2014.1208 Lunes

9月の初めに「Invitation to Join the Quezon City Pink Festival」というタイトルのメールが自分の個人アドレスに届いたので開けてみたらばどうも映画祭への招待状のようで、文面には短く「ジョン・バダルからあなたの連絡先を聞きました。12月にケソンシティで開催する映画祭で『すべすべの秘法』を上映したい」とあり、意味不明な事にJPG画像で(何でPDFじゃないのか)「招待状」も添付されておりました。それによると監督分の航空券と現地滞在費は出す、という何だか気前のいい条件で(しかし何でPDFじゃないのか)、もちろん断る理由などはないので速攻で受諾のお返事をしていつものように資料を送り、などしているうちにジャカルタでの上映が近づいてきたのでしばらく日本を留守にします、と映画祭ディレクターであり本人も有名なドキュメンタリー作家であるらしいニック・ディオカンポ氏に伝えると「私もほぼ同時期に韓国の映画祭に行くので不在中はアシスタントのGelが代わってやり取りします」と返してきたので普通は「私のアシスタント」ではなくて「映画祭の担当スタッフ」が代行するだろうと思うのですがもしかしてニックが一人で全部やっているのか、と薄ら恐ろしい気持ちになりました。お互いの海外出張中にはその「アシスタントくん(男性らしい)」からは何も連絡が来ず何一つ事態は進展しないまま帰国し、遅れて帰国したニックとのやり取りが再開されるのでした。

さてそもそもケソンとはどこか。フィリピンだったよな、てな見当はすぐに付いたのですがそれはルソン島と間違っていたからで確かにケソンシティはルソン島にあるというただのまぐれ当たりで、いわゆる狭義の「マニラ市」の周辺にある「メトロ・マニラ」圏を構成する都市の内では面積・人口ともに最大の町で、感じとしてはベッドタウンみたいなもんだろうか、しかしそれ以上何があると言うわけでもなく観光客がわざわざ行くような所でもない。何故ここで開催なんだろうなあ、しかもニックは『すべすべの秘法』を観てもいないようだし(後から「プレビューをオンラインで観たいのだけど」というメールが来た)いかにも突貫工事、という感じである。ややあってようやくヒントが見つかった。どうもこのケソン市、10月に性的マイノリティに対する差別を禁じる法案を可決したようで、現市長も「同性婚の可能性を探る」と発言している旨のニュースもあったのでこれは何ですか、ひょっとして広い意味のアジア地域では最先端を突っ走ってませんかケソン市、期間中にプライドマーチもあるらしいぞケソン市、となれば俄然やる気も前のめりになるわけですが相変わらずニックが(おそらく)超人的な作業量の中で諸々を連絡してくるのでした(寝てんのか、アシスタント?)。


こんな感じっす

済し崩し的に映画祭情報が解禁となった10月、長年来の友人であり自分のいい加減な英語力ではどうにもならない局面でいつもチェックをお願いしてしまう溝口彰子さんが「私も行こうかな」と言って来たのをこれ幸いと「じゃあQ&Aで通訳してくれませんか」と図々しくお願いして映画祭には「ジャパンから通訳を連れて行くんで彼女のホテルもプリーズ」とさも当然、という感じでお願いして監督は航空券代+ホテル他、自分とミゾグチさんは飛行機自腹でアコモデーション映画祭持ち(予算は市から出てると思うのであんまり胸は痛まない)、ということでまとまり、ミゾグチさんは全日程は無理なので短縮参加だから飛行機はご自分で取っていただいて問題は自分の飛行機だ、イマイズミコーイチと一緒の便であるのが最低条件だが同じ便を日本で取ってお金をもらうのか、向こうが取ってこっちが現地で払うのか、の確認をしたのち「2人分の航空券をこちらで確保しますので、イワサさんの分は米ドルで持って来てください」という事になり(相変わらずアシスタントくんは寝ているらしい)、快調に下落する円相場を睨みながら12月を待つことにする。

…筈だった11月半ば。9月の段階から「で、上映フォーマットは何を使いますか、DVDならありますが」と再三再四訊いていたのにそこはスルーされ続け、ニックからやっと来た返事は「DCPでお願いします」と言うもので何だそれは、とウルトラ自主制作作家としては思ったわけですがそんな返事をするのは流石にダメだろう、と思って友人知人グーグル先生にお訊きしました。日本ではまだ商業映画が主戦場の「デジタル・シネマ・パッケージ」の事ですね。ええと、それは作れません(高いし、何よりフォーマットしたものを自分でチェックできない)。なのでDVDで良いですか、と再度訊いてみると「高画質のものであればDVDでいいです」「じゃあBlu-rayにしましょうか」「必ずしもBlu-rayでなくてもいいです」とここで急にメールアドレスはニックのままで何故か寝ていた筈のアシスタントくんが返事をしてくるようになる(倒れたか、ニック?)。Blu-rayだって作ったことありませんがこれを機に、と外付けドライヴを買ってやってみたら半日くらいかかったものの再生可能なディスクが出来てかなり画質が良かったのでこれで押す事にする。「上映ディスクは持参で良い?それとも事前に送る?」と訊くとアシスタントくんは「では集荷依頼を掛けますね」とフェデックス・フィリピンの配送フォームを送って来て何だ普通に仕事できんじゃん、と思いました(伏線)。

12月にもなりましたある日、ジャパンは千葉のフェデックスからお電話があり、「集荷の依頼がありましたが、相手のアカウント番号と住所はご存知ですか」「ええと知りませんが」といった間の抜けたやり取りがあって初めてアシスタントくんの送ってくれた情報だけでは集荷してもらえないと言う事が判明し、急いで「アカウントナンバーとアドレスを送ってくれ」とメールを送って数日ナシの礫で、また寝たか。と半ば諦めてもう持参しようと腹を決めた頃にやっと追加情報が来て出荷しました。超特急じゃないと送る意味が無いくらいギリギリだったので勝手に一番早い(高い)のにしちゃいましたがどうせ市が出すんでしょうからいいの。いいんです(ケソン市の皆様、皆様の納めた税金をただいま日本人が微妙に浪費しております)。これで全て終わった…と思ったらアシスタントくんからまたメールが来て「アキコ・ミゾグチのフライト情報と到着ターミナルを教えてください」ってそれは2ヶ月前にニックに送ってありますし、つうか全日空機がニノイ・アキノ国際空港のどこターミナルに着くか、なんてのは空港ウェブサイトを確認すれば判る事ですがオレさまが調べんの?とぷうぷう言いながら調べ(てしまうあたりが私が出世しない理由)て送り、ふと魔が差したようにfacebookでアシスタントくんの名前を検索したらそこには小っこい恐竜のような美少年がニコニコ小首をかしげているプロフ写真があり職業は「フリーランスのモデル」、もしかして新卒大学生くらいなんじゃないかと言うくらいの若い男の子でああそうか、と9割くらい納得しながら気が遠くなって行くのを感じていました12月4日。


努力の結晶

なかなか出発できない感じですがやっと8日の話ができます。米ドルは結局値段が確定した日に買っておいた方が何千円か安かったでした莫迦野郎。航空キャリアはお初のフィリピン航空(おそらく出来るだけナショナル・フラッグシップを使うというルールがあるのでしょう。どのアライアンスにも加盟していないのでマイルは貯まりません)で、成田に7時半集合です。東京は晴れていますが実はいまフィリピンを巨大台風が横断中、なのでチェックインカウンターで訊いてみましたが「大丈夫ですよ」とのことで後は特に問題もなしに出国・免税店で煙草買って・前回のジャカルタと全く同じエクセルシオールカフェに入ってだらだらしつつ・トイレに行って・から・飛びます。機内食は普通に旨かったです。席には個別モニターとか無いので却って煩わされずに4時間ちょっとのフライトはだいたい寝ていました。マニラに近づくと雨は降っていましたが特に揺れる事もなく(つうか操縦がすごいうまい)無事にフィリピンに軟着陸いたしました。空港内は普通にWiFiがつながるなあ。自分だけ積込みアリなのでバゲージを引き取ってから、別にヴィザも必要無いのでそのまま入国審査、いらっしゃいマニラ。気温は流石に東京とは段違いに高いけど、そんなに暑くて参る、という感じでもない。出口には若い女の子(名前はチャム)が迎えに来てくれていた。あと別の映画祭ゲストらしい男の子に何となく見覚えが…と思っていると彼の方から「カンボジアで会いましたね」と話かけてくれたのでどうやら5月にプノンペンで会った人らしかった(言われるとそんなような気もする)。あとお母さんみたいな女性が居るが、この方はどなた。

「迎車を待っているので、もう少しここで」と言ってきたチャムに「あそこに見えるATMでフィリピンペソを引き出したい、あとローカルSIMカードも買いたいのだけど」と言うと「ああSIMカードはホテルに着いたらあげますから、買わなくて大丈夫です」とのことで随分と気が利く映画祭だ、と感心しながら(伏線)1台しかないATMでキャッシングする。幾らぐらいにしようか、1ペソがだいたい2.5〜2.7円くらいらしいので5000ペソ(13,000円)くらいでいいか、とクレジットカードを突っ込んでぽちぽち操作すると、故ニノイ&コラソン・アキノ夫妻の肖像が描かれた500ペソ札が10枚出て来た。自分の中でフィリピンが最もホット・トピックだったのはピープル・パワー革命の頃(1986年)なのでイメルダ夫人はまだ元気なのにねえ…と妙にしみじみしている場合ではない。台風が来ている割にはそんなでもない雨の中を一服して車を待ち、しばらくするとでかいバン(映画祭で借りているらしい)が来たので乗り込んで、マニラ近辺は渋滞がひどい、と聞いていたのだけど車内でうとうとしていたらホテルに着いたようだ。地図によると会場の映画館は道を挟んで隣のモール内で、歩いて行けそうだ。「ICON HOTEL」という名前のこのホテルは新しくて、ロビーはかなり冷房が効いている。チェックインをするとカードキーを渡され、チャムに「夕方からオープニングセレモニーなので、また迎えに来ます。部屋で休んでください」と言われたのであ、SIMカードは?と訊くと「夜に渡します」だそうで何で今じゃないんだろう、まあホテル内だったらWiFiはあるであろう、とフロントのおねいさんに「WiFiパスワードって何ですか」と訊くとカードキーを示され「"ICON HOTEL"の下にあるキャッチフレーズ"youarethestar"です」と「どうだ」みたいな顔をされたので腰が砕ける。外の出ている看板にも「YOU ARE THE STAR」ってばっちり書いてあるのでセキュリティーはまあ、ほぼ無いものと思ってよかろう。


何と言うか僕らは嬉しくってもう…

で、エレベーターに乗り込んで自分らの「10F」ボタンを押すのだが光らない。何だこりゃ、と言っていると係の人が「センサーにカードキーを当てろ」と言う。ピ。でようやく押せて動き出す。と言う事はアレだ、別フロアには自由に行き来できないわけですね。部屋は…と入ってみると一番最初に眼に入ってきたのはマドンナさんのどでかい写真でした。しばし固まるチームハバカリ。気を取り直して部屋を見渡すとそこかしこにマテリアルおばはんのポートレートが新旧取り混ぜて展示されてあるのでした著作権とかクリアしてるのか。やっと理解いたしましたがここは各部屋ごとに有名人の名前を冠した装飾をしているホテルなのでした。ちなみに隣はアンジェリーナ・ジョリー先生です。嬉しいような困ったような気持ちですがまあ気を取り直して(一通り写真を取ってから)一服するか喫煙部屋でお願いしてたし、と探すが部屋には灰皿が無く、ただしどこにも「No Smoking」とも書いてもおらず喫って良いのか悪いのか不明ですがそういえば「ツインで」とお願いしていたベッドもばっちりキングサイズ一発なのでやはりニックはそこまで気は廻らないわな(アシスタント出て来い)、とロビーに降り、まだいたチャムを捕まえて「喫煙でツイン、とお願いしていたのだけど今から変更できる?」とお願いする。チャムはフロントに何やら相談していたが戻って来ると申し訳無さそうに「このホテルは全面禁煙なので、喫煙は外の喫煙所でするしか無いそうなんです。あとベッドは2台をくっつけてあるだけなので、ツインにする、と言っています」と言う。仕方が無い、この「会場最寄り」のホテルは恐らく他のゲストとスタッフも使っているようなので、個別の要望には応えきれないのであろう。外の喫煙所で一服して部屋に上がると呼び鈴が鳴り、ルームメイクの人がやって来てベッドを2台にして、それぞれにシーツを掛けてくれた。ちょっと、寝ますかね(外は雨だし)。

何だかんだで1時間も寝ていなかったと思う。外は少し暗くなっている。シャワーを浴びてからロビーに降りるとさっきのカンボジアからのゲストくんとおかあさん(聞いたら本当に彼のお母さんとの事)がいた。すごく近いのだけど車で行くらしい。ものすごい大回りをして、ホテル側から見るとモールの反対側から駐車場に入る。ジャカルタと同じく、モールの入り口では一応のセキュリティチェックをしている。この「TriNoma」というモールはマジでかくて円形の中央部分は4階まで吹き抜け、そこからまた四方に回廊が延びてテナントが入っている。1階の円形部分はイベントスペースになっており、自分らはそこに案内された。ステージと客席の向こうにでかいスクリーン、かなり大掛かりに組んであってでスクリーンには「QUEZON CITY INTERNATIONAL PINK FILM FESTIVAL」というピンクの静止画が映し出されている。柵で仕切られた手前の入り口でゲストリストにサインをするとパンフやらなんやら映画祭グッズをくれて「では中で、フードもドリンクもご自由にどうぞ」とチャムが言うのでわーい、とブッフェに並ぶ。一番最初は寿司が置いてあるが何故かその皿の前の配膳のお姉さんは「あなた日本人?これは食べない方がいいわ」とにっこりアドバイスしてくれるのが意味不明(喰ったけど、別段まずくはなかった)。そうこうしているうちに柵の中は人が増えて来て、スタッフはみんな映画祭にちなんでピンクの服を着てんのね、あはは何か上下濃いピンクスーツ+黒ブーツでサーカスの司会みたいなのがおるわ(あはははは)とよく見るとこいつは例のアシスタントではないか。脳裏では言いたい事が山のように去来しましたが英語で言える自信が全く無いため引きつる笑顔で「ハイ」とか挨拶してあ、ニック・ディオカンポ大先生があちらに、とご挨拶。彼のフィルモグラフィーを見ると第二次大戦中の日本軍による占領(自身の祖父も日本軍によって殺されたらしい)を作品に取り入れたりしているようなので若干ビビっていましたが、何か「キャー」みたいな感じで迎えてくれた(声は野太いよ)のでちょっと安心する。「来てくれてありがとう、まずは飲み食いしなさい」と言ってくれるのでありがたく。


大掛かりで、入り口

ケソンシティ・プライドのオープニングセレモニーが始まった。自分らが座った最前列の席は右側に寄っているので、ステージの上手側からスクリーンの端っこがちょっと見えるのですがなんか白いふわふわした羽根みたいのを付けた人が見え隠れしてわくわくである。司会が喋ってるのはほとんど聞かずにショーが早く始まんないかな、とばかり思うわたくし。そしてトランスのおねいさんによる待望のふわふわショー、入れ替わり立ち替わりで一曲ずつ歌手が歌い("Let It Go"とか)、ケソンプライドの代表挨拶、ニックが出て来て挨拶、ケソン市長が出て来て挨拶、女優さんみたいなゲスト挨拶、伝統舞踊風すごい高度なテクニックのショー、などなど。振り向けばイベントスペースをぐるりと取り囲む回廊にはギャラリーがみっちりで、ものすごい盛況な盆踊り会場のようでした。家族連れからクレームが出そうなエロな出し物は無いので市民の皆さんへの告知としてはいい方法かもしれない。最後に「海外ゲストのみなさんはどうぞ前へ」とかアナウンスされて段取りが飲み込めないままにステージに立ってバシバシ写真を撮られました。つか自分らとカンボジア人母子以外の海外ゲストはこの壇上にいるウチの、誰と誰と誰だ(いっぱいいるけど)。天井からテープまで降ってきました。さてこの後はオープニングフィルムの上映です、と言われたのでえ、それは明日じゃないのと訊く間もなく自分らは4階のシネコンエリアへぞろぞろ向かう。

もらったプログラムによるとやはり公式のオープニングは明日9日なのだけれど、どうもスケジュールの変更があったらしい。1〜7まであるスクリーンのうち、映画祭会場は「3」。ただし今日だけは一番大きな「7」でやるそうで、入り口前にはテープカットの用意がされている。会場は混乱を極めているが(台風も来てるよ!)海外ゲストはテープカットする女優さんの後に汁男優の如く並べ、と言う事のようなので出来るだけ嬉しそうな顔をし続けてみました。カットもされたのでもういいですか、と会場に入って…でかい。そして寒い(東南アジアはどこだって冷房がサーヴィス過剰です)。明日からは着て来たダウンジャケットを持って来よう、と思った事でした。オープニング上映作品はニック・ディオカンポがこの映画祭のために作ったらしい新作「#pinQCity」、大雑把に言えばケソンシティのクィアシーンを描いた作品、という事になるのでしょうが、かなり作家性が強いので一筋縄ではいかない。若い男の子がメインキャラクターとして出て来るのですがこの子が色んな所を行ったり来たり出たり入ったりします。で、上映素材の問題なのか音が随分前衛的に刻まれてるなあ、と思っていたら映像が消え、たら今度は音が消え、最終的には映画が止まってしまいおいおい、と思っていると「少々お待ちください」のアナウンスがあって再開、こわいよう。オープニング上映としては不吉すぎますがまあこれはプレオープン、と思う事にして心臓に悪い上映は終わりました。


テープカット前後。看板ご本人も会場に居ました。

会場の外でゲストが固まっている中を煙草が喫いたいチームハバカリは屋外エリアに灰皿がありそうだ、と目星を付けて向かおうとしたら件の全身が濃桃色アシスタント(名前の"Gel"は「ジェル」と呼べばいいらしかった)が「どこ行くの?これからディナーに行きますよ」と声を掛けてくるので「ちょっと、一服」と答えると「判りました。もし先に動くようなら喫煙所まで呼びに行きますね」と言ってくれる。このジェル、話をする分には別に無能な感じは全くしないのでおかしいなあ、あのメールでのやり取りのいい加減さは何だろう、としばし考え、結局ああいった対面でないメール連絡業務はある程度経験を積まないと「使える」レヴェルには達しないのであろう、とにかく若いので用件によってどのくらいのレスポンス間隔が必要か、速攻返事が必要なのかちょっと間を置いた方がいいのか、みたいな感覚が身に付いてないのかも。でももう現地に来ちゃったので大丈夫だし、と気楽な感じで低気圧の中を喫煙する。屋内に戻って動き出した一行にくっついてどこをどう移動したのか、どちらを見ても同じような風景なので自分がどこに居るのかいきなり判りませんが2フロアくらい降りたのか、屋外部分の通路に面したレストランに入った。「もう時間が遅いので空いている店が少ない。フィリピン料理だけどここでいいか?」と一応訊かれるが自分は何を喰わせても旨いと言う人間なので大丈夫です。

長テーブルに着いて自分はニックの隣の席になった。ここでも相変わらず忙しそうだが準備よくホテルから持って来ていたジャパン土産(とらやの羊羹と日本茶とバディ、という前回ジョグジャのニーノにあげたのとほぼ同じセット)を「プレミア上映おめでとう」とか言いながら進呈する。御大には非常に喜んで頂けたので及第点であろう。ニックは山形国際ドキュメンタリー映画際に何度も行っているそうなので何だこれは、という事は無く「バディ」に至っては「いや〜ん」みたいなリアクションをするのでした。ニックは皆に今日の上映が何であんなトラブルが多かったか、という言い訳をしている。「本来であれば明日9日に上映する筈だったのでそれに合わせて準備していたのだが市長と劇場の都合で急遽8日にも上映をすることになり、完成したのが今日の11時で…」てかそれはたいへん過ぎます。ニックに(あの悪条件下で理解できた範囲では)映画は良かったよ、と言うと急に自分に腕を回して「でもやはり君らの映画のようなスッウィ〜〜〜トな作品の方がいい」と酔っぱらいのような事を言いだすのでイマイズミコーイチが「イワサくん、気に入られてんねえ」と見当違いな事を言いだしているうちに料理が来た。パッと見では肉が多いような感じ、自分は平気だけどゲストの中にベジタリアンもいるようなので豆腐(というか厚揚げ)を炒めたものとかも頼んでいる。味付けは基本甘辛、そんなスパイシーではない。「これがいわゆるフィリピン料理?」とニックに訊くと「そうだけど、かなり中華料理の影響があるメニュー」だそうです。そうだねこの焼きビーフンなんてまんま中華だし。


ごはん

自分らから少し離れた席でスタッフが食事しているので自分はチャムを見つけて「で、シム・カード…なんすけど…」と言ってみると(まるで私が日がなSIMカードの事しか考えていない人みたいですが、その通りです)チャムは側にいたジェルに事情を説明している。ジェルは「では明日用意しましょう、朝にホテルのロビーで会ったら渡します」と言うのでこんな事なら空港で買った方が良かった、とジャカルタでの一件がそのまま思い出されるわけですが、どうしても今夜開通しないと困る事情も無いのでじゃ、明日で(朝食は付いているそうですよ)。店を出てニックに「そういや明日ジョンが来るんだよね」と言うと「そうそう、ジャカルタのクィーンがね。自分はマニラの女王だけど」とおどけている。相変わらずどの人がどっから来た何のゲストなのか不明なのですが、そのうち判るであろう、と2台のバンに分乗して小雨の降る中をマドンナ部屋が自分らを待つホテルに戻りました。

2014.1208 1日目:到着
2014.1209 2日目
2014.1210 3日目
2014.1211 4日目
2014.1212 5日目:『すべすべの秘法』上映
2014.1213 6日目:ケソン・プライド・マーチ
2014.1214 7日目
2014.1215 8日目:帰国