごく近いです」と書いてきていたのでもうすぐであろう。大通りを越して街路樹のある道筋に止まり、「ここです」と着いたホテルの前の道はけっこうボコボコで、転がすキャリーの振動がががががが。

フロントに行くと男の子が一人居り、ポポが予約の確認をしているが、なんやら若干もめている。予約が入ってないみたいわはははは。でも今はシーズンオフだし全然不安は無いですが、出来ればここに泊まれるといいなあ。と思っていると改めてチェックインできるようで「パスポートを」と言われたので出して、部屋のキーを貰う。部屋は3階か4階(忘れた)なのだがエレベーターが無いので息切れしながら階段を上って部屋に着く。中で二部屋に分かれており、手前に一つ、奥に二つベッドがある。荷物を置いて、このまま寝てしまいそうではあるが(ポポも)お昼ご飯一緒に、と言っていたので出ようか、と持っていく荷物を掴んだところでポポの携帯が鳴り、何やら相談をしている。もちろん中国語なのでさっぱりだが天辺くんによると「なんかビアン映画の字幕がどうとか」話しているらしい。どこもかしこも〆切ギリだねえ、と呑気に聞いていたがかなりの後、「ごめん終わった」ということでカードキーを(差し込むと電気がつく)抜いて出発。ごはんごはん。

何を食べたい?と聞いてくれるのだが中華料理に造詣が深くないので「北京料理」というものがあまりイメージできずもごもご言っていると「北京ダックを食べてみる?」と助け船を出してくれたので「そうします」と即答して超快晴の道を歩く。「オリンピックがあったから交通規制とかいろいろやって、久しぶりに青空が出るようになったんだよ」とポポ。宋庄でもそうだったけど北京ではバイク使用が禁止になって、替わりにみんな電気自転車と言うんですか、パッと見バイクなんだけどペダルとバッテリーが付いてる自転車に乗っている。「でも上海は今ごろ雨ばっか、湿気が多いし晴れないからあんまり好きじゃない」確か恋人が上海にいるはずだけどそんなことを言う。上海までどのくらいかかる?と聞くと「飛行機で2時間、電車で8時間」後で地図を見たら直線距離で600kmというところでした。結構遠い。

入ったのは道の途中にある金ピカの店、2階に上がってメニューを見る。北京ダックを食うときは他に何を頼んだらいいのか判らないので、ほぼポポにお任せである。やがて料理が運ばれてきて最初にアヒルが来たわけですがポポ、「食べ方は知ってる?」と聞くので知らないでもないけどここは現地のマナーを聞いておこうと「知らない」と答えてみると「オーケー、では」と急に立ち上がり、いきなり手洗いに行ってしまった。慌ててついて行くと「まず手を洗う」と言いながら石鹸を泡立てているのが何かおかしい。席に戻り、パン生地みたいな丸いのに皮と薬味とあれとこれと乗っけて巻いてー、でいたらきます。


写真がないため参考画像、枝豆をまりまり食うポポ@宋庄

空腹だった事もあってどんどん食う、とそこへ他の料理も運ばれてきた。鯉の形をした煮こごりのようなもの、皮以外の家鴨を炒めたもの、豆腐、スープ、とテーブルに乗り切らないほど来てその度にがちゃんがちゃん音をさせて皿を移動させる、とそこへ隣の部屋からおっさんの怒号が聞こえてきたので何だ、と見ると丸テーブルに家族と思われる一団が食事をしているのだがそこのお父さんが何か激昂して発声したらしかった。幸い怒号は一発で終わって、その後は静かに(店は別に静まり返っているわけではなかったが)会食が続く。話題は何故か「ポポが知ってる日本語」についてになり、他のアジアに行く度に披露される「イクイク」「キモチイー」を、知っているポポ、「ビデオで見て知っている」というので「じゃ、中国語で『イく』は?」と聞いてみるとポポは急に困った顔になり、「他の人が何て言っているか知らないけど、僕は「射」とか言うかな」とぼそぼそと言うのでそうか、日本人はAVとかで学習してみんな「イく」を覚えるけど、国産ポルノが溢れてないと表現は統一されないのですね(後で調べてみたら「我要射了」という表現は出てきた)。

4人がかりでもさすがに食べきれないのでどうしようか、と思っていたらポポはウェイトレスさんに何か言い、すると発泡スチロールの容器をいくつか持ってきて食べ残しを持ち帰りにしてくれている。スーパーの袋いっぱいくらいになったご飯を持って、会計をお願いしたらあ、と思う間もなくポポがささ、とクレジットで払ってしまいわ〜映画祭は終わってるのに自分らが払うよ、と言うが聞いてくれない。日本に来たら接待します、といつになるか判らない約束をして、「僕は帰って寝るけど、何かあったら電話してね」と既に顔が半分寝ているポポ(次回作は北京で働いている日本人建築家についてのドキュメントとのこと)と別れ、さて自分らは真昼の北京をどっちに行こうか。

軽装だし、ホテルに戻らずこのまま動こうか、と地図を見ながら歩き出す。全然当ては無いもののまあ南へ、とカンカン照りの北京市内、暑いです。大して歩かないうちになにやら話し掛けてくるおっさんがいて、僕らは判らないので無視して先へ行っていたが後ろからやってきた天辺くんが「自転車乗って胡同を回らないか、と言ってます。そんな高くないみたいですけどどうしましょう」ということでまあ暑いし、3人で100元ならいいか、と二手に分かれて乗り込む。以前もこんなことがあったなああれは去年のジョグジャカルタ、王宮から布屋に連れて行かれたんだった、どうも全店ぐるみのマージン取ってる風だったけど…、とやはりクソ暑かったインドネシアをちょろっと思い出しながら自転車はがたごと路地を進む。自動車も向こうから走ってきたりするが絶妙というか力技でよけたりして古い町並みを抜けていく。


ひとやすみ

途中で自転車は一軒の家の前で止まり、「ここは古い家だが見学できる。それにいま中でショーをやっているので見て行ったらどうだ20元」というのだが自分はここを見たいのか見たくないのかよく判らず、まあ行きたい人がいれば一緒に行くよ、と消極的に賛同して、どうやら入ることになったらしくて門が開き、邸内に案内された、というかショーもたけなわです。入ってすぐのところは中庭のように広くなっていて椅子がたくさんあり、入り口を背にしてステージが組まれている。そこでなんかごついおっさんが板に素手で釘を刺したり抜いたりという「ショー」うむ、とりあえず盛り上がってますがこの観客は何の人。女の子が案内してくれるがこの家の所有者はもうここには住んでおらず、オリンピックを機に観光客向けに公開したということでした。じゃああの釘抜いてる人が当主というわけではないのですね。家を出てくると自転車のおっさんズは休憩しており、さてどこへ行くべえか、お任せ。自転車はまたがらがら走り出し、途中植え込みへ豪快に農薬を散布している中を突っ切り、ガイドブックにも載っている「鐘楼」の辺りに着いた。「ガイドが付いてXX元」とか言って実際窓口にもそう書いてあるうのだがガイドブックにあった値段は絶対そんなにしないのでオッケー判った、あとは自分たちで行くよ、とちょうど自転車乗車が時間切れになったため延長しないでさようならをして、ちょっと回り込んでみると入場料だけのずっと安い窓口があったのでした。さすが。

向かいには「鼓楼」というのもあるのだが一つでいいか、と鐘楼に入る。建物の内部に入れるのだがすごく急な階段を上ると鐘を中心にぐるりと回れる。そして市内が見渡せる。でも故宮は見えないね、とイマイズミコーイチに言う。ここは中華民国時代に映画館だったそうだがどこが劇場だったんだろう。鐘楼を降りて、建物下部は売店みたいだったので入ってみたらすぐに係員が飛んできて「入っちゃダメ」と追い出されてしまいました。じゃあ何故開けておく。敷地の外に出てぼんやり座って、また別の自転車乗らないか営業が来るのをいやいや、とか言いながらまた歩き出し、通りを渡っておされ土産物屋にいちいち引っかかったりしつつ川沿いの、カフェがたくさんある辺りをぶらぶらする。どの店も屋外まで景気良くソファー席が出してあるけど雨が降ったらどうするんだろうね、ここはもしかして昨日見た映画に出てきた河畔かなあ、あ、泳いでいる人がいるけどよくこんな水の中で、と散歩は目的地も無く行ったり来たり。

更に路地をふらふら行きつ戻りつしながら売店がある辺りに行くとディーゼルとアバクロンビー&略の偽物っぽいのが山盛りになっており、暑いねえどこかでお茶が飲みたいねえ、と言いながらも決められずにドンつきまで来てしまったので道路沿いに腰掛けていると早速「足マッサージどうか」の営業が来る。マッサージ、と若干イマイズミコーイチの眼が輝くが、しばし考えた後「いや、いい」と上がっている凧を眺め、隣ではおじいさんおばあさんが楽器演奏&唄、といろいろ賑やかな公園の昼下がり、ふと見ると一人のじいさんがスポンジで作った(大きさは便所タワシくらい)の筆状のものを水に浸し、コンクリートの地面に無茶苦茶達筆な字を書き始めたので見入ってしまう。水で書いた文字はあっという間ににじみ、そして蒸発してしまうのでまさに即興ライヴ、しかしかっちょええ。更に別のじいさんが字を書き出したがこれは満州文字なのか、何を書いているのか全然判りませんでした。


流麗

また歩き出し、気づくと歩道で天辺くんがおばはんと立ち話をしている。見ると何か小さいものを販売しているようだったが、北京オリンピックグッズでしたやっぱり売れ残ってやがったな。最初はキーホルダーだけだったのがおばはんは袋から次々と関連商品を取り出し、天辺くんは交渉しつつ逡巡している。イマイズミコーイチと自分はやや離れたところからそれを眺めていたが、ふと通る人が凍らせたミネラルウォーターのペットボトルを持っているのを眼にして俄然欲しくなる。減り具合からして遠くはないはずだ、と進行方向に目を凝らすとあった、自転車の籠に凍ったボトルを満載にして売っている。「2元」というので一本買い、あ〜つめたい。天辺くんの買い物は終了したようで、やはり最初に示されたオリンピックスタジアム型のキーホルダー(しかし何故金色なのか)を買っていて、「お二人もどうぞ」と一つづつ頂いてしまいました。そうだ自分はこれの本物を見に行きたかったのだ、と急に思い出し「近ければいいんじゃないどこにあるのか知らないけど」ということでタクシーを拾い、さっき買ったばかりのキーホルダーを見せて「ここ」と言うと運転手さんはぶおん、と車を発進した。

さて自分が持ってきたガイドブックはオリンピック以前のもので、関連施設はここに建設予定とかそういった記述すらなく、イマイズミコーイチのは新しいのだがホテルに置いてきてしまっており、もう運ちゃん任せである。思ったより近づいた感じにならないので、もしかして「鳥の巣」ではなくてこのキーホルダーの製造工場(重慶とか)に連れて行かれたらどうしよう、という思いが一瞬頭をよぎるがもうちょっと辛抱してみましょうかね、やがて車はちょっと外れまで来て「着いたみたいです」。キーホルダーそっくり、というにはあまりにも現実的すぎるオリンピックスタジアムが遠くにあり、何というか初めて東京ドームの実物を見たときの間抜け感に近いものがある。姿形自体は何度もテレビなどで見ましたが、これが実際に街中に建っているのを見るとまた格別に間抜け、というか結構風景に馴染んではいるが。どこにあるのかは判ったものの入り口がよく判らない、よってどう進めば最短でアプローチできるのか確信が持てないまま何となく人が歩いている(時間も夕方で、そんなに人はいない)のに合わせていったら周囲を池に囲まれた辺りに出た。スタジアム自体は閉まっているみたい。ここでも露天でオリンピックグッズ決算セールをぼちぼちやっていました。

間近まで行けたもののそれ以上はどうしようもないのでさて、と天辺くんは「あの遊園地に行きたい」と何か(忘れた)に乗りたいようだったので行ってくれば、僕はおしっこ、トイレを探すことにするから、と言うと「いや、やっぱりいいです」ということで標識はトイレ→とどこか道の向こうを指しているのだがそれっぽいのが見あたらないのでしばらく我慢することにして、あとテレビで見たあの妙なプールはどこじゃろか、と当てずっぽうに歩いていたら見えてきた。壁が全面不揃いな泡状のもので覆われていて、なかなかよろしい。スタジアムを挟んで一帯が広場になっており、あトイレがあった、と自分は駆けていき、急に便意を催したので大に入ってみたら扉が閉まらない&真っ暗&ペーパーがないのでう〜むこれは、と一瞬怯んで仕方ない、と片手でドアを押さえつつ携帯で灯りを採って紙は持参のティッシュを出して、何とか用を足しました。戻って3人しばし何をするでもなくぼんやりベンチに腰掛け(寝始めるイマイズミコーイチ)日が暮れてきたよ、プールは微妙に青く発光しだしております。そろそろ戻ろうか、と大通りでタクシーを拾って、ホテルの住所を見せると了解、と言うことで車は起点へ逆戻り。


鳥の巣を接写

ホテル近くで降りて、マクドナルドでソフトクリーム買ったりスーパーでお土産(パンとか)を買い、部屋に戻って荷物を置いたら夕飯食べに行こうか、当てはないけどその辺にある食堂も結構うまそうだったよ、と昼間とは逆方向に歩き出す。イマイズミコーイチは来月の撮影で使う何やらを買いたいらしくいくつか店に入っていく。自分は最初は一緒に入っていたもののやがて店の前で待つようになり、あるお店では若い男性が道路でぼんやり座っている自分の方を一瞥してニヤ、と笑ってその店に入っていきましたがあれは何だったんだろ、やはりお店柄でしょうかね。どこかで待っている間に自分はDVD&CD屋で妙に安い「中国古楽」シリーズのCDを4枚も買ってしまいました。結局目的のブツは「買えた」のだったかどうだったか、買えたとしたらそれはどこでか、が曖昧になっていますがとにかくもうよろし、ということでご飯だー。

道路を何往復かしてここにしてみましょうか、といわゆるフツーの食堂っぽいところでやっぱ餃子かなあ、と水餃子、セロリと湯葉の炒め、野菜と肉の炒め物、皮蛋豆腐、炒飯と次々に頼んで、特に炒め物が旨い。これまで食ったものはどれもかなり塩が利いてます。壁には「新メニュー:犬」と書いてあって泣きました。さて食った、もう夜遅いし僕らは帰ろうか、天辺くんは「これからマッサージに行ってきます」ということで一緒に行かないの、と聞くとイマイズミコーイチは「言葉が判らないから却って疲れそう」とパスして、その辺にあった果物屋でマンゴーとライチをもりもり買って天辺くんと別れ、帰る前に街の音を録る、と自分は言いだし座り込んでライチ食いながらDATを回す。しばし車の音や屋外でご飯を食べている皆さんの声を録ったのち、セブンイレブンがあったので冷えたビール(なかなか冷やして売っているところがなく、ホテルにも冷蔵庫がない)を買い、お土産にお酒でも、となるべく「高価な」のを値札だけで見ていったら妙に高いのがあってよくよく見たらいいちこでした。なんだ輸入酒か。北京でわざわざ下町のナポレオン買っても仕方がないので「白酒」という度数60近いコーリャンのスピリッツ(瓶がかわいい)を買って撤収、部屋に戻った。


晩ごはん

宋庄の宿舎よりはお湯の出のいいシャワーを浴びて、荷物を雑に収納してさっき買った「檸檬ビール」を開けてみる。北京のビールは薄くてどうもあんま、だったのだけどこれは逆にそのせいで檸檬味が美味しい。最終日の市街地は北京満喫だったようなそうでもないような、明日は早起きだからそろそろ寝ましょうか。


2009.0618 北京へ
2009.0619 宋庄一日目
2009.0620 遠足:北京市街へ
2009.0621 上映、映画祭クロージング
2009.0622 移動:北京市街へ
2009.0623 帰日