2010.0606 日

夜更かしをしてしまったため遅めに起きる。上映は前回と同じく15時、なので遠出はできない。ゲストハウスのある路地から大きい通りに出たすぐにところに化粧品のショールームみたいな真新しい建物があって、これまで全く気にしていなかったのだが改めてよく見るとお茶のお店。茶器を置いてる土産物屋にも埃をかぶってそうな「茶葉」はあるのだけど(そういうほうがもしかしたらいい葉っぱかもしれないが、素人には判断がつかないので)こういう方がまあ無難であろう、と店に入る。あんまりお客さんがいないのですぐに店員のおねいさんにつかまり試飲サービス。これまで伝統喫茶で飲んだ、日本の緑茶とはかなり味の違うお茶の味、これでいいかな、と思っているとおねいさん、「2パック買うと1つサービス」という豪快なことを言う。なので3つくださいだったら実質33.3%オフ、しかし3パックも要らん、と逡巡しているとほたるさんが「じゃあ自分が土産用に1つ引き取ろうか」と言ってくれるので自分は2パック、茶葉は他にもたくさんあったけど考えだすと迷いそうなので試飲したコレで、とお願いする。自分たちが離れた直後に日本人団体(じいさんばあさん)が「あらお茶じゃない」とか言いつつ(そらそうだ)試飲コーナーにわらわらと群がっていた。

さて昼過ぎですが朝御飯、今回の「食べてないものリスト」にまだ残っていた冷麺があるところで、ということで向かいのレストランに入る。冷麺だけだと軽そうなのでパジョンも一枚頼んで、どうもこの組み合わせは季節感や気候を無視したものかも、と以前友人に聞いた話を思い出しながらあさごはん。一旦部屋に戻って茶葉を置き、少し早いけど劇場に行こうか、「STARMOON COFFEE」でお茶でも、と行ってみたら店内にはドンボムほか映画祭スタッフがいて、おはよう。あんまり寝てないんじゃないかと思うが大丈夫?彼らはそろそろ移動するところだったらしくて後釜に自分らが座る。しかしこのハイテク呼び出し機、と赤く光ってぶるぶるふるえる円盤越しに入り口をぼんやり眺めていたらジュンミが入ってきた。何だろうこの友達の輪。彼女はしばらく自分らに気付かず列に並んでたが、イマイズミコーイチがわあ、とか言って声をかけて同席する。朝ご飯にサンドイッチ、と店内で売っていたパックを開いて食べ始めるが半分くらいのところで「なんか面倒くさくなってきました(口癖)」とサンドイッチを鞄にしまい、5人で連れ立ってアートシネマへ。


エレベータ入り口

さすがに日曜なので前回よりはお客さんがいる。ドンボムをつかまえて「今日は通訳の人いる?」と聞くと「申し訳ないですが、いません」ということなのでこんな事もあろうかと、とジュンミを引っ張ってきて引き合わせ、その場で通訳をお願いする(すいません…)。ついでに日本から持ってきた「初戀」のDVDをブースに置いてもらって、まあここの相場からするとバカ高い(けっこう値引きしたんだけど)から1枚売れたらいいか、という程度なんですが一応5枚。開場前なので外の券売所には5〜6人並んでいるが、ふと見覚えのある顔が眼に入ったので前まで行って「いよす」と言ってみると彼は一瞬判らないようだったが「あ」と思い出したようで久しぶり(8年ぶりか?)、のニナノくん。前々々々回に「NAUGHTY BOYS」の上映で行った時に観に来てくれて知り合ったのだがその後音信不通になり、今年になってFacebookで再会して「ヒマだったら、来てね」と軽く約束していたのを本当に来てくれてうれしい。後で、と手を振って別れ、さてそろそろ上映開始。お約束の何か(フライパンではない)プレゼントもありました。

映画、前回も観たのでどうかなあ、と思っていたが途中で抜けるほどのことはないか、ともう一回観る。あれ、でも何で意味が判るんだろうと思った作品があって考えたら前回は無かった英語字幕が付いている。一昨日観た時にはなんでこれがクィア映画かさっぱり判らなかったのが(主人公の女性が中絶して傷心のところを男の人と出会う、というのしか判らなかった)これで納得。しかし今回もピーター・キムのやつは英語字幕無し、でお客さんが大受けしてるのが正しいのかどうか判定不能なのがちょっとくやしい。自分の作品は相変わらず話が伝わっているのかどうか、だけがちょっとしんぱい。上映が終わって「さてゲストの皆さんに…」という呼び込みで前に、おい随分いるな。ステージの端から端までいっぱいに監督に出演者にずらずら並ぶのは壮観ですが金曜日(自分らだけ)とは偉い違い。昨日の夜にゲイバーでイマイズミコーイチがドンボムに「金曜は舞台挨拶に誰も来てなかったけど、なんで?」と聞いたとき、彼は「そんなのこっちが理由を聞きたい」とやや逆ギレ気味に答えていたのが印象的でしたが、なんか卒制みたいなクレジットの映画も多かったし、平日は来られない人ばっかりだったのかも、それにしてもこの落差。


上映中である

司会者に近い方からマイクが回ってきてまず一言づつご挨拶、でジュンミの通訳でこんにちは、でその後は質疑応答だったのだがピーター・キム及びもう一本の監督(この人は面白い事言う人です、とジュンミ)のほぼ独走状態で自分たちにはさっぱり質問など来ず、まあ金曜に随分やったのでいいんですが気分的にちょっとバランスが悪い。1つだけ採録しておくとピーター・キムへ「街中で男の子2人がキスするシーンがありましたが、役者さんはすんなりできたのでしょうか」という質問があり監督、「自分はいつもフツーに街中でキスしますよ(だから平気)」という訳の分からない回答で困るなそんな現場、と思った事でしたが、ダメだろう。時間になったのでロビーに出ると何人かのお客さんが話しかけてくれて、けっこう面白い質問をしてくれたのでこれで良しとする。しかし「STARMOON COFFEE」で入れ替わり立ち替わり「やだ〜」とか言っている(推訳)みなさんは来てないんだろうなあ、とすこし思った。

お客さんにありがとうを言ってジュンミとカンカン照りのコンクリート中庭に出ると向こうでイマイズミコーイチが手を振っており、眼を凝らすと懐かしい顔がたくさんある。さっきのニナノにソンウォン、初韓国の時からの友人ソー・ドンジン(と彼氏、初対面)が来てくれていた(ありがとう)。これで事前に連絡が取れた人とは大体会えた。「どうしよう、時間が半端だけど飯にする?」と聞かれたで予定を思い出してみるとああそうだパクジンはどうしたのやら、と電話をしてみる。彼は3年前に「初戀」をこの映画祭で上映した時のディレクター(つまりドンボムの前任者)で、いまはプチョン国際ファンタスティック映画祭のプログラマーをしているが今年のプチョンでイマイズミコーイチの新作をやるというのもありソウルで会おうと言っていたのだった。元々は金曜の上映に来ると言っていたのだったが多忙で無理との連絡が来て、今日は来ると言ってたんだけど…。パクジンの携帯は数度呼び出した後でつながり、「あああああごめんなさい行けませんでしたああ」という悲鳴のような声が聞こえ、相当キている感じだったのでこちらは努めて冷静に「それは残念、明日は帰国なので多分会えないね、でも来月また来るから」と電話を切り、はい予定無くなりましたどっか行きましょう、と待っていてくれた皆様に向かって言うと「じゃあ最初はお茶かな」とぞろぞろ連れ立って歩き出した。


さてどこ行こか。

近くの喫茶店に入って注文をして、自分らの近況報告など。自分の左隣がドンジンでその向かいが彼氏、でこの人たちは付き合って1ヶ月くらいだからなのか何なのか、どうでもいいことでいちいち揉めており、何を話していても最終的に彼らの「やだぁもうこのひと(はぁと)」で落ちてしまうのであまりためになる会話には発展しない。昨日、イテウォンで日本人がやってるんだか集まるゲイバー3軒くらいあると聞いたけど知ってる?とドンジンに聞いてみると彼氏(名前聞いたけど忘れた。20代前半)を指差し「彼に聞くといい、この人は"Gay Encyclopedia"だから」と妙に拗ねたふうに答える。さいですか、と何か改めて質問し直すのもねえ、とその話はよく判らないまま終わり、以下同じようなトピックを持ち出すも3パターンくらいですべて「彼に聞くといい(略)」。ゲイナイトでドラァグクィーンとゴーゴーボーイを見たけど、最近は韓国にもたくさん居るの?という質問だけはドンジンが「イベントがあると(ドラァグやゴーゴーを)派遣するエージェントがあって、まあビジネスなんで自然発生的なものではないかな」と教えてくれた。あとさっきの映画の話になってHくんがピーター・キムの映画について「ちょい役の子が一番かわいかった」と言う(この人は昨日のゴーゴーもどう見ても二番手、な方を断然いいと言ってた)のではて、この場で皆さんにアンケートをしてみるとHくんと同意見なのはドンジンだけでした。

さてそろそろご飯に行こうか、と全員で僕らのゲストハウス「隣」にある大きなビルに入る。もう完全お任せ、で鍋を中心にたくさんの皿とマッコリ、うれしい。総勢9名には共通語がないため(気付けばニナノは大分日本語を判るようになっている)どうしても日本語/韓国語で会話が分かれてしまうがそれでも時折混ざりながら楽しく食事をして1時間ちょっと、ドンジンカップルは「今日はそろそろ帰らないといけない」ということでお開き、店を出たところでさよならをした。来てくれてありがとう。まだ時間はそんなに遅くない、ソンウォンが「どうする、呑みに行こっか」と言ってくれるのでニナノに「一緒にどう?」と言うと来るという。その前に映画祭会場に行ってスタッフに挨拶をして、DVD(1枚売れた、とドンボムが売上げをくれた)の残りを引き取り、ほたるさんは土産用に化粧品を買いたいらしいのでジュンミに付き合ってもらって買い回ってから合流、と話はついてイマイズミコーイチと自分、Hくん、ソンウォンとニナノの5人で鐘路3街のあたりに差し掛かり、ああそうだこの辺の屋台は廃れちゃったの?と聞くとソンウォン「いや、そんなことは無いはずだけど今の時期は試験期間中だからかも」って3年前のあれは学生だったのですか、とあれあれ数十分ほど前に別れたドンジン+彼氏がその辺を歩いてる。帰るんじゃなかったんけ、と言うと「いやいやこれから、いままさに」などと手をつないだまま不明瞭な事を言っているがまあいいや、と2度目のバイバイをして、ついでに「どっかゲイバー行こうかと」「それなら彼に聞くといい(略)」。


珍しく前もって「撮りますよ」と言ってから

実際「彼に聞い」たんだったのか忘れましたがソンウォンの引率でとある半開きと言うかオープンカフェ風のバーに入る。熊系と聞いたような気もしますがよく憶えてません。いずれにせよ初めて来た店。あんまり明るくない中をニナノが持ってたiPhoneのGrindrで近くにウサ耳付けた(プロフ写真の)人が居るようですとかまあ他愛も無い話をしてましたがしばらくあってジュンミから電話。「買い物終わりましたがどこにいますか」と言われても「LOVESTAR」という店名以外はうまく説明できないのでソンウォンに替わってもらい、どうやら理解できたようだったので電話を切る。それからあまり時間も立たずにジュンミとほたるさんがやってきましたがジュンミはぶりぶり怒っており「ここ来る途中で変なおっさんに『アジュマ(おばさん)火ィ持ってない?』って言われましたおばさんとは何だオラァ」とガンガンとテーブルを叩いて(誇張)煮えているのでまあまあ確かに災難でしたがその人はきっと外国人ですよ、とおざなりになだめ、今更ですが女の人も大丈夫なのねここ、とビールを注文する。今日も一日ありがとうございました乾杯。そしてまたしばらくあってドンボムから電話があり、「上映さっき終わりました、今どこですか」とのことでまたソンウォンに替わってもらい(中略)ヘロヘロになったSeLFFディレクター到着、おつかれさまでした乾杯。

お疲れのはずのディレクターはそれでも割と活発に喋り、今の大統領(イ・ミョンバク)になってから文化関係の予算が大分厳しくなってしまった事などを教えてくれた。さっきのアートシネマも支援のお金がなくなって運営が大変になり、そこで働いていた友人も辞めざるを得なくなって、転職した仕事が忙しいのでと今回会えなかったりしたのだった。「何日か前に地方選挙だったんだけど、与党は負けた」と当然、という顔つきで言う。ほたるさんも演劇関係は日本でも大変で、とそんな話など。ソンウォンがそっと耳元で「君の友達(ジュンミの事)はとてもいい子だねえ」と何が気に入ったのか判らないがささやくのでそうでしょうとも。さてそろそろ夜も更けたので帰ろうか、と小ぶりの段ボール箱(上映が終わったマスターテープだと)を持っているドンボムがタクシーに乗り込むところまで送り、じゃあ来月プチョンでまた会おう「帰路お気をつけて(無くすなよ)」。そしてソンウォン、ニナノ、ジュンミともここでお別れ。ありがとう、また来月。これにて映画祭参加はおしまい、明日帰る。


2010.0603 羽田発金浦行き
2010.0604 上映一回目
2010.0605 ぐるぐる
2010.0606 上映二回目
2010.0607 金浦発羽田行き