2023.1218 Montag

 日付が変わった。ベルリンに戻ってきてから使っていた7日間券は17日の23:59で失効したので、これから乗る分は切符を買わないといけない。今回はバスから乗るので自分がAPP上でABC区間の片道(4€)を2人分買う。何度か買ったせいなのか、いちいち認証を求められなくなっている。下手に粘って終電で何かあったら怖いので一本前のに乗ったが、空港までは1時間もかからないので午前1時すぎには着いてしまった。航空会社のホームページには「国際線はできれば3時間前に空港カウンターに来てください」とあったのでそうしたら3時40分で、2時間半くらい時間を潰せばいいわけだ。ターキッシュ・エアラインズのカウンターはターミナルの端っこで、成田空港もそうだけど航空会社カウンターの近くにはベンチが少ない。既に3人分の席を使って器用に寝ている人などがいて、自分らは座るのがやっと。横になりたいイマイズミコーイチは床で寝始める。家を出る前にオンラインチェクインは済ませているので本当にやることがない。自分は喉が渇いたので開いている売店を見てみたけど欲しい物がなくて諦める。やがて後からやってきたグループが、無人のチェックインカウンターにある預け入れ荷物用ベルコトンベアにスーツケースを乗っけて勝手に重さを量りだした。持ち込み手荷物用の秤は別に設置されていて寸法と重さが超過していないかチェックできるのだけど、チェックインの時に預け入れ荷物が重量オーバーしていたら詰め直さないといけないから事前に知っておきたいのだろう、つられて他の人たちも次々と量り始める。自分もヒマなので乗っけてみたら「23.4kg」という微妙な重さで制限重量を400gオーバーしている。このくらいはいいのかもしれないけど揉めたくないので、最後に買った1キロ入の甜菜糖をスーツケースから出し、ジップロックに入れた上で洋服でぐるぐる巻きにしてまあ最悪破裂してもいいや、とバックパックの方に移す。やがてドイツ語と英語で空港からのお知らせアナウンスが流れるが、どうも何を言っているのか判らない。ただ「ラゲージ」という単語は聞き取れたのでもしかしたら「勝手に重さを量るな」と言っていたのかもしれない。

 3時40分を過ぎたけどカウンターには誰も来ず、でも気が早い人は列を作って並んでいる。更に30分くらい待っただろうか、ぼちぼちと店開きっぽい感じになったので見ると、ビジネスクラス/オンラインチェックイン済の人と、今からチェックインする人で列を分けているようだ。オンラインチェックイン済の列の方が明らかに空いていて、しかも順調に進んでいるのでやっておいて良かったみたいだ。ただ自分らより前の人の様子を見るに、係の人はだいぶ厳しい感じで荷物重量オーバーだったらしいその人はダメ出しをされている。「あなたはビジネスクラスじゃないのでこの荷物をもっと軽くしないと乗せません、自分でなんとかしてください」みたいなことだと思うのだが、こういう厳しめな担当氏に当たった時に自分が知っている有効な対処法はただ一つ、とにかく返事は間髪入れずにハキハキと元気よく。最初から最後まで飼い主のことが大好きな犬みたいな顔をして「こんにちは、パスポートです!」「イワサさんですか?」「ハイ!」「預け入れ荷物をここへ」「ハイ!」「持ち込み手荷物は」「コレとコレです!」「チケットをどうぞ(結局チケットは紙でも出された)」「ワンワンワン!(ありがとうございます!)」で超スムーズにチェックインというか荷物預け入れは終わりました。持ち込み荷物は小さいショルダーだけになってえらい身軽。このエリアにほぼ何もないのでセキュリティーチェックを通って中に入ることにする。窓の外にはクリスマスツリーが輝いているが、とてもメリーとか言う気持ちになれない今年のクリスマス。


とにかく静かなので居心地は悪くはないのだけど、ベンチが足りない

 今回は問題なくセキュリティーチェックをクリアし、免税店には用事はないが見てみると街中で買った方が安いものが所狭しと並んでいる。売店も外よりはあるので比較的手頃な値段の林檎ジュースを持ってレジに並び、ちょうどの小銭で払おうとしたらガラス瓶のデポジットも加算されるのを理解しておらず足りなくて結局お札で払って更に小銭が増えてしまい、かつ「瓶を持ってくれば15セント返します」「ここに返すんですか?」「オフコースです」という間抜けな会話を発生させてしまいました。ジュースはごく少量なので店の外で飲み切って瓶を返し、更に小銭が増えるのでありました。さて搭乗口はどこだ、と時刻表示版を見るとご親切にも「ここから徒歩18分」と出ていて出鼻を挫かれるが、何分かかろうと行くしかないので黙々と歩き、搭乗口付近で待機して時間になったので乗り込む。帰国便ではオンラインチェックインの時に並びでない席がもう割り振られていて、飛行時間の短いベルリン〜イスタンブールは近い席だしそのまま、イスタンブール〜成田は座席指定料金を払って並びの席にした。乗り込んでみると3席ある自分の列には自分しか座っておらず、イマイズミコーイチがいる列は3席とも埋まっているので、このまま誰も来なかったらこっちに移れば、と言っておいたら果たして離陸の時点でも自分の隣は2席空いたままだったのでイマイズミコーイチはこっちに来た。元の列で一緒だった女性2人は同伴者ぽかったし、円満解決ではないでしょうか。行きと同じくかなりしっかりした機内食が出ましたが、腹の調子が悪いイマイズミコーイチは「重い…」と呟きつつ完食していた。

 イスタンブール空港に着いて、いつものように通路を通って乗り換え口に行こうとしたところ、途中で全員止められて乗り継ぎ便のチケットを見せるよう言われる。見せたら通してくれたのでそれは別にいいのだが空港の建物内に出てみるとそこは搭乗口で、何だこれ折返し運転する便なのだろうか、記憶している限りこういうのは経験がない。待ち時間が3時間半くらいあるので特に急ぐ必要はなく、まだ搭乗口番号も発表されていないのだけど、何にせよ空港が広いのでどこへ行ったらいいのか…というところでイマイズミコーイチが「あ、喫煙テラスというものがあるみたい」と言うので向かうとそれは屋外に張り出した喫煙所なのでした。回転ドアを通り更にドアを開けると、鉄柵で囲まれているとは言えそこは外。遠くに小さくモスクが見えるのでイスタンブールなんだなあ、とちょっとだけ実感する。いつかここにもちゃんと来たいね、とどちらともなく言う。自分は隣りにいた男性に話しかけられて、最初は中国人だと思っていたようでしたが「日本人なの?日本の会社と仕事をしたことがある」とか言われました。イマイズミコーイチはしばらくここでタバコを喫っているというので自分はその辺を見て廻る。直近のフライトが無いらしくほぼ誰もいない搭乗口が隣にあり、中には寝椅子型のものもある。これはいい、と思ったら先客がいて、しかも謎なことに椅子の上ではなくその真下の床で寝ているのでいずれにせよそこは使えない。イマイズミコーイチが戻ってきたので一緒にもう少し離れたところを探すと、未使用の寝椅子はまだあったのでそこに陣取って横になる。ベルリン空港でのカウンター待ちの時とはえらい違いである。


珍しく窓側の席だった。ポーランド上空あたり。

 イマイズミコーイチに荷物を頼んで自分は空港内を探索する。行きの時は試す余裕がなかったが、ここでの無料インターネットはSMS認証かパスポート認証をしないといけないとのこと。自分が契約したeSIMはトルコーをカバーしておらず、電波は掴むけど通信はできない。空港の所々にある「インターネットキオスク」でパスポートをスキャンして(こええな)、出てきたレシート記載のパスワードを入れれば1時間インターネットに繋がる。接続して何を検索するかと言えばバクラヴァである。ベルリンの友人にバクラヴァが好きだ、というと「じゃあ私が知ってるおいしい店をあとで教える」とか言うのだけど教えてくれた試しがなく、いいもん自分で探すもん、と最近松屋銀座にショップができて話題の名店Karaköy Güllüoğlu - Nadir Güllü、ナーディル・ギュルのバクラヴァがイスタンブール空港で買えると聞いていたのだが詳細を調べるのを忘れていたのである。実際にここで買った人の投稿を探していて、売り場の写真が見つかった。これは行きに通りかかってちょっと見たところでは。でもどこだったかな、この空港ムダに広いので近いのか遠いのかも判らない。売り場写真にちょっとだけ映り込んでいたファストフード店の看板を手がかりにグーグル検索すると、どうやら空港中心部のショッピングモールみたいになっているところらしい。そこまで調べたところで元の寝椅子に戻り、ウェットティッシュで顔を拭いたりして寛いでいたら、後ろから係員みたいな人たちが入ってきて何かをセッティングしだし、どうやらこのスペースを使用するらしい。「すみません、出ていただけますか」と言われたので荷物をまとめて向かいのベンチに移動する。こっちもまた色々なタイプの椅子があって、イマイズミコーイチはいきなり寝ている。

 したらすぐ搭乗ゲートが発表された。見ると今いるところから見て真反対の方である。空港案内図によると、搭乗口まで続く道のちょうど半分くらいのところで寄り道すればバクラヴァ売り場に行けるはずだ。さっきまで余裕かまして寝ていたのにいきなり搭乗時間ギリギリか、という移動スケジュールになる。幸い売り場はすぐに見つかり、ナーディル・ギュルのものは種類もあまりないので悩むことなくピスタチオのバクラヴァ一箱、これだけでもけっこう高い、でも松屋銀座で買うよりは安いはず。レジの会計の人はカウンターに置いてある「ターキッシュ・ディライトを一つ買うともう一つプレゼントしている、買わないか」と言うので「いらないです」と言っているのに再度「このターキッシュ・ディライトを一つ買うともう一つプレゼントしているが、どうだ」と表情一つ変えずに言うのでめげないなあ、と内心感嘆しつつ「NO THANK YOU.」で搭乗口へ向かう。今回は荷物棚争奪戦に参加しなくていいので気が楽である。離陸までは特に問題なく、その後もトラブルなし。機内サービスで選ぶ映画はどうしても自分が家で加入しているNetflixとアマゾンプライムに入ってないやつ、となると必然的にディズニー映画が多くなるが、劇場公開時に見逃していた『ホーンテッドマンション』ではラキース・スタンフィールドを堪能できたし、次に観た『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』も思いのほか良くて(どちらも吹替版)あまり眠る時間がなかった。成田で一泊したい、とどんどん怠惰になっていくが今回は泊まりません。

2023.1219 Dienstag

 日本に着いたら19日。「今の心配事はなんですか?」「おさとうです!!」というわけで自分はバックパックの中に入れた紙パックの甜菜糖がどのくらいダメージを受けているのかが一番気がかりである。バゲージクレームは荷物を排出している最中で、自分らの荷物はまだ見えない。最初にハードのスーツケースが、ついで問題のバックパックが流れてきた。結んだ紐も解けていない。開けてみるとジップロックに入れたお砂糖は無事、ちょっと漏れてるけどこれは包装が甘くて売り場にあった時から若干漏れていたので問題なし、後生大事に抱えた砂糖1キロを眺めながら満足げな自分を見てイマイズミコーイチは笑っている。現在は税関申告のみに使われているVisit Japan WebでQRコードを出し、前はただ紙を出す代わりに税関のカウンターでスキャンすればよかったのだけど、今回はQRコードの専用レーンが出来ていてそこでスキャンしてからいつもの税関カウンターを通るという方式になっていて、あんまりスムーズになっていないような…気がする。特に止められることもなく通過して、午前9時半の成田空港。妙にボロボロな喫煙所でさっきコンビニエンスストアで買った紙パックのオレンジジュースを一気飲みしてから自分は電車で、イマイズミコーイチはバスで帰宅する。お疲れさまでした。

 ギリギリ間に合うかと思っていた電車は目の前でドアが閉まって行ってしまい、次発を待つ間に母親に到着予定時刻を知らせる。今日は駅から家まではバスで帰るつもりだったが、「迎えに行ける」という返事が来たのでありがたくお願いする(何しろ荷物がえらく重い)。ああそうだ自分でもちょっと忘れてましたが受賞歴あり(既往症みたいだな)の監督として帰国いたしました。あと映画祭のプログラムを見る限り自分がもらった賞には賞金もあるらしいのだが、誰からも何も言われていません。(続く)


_ro_____ __ JT


目次
2023.1206-07 ベルリンまで/ベルリンからウィーン
2023.1208-09 美術館、『犬漏(SOLID)』上映/美術館2つ、映画祭クロージング
2023.1210-11 各自ウィーン観光/ベルリンへ
2023.1212-13 ノーレンドルフ彷徨/体調不良でヘロヘロくん
2023.1214-15 『すべすべの秘法』+『犬漏(SOLID)』上映/ユルゲン、映画1本
2023.1216-17 一人遠足、映画1本、最後にカラオケ/一人散策
2023.1218-19 イスタンブール乗り換えで帰国

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