2014.1214 Linggo

昨夜の余韻、と言うよりかは主に疲労により現実感の薄いままふらふらと朝ご飯に降りて、ああでも今日はランチご招待なんすかしかも副市長のお父さん(と言う事は前市長か)がトリノマでやってる店で、と自分は果物とお茶だけにしておく。で、行ってみるとその店(ちなみに"Yakimix"という焼肉屋のように見えて実際にグリルもあるようだけど結局日中韓なんでもご飯屋さん)は大変な混みようで入れず、映画祭も別に予約もしていなかったようなのでじゃ、隣の海南鶏飯の店で。とこちらは何とか全員入れるくらいには空いているが何ぶん大きくない店なのでたいへん苦労してテーブルを作ってもらい、それでもスタッフは店外席(何か、うす暗いです)になってしまってちょっと気の毒。隣にPJが座っているが彼らのテーブルは何だか豪勢に頼んでいるので(自分は鶏飯のみ)わしわし貰って喰う。あれ彼氏は?と訊くと「いま上映中のフィリピン短編集を観ている。映画祭プログラマーだからね」そう彼はアメリカのオースティンでOUTsider Festivalという映画と美術のイベントをやっているようなのでした。


ロビー

食事が終わって今日はなるたけ映画を観ましょうか、結局イベント続きでそんなに観られてないから、とゲストが来ているラスト3プログラムは全部観ることにする。少し時間があるのでミゾグチさんと3人で喫茶店に入りくだらない話やくだらなくない話などをしていたらジョン・バダルからメール。「これからトランス・ボウリング大会に行くんだけど一緒にどう?」うへえ何だそれは(行きたい!!!)と思うもののよく考えたらジョンは東南アジア作品は全部観ている(てか彼が選んだので)から遊べるわけで、自分らは映画を観るほうがいいな多分、と考えて泣く泣くお断りして劇場の冷房に備えて屋外席で体を温めるのが日本人にはどうも理不尽ですが、そもそも現地の人もノースリーヴ一枚で平気そうな人も結構おり、冷房に強い人も普通にいるとなると更に厄介であります。

ANGMO & AMOI by Elaine Foster & Seok Wun Au Yong
一本目は昨日来たマレーシアのセオが共同監督兼出演のドキュメンタリー風フィクション。まず「監督」役のイネザが登場する。彼女が取材対象に決めたエレインはアメリカンスクールで育ちウェスタナイズされており(という設定)、エレインのルームメイト募集に応募してきたセオ演じる中国系マレーシア人の弁護士(と言う設定)、の2人がルームシェアを始め、まあ最初はちょっとした小競り合いもありつつ後半は一体どうなってんのこの国の「レズビアンシーン」は、と2人で孤軍奮闘する、というか何と言うか、何かしょぼしょぼと終わってしまい、と歯切れが悪い感じなのは自分が途中で寝てしまったからです。とミゾグチさんに告白すると「多分あの映画は途中で寝るようになってる」とのこと。Q&Aを聞くと監督はニックがマレーシアでやったワークショップの生徒だったらしく、その時の短編から膨らませたのが本作だそうだ。マレーシアって大変ね、という失礼な感想しか無いのは非常にいけない。


モール内ゲーセンの、何だこれは

/また別の喫茶店に入り、ボーイズラブ(ミゾグチさんの専門分野)について大変興味深い内容をお伺いする。何かヴィジュアルの世界(映画ではない)は「女性向けAV」と垣根を接しつつまた違う方向に細~く伸びていってるのですね、と言う事で取りあえずこの客筋には自分らの作品はあんまり引っかからないね。さて次の映画。

MADAM PHUNG'S LAST JOURNEY by Nguyen Thi Tham
これはドキュメンタリー。トランスのマダムが率いる一座が各都市を回りながら富くじと歌謡ショーなどのテント生活をしている姿を追ったもの。行き先々で些細な、あるいはけっこう大層なトラブルが起こったりもする。断片的に語られる座長マダムの人生も何とも波瀾万丈な、と言うものでしたが観終わってみるとどうも印象が散漫。映画の中の「事件」も決して平坦ではないし登場人物もそれぞれに個性的であるのに、誰の姿もこちらに迫ってこないのが残念でした。冒頭は結構良かったんだけどなあ。監督は若い女の子ですが、もしかしたら同行取材を完遂するので手一杯だったのかも。上映後にはジョンが居て「映画、どうだった?」と訊かれたので「しょうじき、あんまし」と答えてしまった。


人が虫のようじゃ

/ああそうだトランス・ボウリングってのは?とジョンに写真を見せてもらってやっぱこれに「も」行きたかったなあ、と思いましたが取り敢えずこのままでは飯を食えない、とジョンにまたねを言って、前回チャニと入ろうとして閉まっていたイタリアンに(近いので)入る、というか外の席しか空いてないと言うのでまああんまり暑くもないし、と座って「時間が無いので、ちょっと急いでお願いします」と酒のつまみみたいな感じになってしまいましたが軽く頼んで、ビール飲んでたら次の映画の時間。

LOVE NEXT DOOR by Thitipan Raksasat
監督のティティパンは自分らの畏友であるタイの映画監督、タンワリン・スッカピシット("Insect in the Backyard"と"It's Get Better"の長編2本とも素晴らしい)をプロデュースした事もあるらしい。ジョンとも友人で、今回は主演俳優を連れて来ていた。かなりお客さんが入っていて(映画祭で最多との事なので自分らが負け、あはははは)、自分らはいつものように最上階のVIPシートに座る。家出してきた主人公が友人の家に転がり込む所から話が始まる。友人は「しばらく留守にするから、好きに使っていいわ」てな感じで不在、本人はその間に知人に頼んでいた仕事に就くはずだったのだけどそれがフイになり、やがて有り金が底を突く。向かいの部屋に住んでいる男の子は売り専をやっているのだけどある夜、客が間違えて主人公の部屋に来てしまい、成り行き(金無いし)で彼も売り専として結構売れっ子になってしまう…、というお話。なのですが良かったのは相手役の子がかわいいのと主人公を贔屓にするトランスのお客役がベタなギャグを繰り出すところくらいでして、ミゾグチさんは開口一番「何か一話、抜けてませんか」と言うのですがそう、二人が何で付き合うことになったのかが結局さっぱり判らないのです。上映後のQ&Aで監督は主演くんの腹筋がすごいんですよ、とか言って舞台上で腹を出させたりしており、どうも監督のパーソナリティーからすると「イケメンが出てくるちょっとエッチなラブコメ(ラブ・イズ・オール♡)」みたいなコンセプトに作品が追い付いていないみたい、とか私もえらい偉そうですが何かですねえ、プロデューサーを務めたタンワリンの作品はあんまり儲からなかったけど、低予算で作った自分の作品はインターネット視聴にしたら結構儲かった、みたいな話をしているのを聞くにつけあれれれ自分は何か非常によく似た風合いの人を知ってるぞ、と3秒くらい考えてあれだ、韓国のピーター・キム。あの人はイ=ソン・ヒイル監督という韓国で最初にカムアウトしてゲイ映画を作った監督のプロデューサーをしていてその後自分でもゲイ映画を監督して、正直彼の作品はキャスティング以外はあんまり、なのですがどうも「私は売り方を知っている」人が撮った映画、という気がしてしまうのでした。まあサンプル2つだけなんでたまたまかも知れないけど、少なくとも自分がプロデュースした監督を見ていて「自分だったら…」とは思っていたはず。

/総括いたしますと今回の映画祭で一番良かったのは『CALL MEN KUCHU』では無かったかしら、というちょっと残念な感じでして、フィリピン映画を観られていたらまた違った筈でここが反省点、っても仕方が無いのですが。最後の映画が正直うむむむむ、なのでお客さんに囲まれているティティパン+主演くんは遠巻きにしてホテルに戻る。とロビーに居たクロエおねえさんが「今夜はクラブに行くわよ(来るわよね)」と言うのでそうね、最後の夜だし行きましょう、と部屋に荷物を置いて(何故かカードキーがエレベーターでは復活しておる、が部屋は相変わらず開かない)下に降りて、ゲストは他に誰が行くのかよく判らないのだけどスタッフと車に乗り込み、「LEVEL CLUB」というぺかぺかしたイルミネーションのクラブに入る。人はまだあんまり居ないけど音楽が好きな感じなので嬉しい。たぶん前日のパレードの打ち上げっぽい感じもあるんだと思うけど、映画祭ではなくてパレードで見かけたスタッフの顔が見える。ドリンクは勝手に持ってきてくれるのだけどそれがウォッカを甘いソーダで割ったもの一択なので、最近は酒を控えているイマイズミコーイチは乾杯だけしてあとはソーダにしましょうかね、ああティティパンと俳優君がいるコングラッツ。あとはレインボウ柄のワンピースで昆虫の交配期みたいにクネクネ踊るクロエおねえさんを堪能していました。ミゾグチさんは結構(クロエとマブな感じで)楽しんでいただけているようで「ケソンに来てからあんまり呑んでないからまだ20%くらい」とよく判らない事を言いつつウォッカをお呑みになっている。自分らはちょっと風に当たりたいかな、と外に出てぼんやりする。ボディーガードの、強面で屈強なおにいさんが立っているので小さい自分らはちょっとビビるがそれとなく自分らの方を見守ってくれているのが判ったので安心して(あ、でもちょっと雨が降ってきたね)ぼんやりしていた。


ハンコ押された

クラブに戻るとミゾグチさんはまだ踊っていますが、何か音楽が好きじゃない感じになってきたので(DJが替わったんだと思いますが前座の方が好み、てのはどうなんか)30分くらいしたら帰ろうか、と話してクロエ(こちらもまだまだ)に相談する。「オーケー、タクシーを手配するわ」と呑んで酔って踊っているのにも関わらず相変わらず切れ者である。スタッフのみなさんにさようならをして、渋滞の無いケソンの夜道をホテルに戻った。とにかく音響の良い、たいへん良いクラブでありました。ホテルのエレベーター前でミゾグチさんに「因みに、いま何%くらいすか」と訊いてみたら「75%くらいかな、あっ」とか言うのと同時に椅子にけつまづいてよろけておられたので、早く部屋に戻って寝ましょう。

2014.1208 1日目:到着
2014.1209 2日目
2014.1210 3日目
2014.1211 4日目
2014.1212 5日目:『すべすべの秘法』上映
2014.1213 6日目:ケソン・プライド・マーチ
2014.1214 7日目
2014.1215 8日目:帰国