2014.1209 Martes

取り敢えず朝食は6時〜10時であるらしいので9時に起きて下に降りてみる。細長いホテルロビーの奥に長いテーブルがあって各種飲み物と食べ物が取れるようになっているが、入り口に近いソファと渾然となっていてどっからどこまで食堂、という感じでもないので丸見え。自分は紅茶が飲みたいのだけどリプトンティーバッグはあれどもお湯が無い。このポットはコーヒーだしなあ、と散々探して見つからないので諦めてジュースにする。テーブルは米にお菜サイドとパン&シリアルサイドが裏表になっていてどら焼きより一回り小さいパンケーキがおいしい。次はいつ喰えるか判らないのでなるべく食べておくようにする。昨日会ったゲストやスタッフがいて、まだ何となく顔を見た、と言う程度なのであんまり話をする感じでもないけど、早めに仲良くなっておいた方が後々楽しいのは判っているので(何故か)日本じゃあんまり出せない愛想を少し多めにして(っても「グッモーニン」とか言う程度)。しかしお湯はどこだろうな。

喰い終わって外で一服し、ロビーにいたチャムとジェルに「おはよう…ございます…あの…くどいと…お思いで…しょうが…シム…カード…は…」と息も絶え絶えに言ってみると「あ」みたいな顔を一瞬したのちスタッフ数名がわあわあ協議して「そこのセブンイレブンで今から買ってきます」とか言い出したので自分が予想していたのとはちょっと違い、別にゲスト分のSIMカードを予め買い置いていたわけではないらしかった(そらそうだ)。何か大ごとになって来たか、という気がしないでもないが自分はゲスト。ゲストですからと(自分に)言い聞かせて「では、マイクロサイズを一枚プリーズ」とジャカルタで標準サイズを買ってしまった轍を踏まぬよう念を押して、割とすぐに戻って来たラウンド髭のスタッフくんが「Globe」のSIMをくれた。パキパキパキ、とマイクロサイズに折って今回が海外デビューのHTC One(M7)に突っ込み、開通はやってくれたので電波は摑んでローカル電話番号も出来ましたがラウンド髭くんが言うには「このカードにはチャージされていないので、電話を受ける事は出来るけど架けられない」との事。自分はどっちかと言うと通話よりデータ通信がしたいのでそれでは達成率20%くらい、「じゃあチャージもしたいんだけど、大変?」と訊いてみる。「いや、すぐ出来るけど、一緒に来てもらえる?」との事なので自分はロビーでインターネットをしているイマイズミコーイチを残して、ちょっと外出。


デビューくん

ホテルを出てすぐのところにセブンイレブンはあるがただし歩道橋を渡らないといけない。小雨で濡れている階段でこけないように気を付けながら「台風はもう行っちゃったの?」と訊くと「いや、まだ来てないと思う」とその程度の関心のようでこりゃ大丈夫だわ、と根拠が曖昧なまま確信する。実家の母からは「台風直撃で平気なの?」というメールが来ていましたがお母さん、マニラ近辺はおそらく問題ないようです。初のフィリピン・セブンイレブンは存外ジャパンのと似た雰囲気でした。ジャカルタのより東京に近い。レジの子に「チャージできる?」と訊いているようだが、どうもできないようだ。「すみません、ちょっと移動」と言うので付いて行くと彼は隣の「SMスーパー("Save More"の頭文字です念のため)」に入り、入り口付近の何だかよく判らないカウンターでチャージカードを注文してくれた。「300出して」と言われたので500ペソ札を出すと200ペソ札と1ペソ硬貨が戻って来た。チャージは額面301ペソで売価が299ペソらしい。ホテルに戻ってチャージをして、インターネットをしたいなら、と「SUPERSURF50」というプランにしてくれた、ところまでは良かったのですが肝心のインターネットがつながらない。ああでもないこうでもない、と2人で四苦八苦しましたがあんまり付き合わせるのも悪いので「ちょっと自分で調べてみる、ありがとね」と一旦終了。

部屋に引き揚げる。今日は本来の「映画祭初日」。ただしオープニング上映作品は昨夜既に観てしまったし、どうにも半端である。まだ雨も降ってるしあんまり外出したい感じでもない。加えて自分は来る前から風邪気味で、何とか誤摩化して来たのだけど気を抜くと悪化するからどこかにあるらしいプールで泳ぐのも止めた方がいいな、もう少し寝ましょうか、とベッドにもぐり込み(昨夜は眼を覚ますと向かいにボワ、と巨大なマドンナさんが見えたのでちびりそうになりました)ちょっと寝たり起きたり、でも本格的に眠れるわけでも無さそうなのでWiFI経由で「フィリピン Globe SIMフリー」とかで検索して見つかったページに「APNを設定」というものがありああこれか、と載っていたAPNの接続先アドレスを入れてみたらあっさりネットにつながりました。しかも4G(3.9G)LTEを摑んでおる。今回持って来たHTC One(M7)は写真で観て一目惚れして、でも日本はおろかアジア版にも無いカラーであるためアメリカからeBayで買ったAT&Tのアンロック端末なので当然US仕様、4G対応とは言ってもそれは米国のバンド対応だからフィリピンで使えんのかどうかもさっぱりでしたが普通に使えてるわ。ついでにそのサイトには「"SUPERSURF50"は24時間で契約が切れるプランで、その次に長いのは"SUPERSURF200"で5日間、新規申込はSNSで"SUPERSURFXX"と送ればOK」とあって私はようやくサービスの全貌を把握しました。申し込んでもらった「SUPERSURF50」は明日の今頃切れるのでそしたら透かさず「SUPERSURF200(5日プラン)」を申し込めば帰国する日の空港に居る頃までインターネットが無制限で使えるわけですね。自分はやっと肩の荷が降りたので下に降りて一服、とそこにさっき一緒に奮闘したラウンド髭くんがいたので「ネットつながった」と報告して終了。


部屋からの眺め(まだ微妙に降ってる)

大した事はしていないのに時間はもう4時前くらいになっている。今日到着する筈のジョン・バダルに「着いた?僕らはホテルに居るよ」とメッセージを送るとしばらくして「さっき着いた。ロビーで会おう」と返して来たので冷房の厳しいロビーでジョンを待つ。やがてエレベーターが下りて来てジョンがやって来た。やあやあ、と抱き合って去年の東京以来の再会。で、ジョンは抱擁しながら何故か後ずさりを始めて苦笑しつつ「眼鏡を部屋に忘れて来たので取って来る、ごめんもうちょっと待ってて」とまた昇って行った。戻って来たジョンとモールに向かう。車を出してもらうのもアレなので歩いて行こうか、とジョンに提案すると「行き方は知ってるの?」と言う。道はさっきのラウンド髭くんに訊いたので方向は判っている。ただし実際に歩いた事は無いけど、と返事をする。雨は上がっている、ここで初めてフィリピンの路上をまともに歩く。歩道のそこここには簡易アーケードみたいにテントが張ってあって大風が吹いたらどうすんだ、という感じではあります。ホテルを出て右に直進するとやがて歩道橋が見えて来て、そこを登って車道の上を渡り、向かって右手が鉄道の駅で左手がモールに直結している。ちょっと人が多めだな、と言う辺りでは現地の人も荷物を胸に抱えているので自分も用心した。あっという間に会場に着く(これは近いわ)。

モールに着いたジョンは「予定はある?無ければちょっと付き合ってほしい。」何でしょ、と訊くと「SIMカードにチャージをしたい」って今朝までの自分と同じような事を言うのでほらね僕だけじゃないのよ、と誰にでもなく言い訳めいた事を呟きながら付いていくが、ジョンが見当つけていた辺りにはSIMの店はなく、案内所で訊くと「本日はもう閉店しました」だそうであちゃあ。「隣のモールで探してもいいかな」と言うのでごったがえすモール内をふらふら移動する。「何かもうここ、人が多すぎてダメ」とジョンはイマイズミコーイチのような事を言っている。しかし平日なのになんでこんなに客がいるんだろう。でかいシネコンの前を通り過ぎて探してもまた広大すぎて見当たらないので案内所に行くと、意外な事にそこ(の隣)で売っていた。ああよかったね、と疲労困憊してじゃあご飯でも、と言う。ジョンはニックの上映はスキップするけど8時半からのドイツ映画「フリー・フォール」は観ると言う。あんまり時間が無いけどじゃあ、とジョンは「フィリピン料理はもう食べた?おいしい店があるからそこにしようか?」と言ってくる。食べたけど、昨日のお店ですべてではないと思うのでそれでいい、と返事をしてモールの端っこにある有名店「Abe」というレストランに…あらら並んでる。するとジョンはどういう眼力または政治力なのか特別室をに席を開けてもらって5人抜きくらいで入店し、オーダーを取りに来たウェイトレス嬢には「我々は大変時間が無いので急いでほしい」と全く横柄でない感じで言うので流石ジャカルタの(今はタイ在住だけど)クィーン、と感心しきり。注文も「今年でマニラに来るのは4回目」というジョンに基本お任せで、一品だけ看板料理らしいピンク色のスープを頼んでもらう。料理を待つ間にジョンはさっき買った200ペソのチャージカードの番号をSNSで送って処理はされたようなのだがインターネットに接続できない、と困っている。これはまたあれかも、と自分は彼の枝豆色のiPhone5Cを拝借してAPN設定を確認したら自分のとは違うアドレスが入っていた(彼もキャリアは「Globe」)ので試しに自分が入れたアドレスにしてみると接続可能となった。


スープうまい

さて料理が来た。豚粗挽き肉の玉ねぎ炒め、イカのフライ、竹筒に入れて炊いた味付きご飯、それと自分が頼んだスープは豚バラブロックに玉ねぎ、青菜と紫芋の入った酸味のあるものでたいへんおいしい。「フィリピンの人は豚肉が好きで、インドネシアではなかなかおいしい豚肉料理が無いから自分はうれしい」とジョン。自分はサンミゲル(フィリピンのビールメーカー)が出してる黒ビールを呑みつつ酔っ払っております。「映画には間に合わないね、まあゆっくり」と楽しく食事をして、しかしマニラも渋滞がすごいね、と言うと「空港から4時間かかった」と渋い顔をしている。自分らはたぶん1時間くらいだったから、その日の交通量にかなり左右されるようだ。食べ終わった時点で映画の開始時刻はもう15分くらい過ぎているが、「フリー・フォール」は自分らは東京で観たけれどジョンは未見だそうなので、劇場に行ってみることにする。お客さんはかなり入っている感じ、今日は持ってきた長袖を羽織って座席後方に座る(スクリーンがでかいのでこっちのほうがいい席)。映画はまだ導入部分で、このくらいなら話は判るかな。婚約者(しかも妊娠中)がいる警官が、研修所の寮で同室になったゲイの同僚に迫られて本人もなんだか満更でもない、という感じでセックスとかしたりしているうちにすってんてんになる、というお話。ノンケ役の子がしくじるたびに「ごめん…」とか言いながら垂れ目になるのが犬のようでした。終わってジョンに「どう?」と聞くと「まあまあかなあ」との事。本日の上映はこれで終わりなのでスタッフも撤収を始めている。バンでホテルに送ってもらい、とニックが(ニックじゃなかったかも)「これからゲイバーに行きますよ」とか言うのでえ、こんな平日に人なんているのか、と思いましたが自分らとニック、映画祭スタッフのディンディ、ゲストのタイ人監督ティティパン+主演俳優、ゲストカメラマンのクロエという面子で行くことになった(つうことは男性限定の店じゃないのね、ミックスのバーか、と思った自分の予測したイメージはかなり外れということがすぐに判明する)。

渋滞はあんまりひどくないので車は進むが勿論どこをどう走っているのかはもう判らない。車中でニックがよく通る声でアナウンス:「店に入る前に注意してほしい事がある。ボーイさんのチンコを触ったら必ずチップをあげないといけない。渡さないとトラブルになるので、払う気が無いなら触らないこと。またボーイがビールを飲みたい、とねだってくる場合があるが、それはたいへん高いので注意する事」もうおわかりでしょうが我々はメンズストリップバーに向かっているのでした。ええと何事も経験、と早くも映画「真夜中のダンサー」(観てませんが)のスチール写真などを想い出しながら精一杯脳内で予習を試みるわたくし。やがて車は「BOY ZONE」という看板の出ているところに停車し、すでに半裸の男の子が休憩時間なのかぼんやり座っているのが見えるが、建物自体はごく地味な、というかはっきり言えばボロ屋ですが入ってみるとお客はほぼ僕らだけ(そらそうだ)、中ではドラァグのようなトランスのようなお姉さん2人がショーの真っ最中でした(椅子の上で股割りとかしておる)。


向かいのガス・ステーション

ビールでいいか、と聞かれたので頷くとすぐにサンミゲル・ライト2本とつまみの塩ピーナッツがは運ばれてくる。店内は寒くはないのだけど、空調の風圧がものすごくていろんなものが飛びそうになる。真っ暗な中でガンガンDJがアッパーな曲を掛けているのでなかなか愉快な気分になってきたところで急に照明が点き、妙に情感たっぷりなスローチューンで男の子が踊りだした。何となく日本のクラブで踊るゴーゴーボーイのようなものの延長線上で考えていた自分は不意打ちで面食らう。その後も出て来る子出てくる子は全部同じようにゆったりとくねっているので合間合間の激しいDJタイム(30秒くらい)で踊ってみるのみ、こういう曲がかかるクラブでビールを呑みながら踊りたかったなあ、と思いながら。どういう基準になっているのか、ステージ上でチンコ(を勃てて)見せる子と見せない子がおり、見せた子は終わると客席に回ってきて営業してくる。ニックが「ほら」と小遣い、じゃなかったチップ用の紙幣を寄越してくるので自分は目の前に来た子の肩とかをおざなりに触って(恥ずかしい、訳では全然ないのですがさりとてチンコ触れるなんて嬉しい!!!という気持ちも全く湧いて来ず)チップあげてさようなら。僕らが接待されているはずなのだが、ニックが一番楽しそうだ。昨日観た彼の新作の1シーンもここで撮影したそうで、実際にボーイ役で出た子も出演していた(でまたその子を隣に侍らせるニック御大)。もう何が何やら。総括いたしますと勉強させていただきました、えろうすんませんが微塵もエロい気持ちにはなりませんでした(そして私はやはり睾丸派であることを再認識)。向かいのガソリンスタンドが煌煌と光っています。もう、帰ろうよ

2014.1208 1日目:到着
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2014.1212 5日目:『すべすべの秘法』上映
2014.1213 6日目:ケソン・プライド・マーチ
2014.1214 7日目
2014.1215 8日目:帰国