2010.0605 土

ソウル3日目、にしてまだ数百メートル範囲でしか行動していない。いかんねこれは、と今日の完全オフは観光に費やす事にする。起き抜けにベッドでぼんやりしていると部屋のドアをノックする音がするので開けたらほたるさんが立っていて、「隣のカザフスたんが何か言ってる」という事で寝間着のまま出て行ってみるとカザフスタン嬢「ロッテワールド(遊園地)に行きたいのだけど、どうやって行ったらいいのか知ってる?」「いや、知らない」と言おうかと余程思いましたが(実際に知らないが)ガイドブックには載ってるので自分のソウル案内を引っ張りだして最寄り駅を探し、「この駅で降りれば(相当うすらぼんやりでなければ)たどり着けます」と寝起きのせいで表情筋がほとんど動いていない顔のまま伝達すると「サンキュー」と化粧もばっちりなカザフスタンは出かけて行きやれやれ、しかしこんな超超メジャー観光スポットの行き方を他人に聞いてるようじゃあこの人のソウル旅行は何が主眼なのかさっぱり判らん、という疑念が頭をかすめるが他人は他人。自分らはと言えば現地の友人にこれからガイドさせようというんだからあんまり変わらないとも言える。やがてピロピロピロと携帯が鳴って、「いまバスに乗ってるんですけどちょっと道が混んでて遅れそうです」とその友人、ジュンミからの連絡。だいじょーぶ、と返事をして水などを飲む。

しばらくしてジュンミがやってきた。実に久しぶりである。彼女は以前日本で働いていて、何年か前にソウルに戻ったのだがそれ以来、元気そうです。ああ暑いですね、とソファに腰掛け部屋を見渡し、ここのゲストハウスはなかなかいいですねえ、と査定してくれたのでちょっと安心する。東京で買ったささやかなお土産を渡して(ガイド料はこれで済ませようという魂胆である)、ええとまずご飯なんですがほたるさんがソルロンタンを食べたいと言ってます日本でプリントアウトしてきたらしいです、とその紙を渡すとジュンミはそれを一瞥して「判りました、歩いて行けますよ」ということで出発することにする。彼女は料理がうまく、かついいレストランをたくさん知っているのでソウルに行ったら是非案内してね、と前々から言っていたのだった。遮るものが無いので日光をガンガン浴びながら歩いて、何と言うのか更地を建物が取り囲んでいるようなところにある古い建物を指差して「これですね」とジュンミ。いやあここは多分、僕らだけでは入れない。ソルロンタンというのは自分も初めてなのでどんなものかと思っていたら牛の肉・骨を煮込んだスープ料理でした。固まり肉が食えないイマイズミコーイチはしくしく泣きながら「じゃあこの置いてあるキムチたべる」と情けない顔をするのでジュンミは「あ〜でもそれではあんまりですね(めんどくせえな)」と言いながらお店の人に白飯を頼んでくれた。さてこの料理、塩味はほとんど無いので自分で調節して入れる。朝飯(もう昼だが)向きかも知んないねえ、とたぷたぷになった腹のままお会計、あれイマイズミコーイチの分は、とジュンミに聞くと「タダでした」だそうでラッキーくん。


↓の寺

今日は観光デーなので、と歩いて途中とてつもなく派手なお寺(駐車場スペースの上に極彩色のちょうちんが吊るされており、上から見ると大韓民国国旗になっている)に引っかかりつつギョンボッキュン(景福宮:朝鮮王朝の宮殿)に行く。「なんかものすごく値上がりしてます。私が子供の頃は数十円だったはず」という入場料(まあいろいろ再建工事とかしてるし、物入りなんであろう)を払って中へ、とそこに立て看板があって「1時から衛兵交代のパフォーマンスあり升」だそうなのでじゃあ見て行こうか、とぶらぶらしながら炎天下を待つ。その前からコスプレの、もとい時代劇みたいな服を着た(すごく暑そう)人たち(全員男性)が辛抱強い感じで立っていたのだが本当に1時までは何もなさそうだったので取りあえず敷地内を見ておこか、とこれまた遮るものが全くない&敷石が真っ白という二重に日光がキツい中をそれぞれの宮殿を見たりなど。紫禁城に行ったことのある自分とほたるさんは「なんか規模はともかくとして似てるわ、色味が違うけど」などと話しているうちに門の辺りがざわざわとし始め、実演スタートらしいのだけどこれ門の外でやるの?チケットもぎられちゃったけど、と言うとジュンミはその辺にいた係員の人に聞いてくれ、「半券見せれば再入場できるそうです」つうことで既にカメラを持った人がずらりとしているところをすいませんちょっと、などといいつつ微妙に割り込んで、あんまり聴いたことの無い感じの音楽が鳴り響く中を隊列の皆さんが交代している。この曲はなかなかいいねえ、と暑さでぼうっとしながらめていた。その後はさっき見たところまでを飛ばして一番奥の建物まで見て回り、これはどうなっているのか向こうになんだか立派なお城みたいのが見えるので行ってみるとそこは民俗博物館で、僕らが数年前に来た時にはこんなのはなかったな、と入り(入場無料、なのか宮殿のチケットと込みなのか)たらたらと見て回る。入り口に十二支の石像が輪になって配置してあり、それぞれ自分のと撮影してみました。あ、あと途中の道ではタイトル画像にもした名前の判らない鳥がおり、なんか商売繁盛のトリらしいので明日の大入祈願。


楽隊、そして工事現場

敷地内では「3時からタダのお茶会」などというのもあり特にほたるさんが興味を示しているのではありますがそれまでの時間が中途半端に空いてしまうのでひとまず景福宮を出て、ちょっとお茶が飲みたいねえとジュンミが探してくれた喫茶店に入る。冷房の効いたお店で一息ついて、さてこれからどうしましょうか。このメンバーだとガンガン仕切りたい人はおらず、微妙な「これが(したい、もしくは食べたい)」という希望がぽつぽつとあるだけなので、私の仕事はそれらをなるべく大変じゃないようにつなぎ合わせるだけなのだが実は最初にこの辺りに来てしまったのが結構厄介で、イマイズミコーイチがうわごとのように「サムゲタンサムゲタン」と言っている有名店「土俗村(トソクチョン)」はすぐ近くなんだけど食うにはまだ早く、かといってその他にはあんまり行きたいところも無いので仕方ない、一旦ここは離れてですね、別のところに行ってから戻ってきましょう、と話をまとめて(本当かよ)喫茶お会計して、バスで南大門(ナンデムン)の辺りへ、現地の人と一緒だとバスも安心。「なんかいつも目的地と微妙にズレたところに止まるんですよねえ…」とジュンミ。着いて早々南大門市場の入り口でホットク(鉄板で揚げ焼きにした平たいパン状のもの、具は蜜だったり野菜だったり)を買い食いする皆様。メジャー観光地なので日本語も多数、呼びかけも多数でもはやアメ横とどこがどう違うのか、自分には明確に説明できない。そして焼けてしまった崇礼門(南大門)が覆われているのが切ない。あからさまに日本人向けのお店などもあるし、なかなか愉快な商品もありはするのだけど特にショッピングの鬼と化す人も出ずにさらっと一巡して、歩いて明洞(ミョンドン)へ向かう。「かわいい子がいるとこに行きたい」というHくんの雲を掴むようなご要望にお応えすべく、というか正直知るかそんなもん、ではありますがまあ繁華街(それも錦糸町みたいなのではなくて)に行けばいいでしょう、とけっこう近いのね、と日帝時代の旧朝鮮銀行本店(現:貨幤金融博物館)を横目にハンカガイへ。

さすがに土曜の昼下がりで混みまくってます明洞。そして屋台の揚げ物にひっかかる皆様。自分は螺旋状に切ってあるジャガイモ丸ごと揚げ、にやや心を奪われるがよるのさむげたん、に備えてがまん。イマイズミコーイチは薩摩揚げみたいなのとか長大なソフトクリーム買っておりました。しかし自分らは数年前に来ているはずだが全然記憶にない。進出している外国資本の店は日本とあんま変わらないと言うか、入ったことありませんがForever21とかさ、あとユニクロとかね。ジュンミが「ABCマートで靴でも買おうかなあ」と呟いたのでじゃあ入るか?と言ってみるが「いやあいいですそれよりもっと観光ぽいところを」と明洞聖堂(カトリック教会)に案内してくれる。坂道を登って、割と新しい教会に入るとどうもちょうど結婚式が終わったところらしくて人がぞろぞろ出てくるのと入れ違った。「今日は夕方からお葬式だそうです」とどこで見たのかジュンミ。忙しい教会だね。堂内で休憩(こら)して、やはりABCマート、入ってみようではないですか、とほとんど気分はセンター街だが靴を見てみる。予想していたことであるが別段びっくりするほど安い訳ではなく、ジュンミにどうすか、と聞くと「ネットで買う方が安い」とのことで資本主義は袋小路、明洞おしまいで次へ。Hくんに「そういやかわいい子いた?」と聞いてみると「3人くらい見つけたから、充分」との返事でちょっと安心。バス停の近くでは出店のおっさんが何故かクラリネット吹いていて妙に哀愁でした。


明洞で撮った写真はこれだけだった。しかし超うっとり。

再びバスに乗ってソウル駅へ、前回同行者が(3年前。私じゃありません)大はまりしたロッテマート(スーパー)。現在では立派な観光スポットと成り果てておりやたら日本人に親切な解説がそこら中にある。先年わたしは胡麻油を買い、非常に重宝したものでしたがそれがちょうど切れていたのでそれと、あと海苔とクッキー(土産用)を買い…ああそうそうツナ缶と、と相変わらず不断の買い物のようなもんですがほたるさんは卵型した謎の海藻キムチ(要冷蔵)を見つけて満足げで、Hくんは割と自分と似たようなお買い物イマイズミコーイチは買うものナシ、でそんなには粘らずにささっと決めて、さて帰ろう。再度バスに乗ってゲストハウス、慣れると下手にフロントなどがあるホテルよりも帰宅が気楽。荷物を置いて一服してからバスで今日最初に行った景福宮のあたりまで、ソウルに来ると毎回寄っている土俗村はもういつ来ても並んでいるので今回も壁沿いに並ぶ。でも前回は真っ昼間でものすごく暑かった記憶があるのでまだマシだな。思ったよりささっと行列は進んで(向かいの雑貨屋付近でうろうろしているインドネシア人みたいな男性集団が並ぶでもなく店の写真を撮ったりしているのがよく判らないが、もしかしてもう出てきた人たちなのか)店内へ。いくつかメニューがあるらしいが蔘鷄湯(サムゲタン)しか頼まないので…と席について、自分らのテーブル奥に座って「地球の歩き方」などを広げているグループが「サムゲタンとパジョン(チヂミ)」を頼んでいる。それを小耳に挟んだジュンミが「なんか日本のどこかでサムゲタンとパジョンはセットで、と間違った情報が流れたらしくて本当に頼んじゃう人がいるんですけど、絶対食べ切れません」と耳打ちする。確かに粉ものとスープを一気に食べたら膨れそうだ。3年ぶりのサムゲタンは相変わらず大変よろしく、高麗人参は大変たいへんでした。

店を出てバスに乗り、ゲストハウスの近くまで…と思ったらジュンミが「あれれれれこのバスは停留所を間違ってます」と着いたのは光化門のあたり、まあいいやちょっと散歩、とすっかり夜になった街中を歩く。現在移築工事中の光化門の前は左右の道に挟まれた芝生のグリーンベルトになっており、その更に中央には世宗大王(10,000ウォン札の人)のでかい像がライトアップされている。しかしカップル多い、両脇を車がびゅんびゅん通るアベックゾーン。ジュンミに今日はどうもありがとう、明日の上映でまた、とバイバイして僕らは歩いて帰宅。昨日「(今夜は)イテウォンでパーティーがあるから」と言っていたドンボムに電話すると「上映さっき終わったので、1時間後にインサドンのスターバックス前で」という約束になり何だかよう知らんが「ジャパニーズゲイナイト」に行くことになった。ので1時間ほど仮眠。イマイズミコーイチは日本から持ってきた卵形の「美顔器で」体中をマッサージしていた。


向こうに見えるのが光化門(の覆い)

あっという間に時間は過ぎ、昼間はやっていなかった道路工事でそこら中ほじくり返しているインサドンを歩いて行き、前方にドンボム発見。なんかもう一人いる。「友達」ということで紹介されたそのデイヴィッドはニュージーランド出身だそうだ。「それはそうと、何で今日の上映に来なかったの?」と2人に聞かれるがはて、そんな約束をしていたっけね。何か話が食い違っていたらしかったが向こうは来る約束をしていたと思っていたんであろう。その辺の事実確認は曖昧にしたままタクシーに分乗して梨泰院まで、車内でデイヴィッドが韓国語喋ってるのがなんか珍しく思える。彼は韓国フィルムセンター関係の仕事をしているそうだ。さて車が止まり、ゲイバーがいっぱいある坂の多い辺りに降りる。8年前に来たときここの知人宅に泊まったなあ、お店とか全然違ってるけど。丘の中腹にあるバーに入るとドンボム+ほたるさんHくんは既にビール飲んでおり、ドンボムは「夕飯食べてないので、ちょっと食事してくる」とどこかへ消えてしまった。残された僕らは店の外にある席でデイヴィッドと話をしながらさすがに土曜の夜だけあって人が多いねえ、とまたビール。しばらくしてドンボムが戻って来たのでその正体不明の「ジャパニーズゲイナイト」やってる店に向かう。やや丘を下って入った店はさっきのより大分広くてバーカウンターもでかい。時間が早いせいかまだそんなに混んでなくて、席について注文をして、しばしたらたらと時間を過ごす。しかしどの辺が「ジャパニーズゲ(略)」なのか、貼られていたポスターは日本で見慣れたイラストだけどこれはパーティー名か?あとで調べたらこのイラストポスターは日本の下着メーカーのものだったので、スポンサーだったのかも。


日本パーティー

デイヴィッドはダンスミュージックに何がしかの強いポリシーがあるらしく曲が変わる度に「これはいい」「こりゃダメ」などと言うのだがそのうちフロアで踊りだし、さっきまでの一曲判定は何だったのか、どの曲でもぶんぶん踊っているけどまあいいか、と一緒になったりしているうち、ドンボムが自分の携帯に来たメール(何故か日本語、たぶん自動翻訳)を見せてくれるがそこには「少年ショーを始めてください」などと書いてある。これだとなんか剥き出しっぽいがその「時間」になりドラァグクィーン+ゴーゴーボーイ2人の「ショー」が始まった。ドラァグが韓国の人でゴーゴーが日本から、という事みたいだったけど逆だと言われても信じそうだ。ゴーゴーの2人はポールダンス披露でした。さて見たし、もうちょっとしたら帰ろう、とそこへ何故かデイヴィッドが試験管に入った「Jägermeister」を人数分持ってきたので乾杯してお開き、「明日ね」ということでタクシーを呼んでもらって鍾路3街まで戻り、ああそうだここは土曜は屋台がゲイしかお客を取らないらしい(3年前はここでえらいことになりました)よ、と覗いてみましたが全くそんな事は無くなっておりあれ、廃れてしまったのか。仕方が無いので映画祭会場のビルを横断してインサドンをコンビニエンスストアまで歩き、そこには始めて実物を見るチェリーコークがあったので買ってみてからゲストハウスに戻ったのは午前2時半すぎ、カザフスタン嬢も帰宅しているようで相も変わらず部屋越しにテレビだか何だかの音がガンガン響いておりました。


2010.0603 羽田発金浦行き
2010.0604 上映一回目
2010.0605 ぐるぐる
2010.0606 上映二回目
2010.0607 金浦発羽田行き