2010.1005 TUE

 昨日と同じく7時半くらいに起きる。今日は早めに行ったせいか昨日は見た事がなかったヨーグルトとかあるのでもりもりもらってみる。そしてまたワッフルをいただく(至福である)。ラウンジには誰かの飼い犬がうろちょろしておる。昨日自分が観たヴェトナム映画のディー監督がいたのでおはようござります、と同席する。昨日はいろいろ聞くチャンスがなかったので、映画について質問してみた。主演の子は演技経験がなくて、要は素人なのだけど両親が理解があって出てくれたのだとの事。ただし彼のおばあさんが大変うるさく、現場に来ては一定時間経つと「昼寝の時間」とか言って孫を取り上げてしまうので苦労した、と笑っていた。昨日の質疑応答でもトニーが聞いていたがセックスシーンが(別に「過激」ではないのだけど隠すように撮っていないので)含まれるので本国での公開が難しい、という。ああ忘れてた、映画に出てきた表向きは「洗髪サービス+マッサージ」と言ってるんだけど実際は売春、というお店が本当にあるのか聞きそびれた。昨夜はヴェトナム語でも質問する人が結構いたけど、ヴェトナム戦争の頃からここにはたくさん移民が居るのだそうだ。とそこへチヨさんが来て、「今朝は玄米でお結びを作ったんですけど召し上がりますか」とラップにくるまれたライスボールを取り出す。狂喜していきなりまりまり食いだすぼくら(うまい)、チヨさんはディーにもあげてましたが彼は「???」といった表情で受け取っておりました。


ゴー

 で、どういう話の流れだったのか正確には憶えていませんが午前中はチヨさんのガイドで「市内観光」に行く事になっております。ラウンジの裏側に通じるドアを開けるとそこにチヨさんの車が止めてあって、後部座席に僕らは乗り込む。「どこか行きたいところ、ありますか」と聞かれたが実際何も考えも調べもせずに来たのでええと、グランヴィル・アイランドとコマーシャル・ドライヴに行ってみて、とここ出身の友達が言ってました、でもどんなところだか知らないのですが(そもそも)それは何ですか、あとスーパーマーケットに行きたいです、などと脈絡のないことを口走る。「そうですね、どっちも面白いところですけど時間があまりないので…、今日はコマーシャル・ドライヴまで行って、途中でスーパーマーケットに寄りましょうか」とルートを決めてくれる。実際のところ何でもいい僕らは「そうしましょうそうしましょう」とさわぐ。チヨさんはまず中華街を通ってくれて、なんて言うのか高層ビルのない香港みたいだなあ、と思っていると「香港返還で移住することにしたお金持ちが料理人も連れてきたので、バンクーバーは香港より中華料理が美味しいとも言われています」だそうでした。車はそのまま「バンクーバーで一番危ない辺り、薬物中毒の人が多いところです」というところを過ぎてまっすぐな道を走る。途中でなんか派手な店があり、「ここは古着とかのリサイクルショップです。不要物を買い取るんじゃなくてタダで回収して、それをちゃんとした状態にしてからすごく安い値段で売るので、例えばもうすぐハロウィンですけどその仮装衣装みたいな一年に一度しか着ないようなものはここで買ってまた持ち込んで、とかしてますね」と説明してくれるとイマイズミコーイチが古着、と言う言葉にピコーンと反応して「ふるぎ…」と呟きだした。あんた着ない洋服ばっかりだから処分する、とこの旅行に来る前にどっかり売ったばかりじゃないのか、と言うと「でもねえ…」と行きたいようだ。「じゃあ帰りに寄りましょう」と言ってくれるチヨさん。

 まずはスーパーマーケットですね、本当に地元の人(私とか)が週末に買い出しにくるようなところですけどいいんですか、と聞かれてそういうのがいいです、と答える自分。広大な駐車場に莫迦でかい建物、入り口付近にはどうやって運ぶか、と言うくらいの巨大な段ボールに野菜が入っていますが季節もの、ということでカボチャ大プッシュでした。食料品だけではなくて衣料品や雑貨もある。自分はパンツを日数分持ってきていないのであったら買おうかな、と探してみるのだがサイズがよく判らず、こっちのSサイズはどう考えてもでかいだろう、と子供用を見てみましたがサイズ表記がさらに判らなくなってきたので諦め、食料品売り場を見てみる。世界のどこに行ってもそこに理想のツナ缶があるんじゃないかと思って探しているんです、と言うとチヨさんは笑って「そうですか、カナダにももちろんありますけど一般的なのは水煮ですねオイル漬けじゃなくて」とのことなのでカナダは理想の国ではないかもしれません。でも一応オリーヴオイル漬け、というものがあったのでカゴに入れ、あとやっぱサーモンだろうか、とサーモン水煮缶を買ってみる。冷凍庫にはバケツのような容器に入った巨大なアイスクリームなどあり、「私の家ではこれを買って、食べ終わったら洗ってベリー摘みに使います」とチヨさん。レジはセルフのもありますよ、と無人のマシーンの前に並んでみる。自分は一度あれをやってみたかった、と機械の前で「ピ」「ピ」と商品をスキャンしてクレジットカード突っ込んで、はいおしまい。たのしい。ガソリンスタンドに寄って給油してからコマーシャル・ドライヴに向かう。「ドライヴ」ってのはなんですか、と聞くと「道の事です。通りの名前ですね」とのことで勝手に車をチャーターして観光地を回るツアーかなんかだと思っていた自分は外れ、でも目下の我々の状態はほぼそれに近い。


米、買いたい。

 Commercial Drive. はカナダ以外の様々な国から来た人の開いた商店やレストランが集まっているところだと言う。ちょろっと車の中から見ただけだけどあとで写真を確認したら何気なく撮ったスナップにエチオピア料理店が写っていたりとか、きっとゆっくり歩けば面白い店がたくさんあるんだろうと思う。ただ12時過ぎには戻らないといけないので眺めるだけにしてここは通過、先ほどの「古着屋」に戻りましょう、とチヨさんが言う。途中場所を間違えて一旦迂回したりしたものの無事にたどり着いて店内に入ると、やっぱり古着屋独特の匂いがするのはカナダも同じらしい。広い店内には古着や食器の他、地下フロアには家電製品などで、ノリとしては「バザー」。洋服は種類別にサイズごとにハンガーにかかっていて探しやすい。バンクーバーが思いのほか寒くなかったので、必要に迫られて現地で上着を買う、という事態にはならなかったため、手頃なところでシャツとかを探してみる。やはりここんちのSサイズはでかく、そしてXSサイズはほとんどない。小さく生まれた宿命だなおかあさんおとうさんありがとう、とブツブツ呪文をつぶやきながらスーパーでチヨさんに「イワサさんはキッズサイズがいいんじゃないですか」と言われたのを思い出して子供服のところに行ってみる。さすがにこりゃ無理、なのも多々ありましたがキッズXLなどは自分よりはるかにでかく、どんだけでかいんだカナダの子供は、と別にでかくはないカナダのリアルお子様がわあわあ言いながら駆け抜けていく隙間を縫って見ているとグリーンの7分丈のシャツがあってこれはかわいい、イマイズミコーイチが「表示サイズはけっこう当てにならないから、もし買うなら試着した方がいいよ」と言うので試着室で着てみる。サイズは問題無し、ただ7分丈、と思ったのはあくまで子供サイズだからのようでちょっと短い。でもまあいいかな、とチヨさんに見せると「あ、オリンピックのですね、柄は先住民のモチーフです」だそうでした。じゃあ新しめだね、とこれとAmerican Apparelのそれほど大きくないSサイズTシャツがあったのでその2枚、イマイズミコーイチは散々悩んで「ナシ」で結局自分が買っただけ。


きわめてよいてんき

 もう少し時間がありますからスタンレーパークを車で通りましょう、と北の方へ向かう。バンクーバー観光の目玉らしいですがとにかく広いので、本当は一日かけて行くといいんだろうな。車は森の中を抜け、巨木が果てしなく生えているのを横目で見ながらそうそう僕らは昨夜アライグマを見ましたよ、と言うとチヨさんは「ああ、街中に来るようになるので餌をあげちゃいけない、と言われているんですけどあげる人が居るので来ちゃうんですね。ゴミを漁ったりするのでちょっと問題なんですが」とどうやらこちらではカラスと鳩を併せたような存在のようだ。公園内には整備された箇所ももちろんあって、海に面しているので海岸沿いに青空が延びている。今日は本当にいい天気だ。そうだインドネシアのシーラが言っていた「ヌーディストビーチ」ってあるんですか、と聞くと「ありますよ、ここから見えるあの対岸のエリアにあります」とのことでしたが今日も居るんでしょうか、とは流石に聞きそびれました。チヨさんの夫は子供時代、一日中この公園に(ヌーディストビーチではない)居たのでお母さんが毎日ご飯を届けにきていたそうだ。本当に超駆け足でしたが観光っぽい感じになったのでありがとうございます、とお礼を言うと「では劇場に戻りましょう」と車はVancityに向かい、チヨさんとはここでお別れ、今夜の上映でまたお会いしましょう。さてここで観る映画は昨日スキップしてしまった日本映画「Good Morning World! (世界グッドモーニング!!)」と短編一本。しかしトニーさんは毎回MCやってて忙しそうだ。僕らが観ているのが彼がコーディネートする Dragons and Tigers のものばかりだからというのもありますが、それでも毎回監督紹介と終わってからのQ&A、が朝から晩まであるのである。


木@スタンレーパーク

 終わってここでの次の上映はディー監督の「Don't Be Afraid, Bi!」の2回目なんで監督も来てますがイマイズミコーイチは別の劇場でやる「Single Man」という映画を観るつもりなんだけどこれも観たい、と悩み始め、でも 仕方ないごめんなさい、とじりじりと後ずさりしながらVancityを退去しようとしたところでキムさんに会い、今夜の僕らの劇場の場所と、次に観る劇場(それぞれ違う)を教えてもらって途中で別れ、歩いていたら結構ギリギリな時間なので最後は小走りになって Empire Granville という劇場にたどりつく。どこでゲストパスをスキャンしてもらったらいいか判らなかったのでその辺に居たスタッフにパスを見せると「この映画の監督ですか?」と聞かれたので「違う」と言うのだがその人はそのまま「じゃああっちへ」と指差すので上映があるシアターに(6つあるので)入り、座っているとインカムやら何やらやたら身につけた男性がとことこ走ってきて、「すいませんが後で自分のところに来てください」とか言っている。多分スキャンしないで入っちゃったんでちょっとまずいのかも。あい、と返事をして何だろうねえ、と思いながら上映が始まる、とさっき来た男性が前口上を述べており、この人がこのシアターの責任者のようでした。

 で、「Single Man(Guanggun)」ですが導入部分は憶えている。4人の独身老人男性が出てきた。で、それぞれの若かった頃の事が再現ドラマで出てくる。そこまでは憶えているのですが、寝てしまいました。気付いたらエンドロール。イマイズミコーイチに起こされなかったところを見ると鼾はかいていなかった(寝言も言っていなかった)と思われるが、映画を最後まで寝通してしまったのは初めての経験かもしれない。決して詰まらなかった訳ではないのですが、何でだろう…。イマイズミコーイチによれば「面白かったよ、別にクィア映画じゃなかったけど」とのことでちょっと口惜しい。そして眠気は続き、ホテルに戻ろうかということになる。歩く途中で本屋があったのでカナダの地図を買い(初めて行った国で地図を買うのが毎回恒例)、ラウンジには寄らずに部屋に戻ってちょっとだけ寝る、はずだったのだ。

 で目が覚めたら8時でどえええ。上映は9時半からですが8時半に上映チェックの予約を入れてもらっていたのですぐに出ないといけない。劇場までは恐らく10分もかかりませんが、イマイズミコーイチは衣装替え(和装)するので着替えていたら間に合わない。仕方ないのでまずは行こう、と大慌てで支度をしてホテルを出る。そういえば昨日、ディー監督は今日の僕らと同じくらいの時間帯の上映前挨拶に姿を見せず、トニーが一人で「ええとここで皆さんに監督をご紹介…したかったのですが我々は監督を紛失してしまいました」などと言い意味不明な前説に笑う観客、すると後ろの方からスタッフとおぼしき声で「いまこちらに向かっています」と速報が入って上映後にはちゃんと来ていたのでしたがあれは何だったの、と今朝ご本人に聞いてみたら「時差ぼけで寝過ごして…遅刻してしまった(笑)」とのことでしたが歴史は繰り返す。僕らの劇場は昼間にキムさんに教えてはもらったものの実際に行ってはいないので近い・判りやすい・大丈夫、とは思っていてもこの道でいいのか、といちいち不安になって何度も地図を見直す。ここを曲がって…、あれかな?とやっと自分らの劇場「Pacific Cinematheque」が見えてきた。やれやれ間に合った。


Pacific Cinematheque

 劇場に入り、スタッフに「次の映画の監督です」と告げると「おお」といった感じで迎えてくれ、「映写チェックをさせてもらう約束になっているのですが」と言うと「ちょっと待ってね」とここの責任者らしいモーガン・フリーマンみたいな顔の粋なおじいさんに紹介してくれて、まずはご挨拶。映写室は上だよ、と担当者を呼んでくれ、僕らは彼についていった。技師さんが「ええと、もうセットしちゃっているのでこの小さいモニタで観るしかないのだけど、何をチェックしたい?」と聞くので「取りあえず縦横比が正しければ」とだけ告げて覗き込み、大丈夫だね(さすがに)、これにてチェック終了。音のチェックをしたかったら9時くらいの、客入れ前に出来るかも、との事なので自分は残ってそれまでこの辺で待つことにして、イマイズミコーイチはホテルに戻って着替えてくると言う。一人で大丈夫だよ9時15分には戻る、と言うのだが念のため地図を渡す。監督は一人でとかとか夜のバンクーバーを駆け出していってしまいました。さて次のチェックまであと30分くらいあるので、自分はすぐ近くにある「BLENZ」に入ってお茶を飲みながらインターネットにつないで時間を過ごす。

 だいたい9時になったので劇場に行くと、「済まない、客入れの関係で音のチェックはできない」とのことで仕方ない、じゃあ一応担当の人に会わせてもらっていいですか、と再度映写室に向かう。「最初の台詞の音量が小さいですが、これは素材起因です。そのすぐ後に大きめな音でテーマ曲が流れるので、導入部につられて音を上げ過ぎないでもらえれば、後は大丈夫だと思う」と伝えると映写のお兄さんは「オーケー」と言う。念のために渡しておいたスペアのテープ(我々も少しづつ学んでいるのである)は明日の上映後に返却、という話もつけてさあもう後は無事を祈るしかない。外に出て煙草を吸っているとトニーが来た。「あれ、今泉さんは」「着替えに」「間に合う?」「メイビー」つうわけでそれは私にも確約は出来ませんがま、来るであろう。やがて本日の通訳キムさんも見えたので3人でロビーで待機する。お客さんは入っているのか、客席に行けていないので何とも判断がつかないです。走行するうちに息切れ気味のイマイズミコーイチが約束通りの時間でやってきた。和服に眼を細めて喜ぶトニーさん共々記念写真など。をしているともうそろそろ時間なので客席に入って席を教えてもらう。全然満杯ではないが、まあそこそこの入り。あ、と自分は外で煙草を喫っていたトニーに「今日は自分、最初の挨拶に出させてもらってQ&Aの時は写真を撮りたいので最前列に座っていたいのですけれど、いいでしょうか」と聞くと「オーケー、好きなようにしていいよ」とのお返事。キムさんが「トニーさんが上映中もし映画を見なければ一緒に食事でも、と言ってますけどどうしますか」と教えてくれるがやはりプレミアだし、一緒に観たいと伝えると「もちろんそれでも構わない、食事はまた次の機会に」と言ってくれた。


気温12℃

 9時半、上映開始。先にスクリーン前に立ったトニーは客席を見渡し「ええと…、いまここにいる人はみんな『大人』かな?」と笑いを取った後(プログラムの解説文にも「心の広い大人にしかお勧めできない映画」と書いてた)その彼に呼び込まれてご挨拶。大したことを言わないし英語でよかろ、と高をくくっていた自分はうっかり「この映画のアメリカ初上映が」と言ってしまい、すかさずトニーに「米初上映ね」と訂正される。あ、これはすこしというかけっこうまずい、と日本語で「まちがえた、すいません」とへどもどしているとお客さん失笑で許していただけた(と信じたい)。この場を借りて改めてお詫び申し上げます。さてこの上映、併映の短編があります。日本映画「The Student Wrestler(ガクセイプロレスラー)」、日本でプログラムを知ったときはどんな映画か判らず何でこれがカップリングなんだろう、と思っていたのですがこれが滅法面白い。自分の大学時代を思い併せてみるにつけても日本的な、あまりに日本的な、突き抜けてすがすがしい青春映画(ドキュメンタリーです)。お客さんも笑う笑う、そして「北米」初上映に緊張気味の僕らも本当に楽しくて、「へひゃひゃひゃひゃひゃ」とか言いながら爆笑してました。こういう映画の組み合わせ方もあるんだなあ、といっぺんでトニーさんを大尊敬する。そして続く「家族コンプリート」、これはさすがに大笑い、ではなかったですが(まあ長いし)それなりに反応は感じられております。音も画質も問題無し(でもちょっと絵が明るめか?)。そしてここの映画祭はエンドロールまでちゃんとやってくれました。このタイミングでトニーさんが袖でQ&Aに備えている。呼ばれる。

 自分は最前列に座ってトニー,イマイズミコーイチ、キムさんの姿を写真に収める。トニーはさすがに手慣れていていきなり「じゃあ質問ある方は?」とは振ったりせずに「まずは私からいくつか質問を」とお客さんを喚起する時間を作っている。「なぜ監督自身も演じる事にしたのですか?」といったオーソドックスな質問でありつつイマイズミコーイチの紹介も誘導できる,というタイプの話題をいくつか重ねたのち、客席からもぼつぼつ手が挙がるようになってきた。観客の年齢層は割と高め、のような感じ。スタッフ以外は知っている顔はない(昨日のゲイ・バンクーバーの人とかライアンとかは見つけられなかった)。そしてキムさんの通訳はとてもスムーズ。一番愉快だったのはイマイズミコーイチが「ぼくはゲイの監督として…」と言いかけた途端に「えええええええ!?」と超わざとらしく驚いてみせたトニーさん。あとで「ソー・ショッキング」などと言ってましたがこの人はこの芸風で何十年もやってきたんだろうと思わせるに充分な手慣れたリアクションでした。こんなに面白い人だったとは、とさらに尊敬の念が高まる。わたしはどうしても最終的には面白げな人になびいてしまうようです。


Q&A

 Q&A終了。退場後にお客さんが話しかけてくれている。観に来てくれたチヨさん(明日の通訳をしてくださるそうで)他のスタッフの皆さんにお礼などを言っているとトニーが「君らはお腹空いているか?これから夕食をとるのだけど一緒にどう?」と誘ってくれる。結局僕らの上映中には食事が出来なかったようだ。「是非是非」とぼくらと、あと観に来てくれた「世界グッドモーニング!!」の俳優さん、それとどこの方なのか判りませんが映画祭ゲストっぽいお2人の合計6名でレストランへ向かう。元は銀行だった、という中華料理店に入るとお客さんは誰もおらず貸し切り状態でそんな中ひとつのテーブルに座り、まずはビールかな、と青島啤酒。注文前にトニーさんが「食べられないものは?」とみんなに聞いておりイマイズミコーイチの「挽肉にされていない四足獣の肉」というのが、これが毎回説明に失敗するのだが今回も伝わらず、トニーさん「うむ、よく判らないが」と言いつつお任せする。さて今夜同席のお2人はタイからの「Dragons and Tigers」へのゲストだそうで、ああ今日の昼間にトニーさんがなんやら言っていた映画の人だ、と見当をつける。「タイのTSの人が監督した映画もやる。監督は大変美しい人で、なおかつチンコがすごくでかい」とこれ以上ないくらいに要点を押さえた一言でトニーが説明し切っていた、その人か…。面と向かうと「美人」は見りゃ判る、ですけれども目下当方にはその他の情報が「タイ」「チンコでかい」のみしかないので「初めまして」が妙な笑顔にならないように細心の注意を払いつつ(うそ)こんばんは、と彼女、タンワリン・スッカピシットさんとプロデューサー氏にご挨拶。続々とうまい中華料理が運ばれてくる中をたのしくお話しして、タンワリンの映画はタイでは上映できない、という話題になりなんで、と聞くと「検閲とレイティング(年齢制限)の両方を取らないといけないんだけどそれはどっちもお金がかかるのと、あとタイでは学生服を着たキャラクターがセックスするシーンがNGなので多分無理か、出来てもすごくぼかしを入れないといけない」そうです。まだ観ていないのだけど、どんな映画かなあ、観られるかな。

 いやあ食った、うまかった。途中の路上で別れる時にトニーが交差点である道を指差し「そこは通らない方がいい、ちょっと危ないし、今の君(イマイズミコーイチ:和装)は目立つから、因縁付けられたら大変」と教えてくれたのでアドバイス通りにそこは避けて、いつもの大通りを歩く。カナダの喫煙事情はどんなもんか、とちょっと警戒していたのだけど夜ともなれば道端で喫ってるひとも多いので人も少ないし、と火をつける。とそこへ3人組くらいの若い男性がすれ違うときに「煙草くれない?」と言ってきたので一本あげる。イマイズミコーイチもせびられてましたがあとで「『日本の煙草(Peace)だ』と言って渡したら喜んだみたいで2ドル(180円)くれた」そうで2ドルって結構いい値段だね、酔ってたのかな。自分はタダでしたが「AMERICAN SPIRIT」だったのが敗因かもしれません。その人たちとはまた別のカナダ人が交差点でイマイズミコーイチを見ながら「Revenge of SAMURAI」などと言っているのを小耳に挟んで、しかし一体何の復讐なんだ、つうかそもそもこれはサムライじゃないし。部屋に戻ってシャワーを浴び、今日の戦利品(古着にツナ缶)などを並べてしばし放心する。明日が最終日で、しかも夜は寝ないで飛行機だ。


インドネシア・ジャカルタ編

2010.1003 ジャカルタ発香港経由バンクーバー行
2010.1004 長編3本
2010.1005 長編2本+「家族コンプリート」上映一回目
2010.1006 長編1本+「家族コンプリート」上映二回目
2010.1007 バンクーバー発

インドネシア・ジョグジャカルタ編