2023.1212 Dienstag

 9時ごろに眼が醒めたので一人起き出して近所の散歩に行く。雨は上がっていて道路が濡れている。最寄り駅を通り越して大通りに出たところにトルコ系スーパーがいくつかあるので入ってみる。以前はベルリンに来るたびブルグル1㌔とか買ってたなあ、と思って棚を見るとやはり値上がりしている。同じく必ず買っていた紅茶葉は、これは前の値段を憶えてなくて値上がりしたのか判断できないけど今回は買わなくていいかなあ、とレジ付近に行ったらトルコのピスタチオチョコレートを見つけてしまった。パンデミック中にその存在を知って、カルディで買えるとかそういう話もあったものの結局オンライン通販でバカ高い(一個1,000円以上とか)のしか見つからなくて諦めていたものが2€しないで売っているではないか。正方形に近い60gのチョコバーにしては高めだけど(ドイツのリッタースポーツ各種なら100gで1.5€くらい)、いずれにせよ日本でこの値段で買えることはまずないので嬉々として買い込む。いくつかメーカーがある中でひとまずネスレが出してるdamakという名称のもの各種。店を出て近くのオーガニック系スーパーの角を曲がろうとした時、路上で寝袋に入ってじっとしている人に気付いて仰天する。隣には何故か空のベビーカー。更に歩くと今度は店の前で紙コップを手に物乞いをしている人もいて、昨日のアンドレスの言っていたことがいきなり現出する。

 家に戻るとイマイズミコーイチも起きていたので今日の予定を話し合う。19時半からこの近所でにあるレストランに友人が集まってくれて、しかもライナーさんも参加して夕飯を食べることになっているがそれまでは予定なし。イマイズミコーイチは「ノーレンドルフプラッツの本屋に行きたい」と言う。では出かけよう。ノーレンドルフは『伯林漂流』を撮っていた時に一ヶ月アパートを借りて居たいわゆるゲイエリアで、「本屋」というのはそこにあるPrinz Eisenherzという書店のことである。ここからノーレンドルフプラッツへはバスを使うと乗り換え無しで行ける。本屋に着くとイマイズミコーイチは「多分すごく時間がかかるから、他所に行っていてもいいよ」と言う。自分は一通り店内を見てから撮影当時に通っていたスーパーを廻ることにする。書店を出て割とすぐにところで2セント硬貨を拾って一人でニコニコしてしまう。最初に向かったトルコ系の「BOLU」でまた更に安く売ってた別のメーカーのピスタチオチョコレートを買い足し、次は激安系のLidlでアイラン(トルコの甘くない飲むヨーグルト)を買って路上で開けるが、寒い時に外で飲むものではなかったかも知れない。最後は当時は「カイザー」という名前だったけど居抜きでEDEKAに変わった駅前のスーパー、ここは広くて扱っている点数も多いのだけど、今日はたまたまなのか空になっている棚が多かった。


ノーレンドルフプラッツ駅

 書店に戻るとイマイズミコーイチはまだまだ棚を見ていたが、DVD売り場で一枚のタイトルを手にして「これ買う」と言う。友人でベルリン国際映画祭パノラマ部門の前ディレクターだったヴィーランド・シュペックが監督した『Westler』。ヴィーランドとは今回会うことになっているのでサインもらうんだ、と言っている。あとはBrunos(ゲイショップ)に行きたいというので移動する。最後に来た5年前の時点でブルーノは既に出版部門を閉鎖しており、大通り沿いにあった大型店舗(まだそのまま残っている)から現在のここに移転したショップも下着とかウェアの店になってしまっていましたが、状態は今も変わらず。置いてある書籍やポルノ以外のDVDも申し訳程度なのであまり見るべきところはないが、セール値札が付いた「タイの未成年セックスワーカー少年の写真集」という本が5€くらいで投げ売りされていて、ポルノ的なものではないようでしたが何とも微妙なものを売ってんなあ、と思いました。あれ、何だか体がだるくなってきたような気がする。やはり昨日ウィーンから背負ってきた激重荷物のせいかも、と部屋に戻って横になりたくなってきたのでさっき一人で行ったEDEKAにイマイズミコーイチとちょっと寄ってからバスに乗って帰宅、食事会までは3時間くらいあるので少し横になって回復しておきたい。

 2時間くらい寝たんだろうか、起きて何だかやたらと喉が渇くので水とお茶を大量に飲んでしまう。朝からほぼ何も食べていないのに食欲はなく、胸焼けのような感触があって断続的にゲップが止まらなくなる。19時ころになっても改善せず、何かを食べたりするのは無理そうなのでライナーさんに事情を話し、レストランまで行ってみんなには挨拶だけするけどそしたら家に戻って休んでいる、と伝える。ライナーさんはアスピリンを出してきて「水に溶かして飲むといい」と言ってくれる。ありがとう。レストランは本当に近くて歩いて5分くらいの、駅に行く手前で左手に折れたところにあったドイツ料理店。中に入るとクラウスとマイケルの2人が待っていて、彼らとは春頃にビデオチャットで話したけどそれ以来だ。やがて現地に住んでいるあきこさんと、続いてカタリーナもやってきた。カタリーナのパートナーのウーヴェは具合が悪くて欠席とのこと。調子が悪いのは自分だけじゃないのね、とか思う余裕もありませんでしたが(食べ物の匂いがしている空間にいるだけで気分が悪くなってくる)、すいません自分はここで、と皆さんにお土産だけ渡して辞去する。クラウスは何やら薬を出して「消化器系っぽいね、これ飲んでおいて」とカプセルをくれた。ありがとう。家に帰るまでの道で急速に具合が悪くなり体の節々が痛み始める。部屋に行くまでの階段が厳しかったが何とか登ってベッドに倒れ込み、ライナーさんとイマイズミコーイチが戻ってくるまで起きなかった。


オーダー前に写真を撮りましたが自分だけ早く帰りたい顔をしている

 帰宅して部屋に戻って来たイマイズミコーイチは「念のためコロナの検査もしたほうがいい、ってライナーさんが検査キットくれたから明日の朝やってみたら」と言う。自分は水をがぶ飲みしながらうなずく。眠いのとも違う疲労感があるのだけど、横になっているのが一番楽なのでその体勢のまま数時間が過ぎたあたりで急に吐き気を催してトイレに駆け込む。何も食べてないから出るのは水ばかりで、胃酸で喉が焼けたがだいぶ楽になり、肩で荒い息をしながら口をすすぐ。続いて猛烈な下痢が来てそれを何度か繰り返してやっと落ち着いたのでベッドに戻り、ゆっくり水を飲んでから目を閉じた。今度は眠れそうな気がする。しかし前にも似たようなことがなかったっけ?と考えたらあれだ、2013年に『すべすべの秘法』をベルリンで上映した時に猛烈な歯痛に襲われたことがありました。まあ偶然だ偶然。

2023.1213 Mittwoch

 昼前に起きる。外は雨が降っているようだ。昨日よりは気分がいいような気がする。ライナーさんに貰った抗原検査キットでテストを…実は自分はPCR検査ばかりで抗原検査はやったことがないのだけどネットで日本語の説明書を検索して手順を確認して実施する。結果判定までは15分待つ、とあったのでその通りに待ちましたが結果は陰性。ひとまず昨日会ったライナーさん含むみんなにその旨を連絡する。相変わらず食欲はないのだけど、動けそうなので近所のスーパーに行って何か買っておくことにする。イマイズミコーイチは玄関にある物入れからものすごく派手なレインボー柄の傘を見つけ出して拝借している。動けるようになったとは言っても全く本調子ではないので、スーパーに来るだけでぐったりしてしまう。自分はヨーグルトと林檎とオレンジジュースを買い、イマイズミコーイチは夕飯用にカレーとご飯が入った紙BOXを買う。よろよろしながら部屋に戻って今日は雨だし明日の上映までに復調すべく一日寝ていることにする。明日までには何とかなってほしいとは思うのだけど焦っても仕方ないのでじっと横になっている。facebookに「寝込み中」と報告投稿したらポポから「大丈夫?」という御見舞メッセージが来たので「明日までには治るよう願ってて」と返す。自分でも願うしかない。


窓の外

 特に退屈を憶えることもなく、時間はあっという間に過ぎて夜。起き出して昼に買ってきたオレンジジュースを飲み、チェリー味のヨーグルトを半分くらい食べる。食欲はないけど口に入れれば食べられるという状態で、食べたあと気持ち悪くもならない。部屋の外でガサゴソやっていたイマイズミコーイチが「夕飯を食べたいのだけど電子レンジの使い方がわからない」と呼びに来たので見ると、自分にも確信はありませんが一旦電源をオフにして電子レンジっぽいボタンを押して起動したら…調理時間を選択する画面になったのでこれでいいと思います。今はカレーボックスからする匂いを嗅いで「おいしそう」と思えるようにはなっていて(「食べたい」とは思わないのだけど)、多分良くはなっているはず。iPhoneを開いたらfecebookの寝込み投稿にコメントしてくれているのが香港とインドネシアの友だちばかりなのがちょっと面白かった。お気遣いに感謝しますです。しかしまだ痛い、体中が。

目次
2023.1206-07 ベルリンまで/ベルリンからウィーン
2023.1208-09 美術館、『犬漏(SOLID)』上映/美術館2つ、映画祭クロージング
2023.1210-11 各自ウィーン観光/ベルリンへ
2023.1212-13 ノーレンドルフ彷徨/体調不良でヘロヘロくん
2023.1214-15 『すべすべの秘法』+『犬漏(SOLID)』上映/ユルゲン、映画1本
2023.1216-17 一人遠足、映画1本、最後にカラオケ/一人散策
2023.1218-19 イスタンブール乗り換えで帰国

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