2023.0921 星期四

 さて今日は一日かけてマカオに遠足。観たい映画の上映がなくて平日で、と消去法で今日になったのですが確認してみたら最後にマカオに行ったのは2005年の11月。その前にも行った事がありけっこう好きな場所ではあったのだけど、ちょうどその2005年に世界遺産に指定されたせいで著しく観光地化されて大量の人にげんなりしたまま、その後は香港に行ってもマカオに寄ろうと思わなくなっていた。だが今回はふとマカオにも行きたい、という気持ちになって予定に入れていたのだった。調べたら香港⇔澳門間の往来はパンデミック中は止まっていて、全面再開されたのは今年になってからだそうだ。ただ調べたところ九龍半島側のフェリーターミナルはマカオ便が発着しなくなっており、香港島側の上環にあるターミナルから行くしかないらしい。九龍のターミナルだったら宿から歩けなくもなかったんだけど。昨日会ったディックによれば「時間に余裕があればバスで世界最長の海上橋(港珠澳大橋)を通って行くのも面白い」ということなのでちょっと惹かれましたが、調べたら香港市内から行くにはあまり便利ではなく料金も凄く割安というわけでもなく、また入境審査の手続きが「現地民でもちょっと混乱するくらい」面倒だった、とディックが言ってたので素直にフェリーに乗ることにした。


上環駅にあった『さらば、わが愛/覇王別姫』4Kリマスター版公開のポスター

 フェリーターミナル最寄りの上環駅まで地下鉄で行き、駅とくっついているフェリー乗り場に向かう。香港⇔澳門間を往来するフェリー会社は2つ、ターボジェットという会社とコタイジェットという会社で料金は同じなんだけど、マカオに2つある港との往来便の本数と時間帯が違うので、自分らは行きはターボジェットで外港に行き、帰りは氹仔(タイパ)島側のターミナルからコタイジェットで香港に戻ることにする。ターボジェットのチケット売り場ではアフリカ系アメリカ人ぽい女性がチケット売り場で「このOuter Harbour(外港)ってのは何なの!」とまるでクレームのような口調で聞いていて、受付の人が「マカオ市内ということです」と正しいようなそうでもないような答えを返すと「で?カジノは!」と叫び返すので「そんなもんどこに行ってもありますがなマカオでしたら」と心の中で答えてしまう私。彼女はどうもアテンドしてるのか友人なのかの同伴者にフランス語で何やら通訳しており、とりあえずギャンブラーにしては抜かりがありすぎる謎な二人組でした。香港側での出国手続き(要パスポート)を済ませてフェリーに乗り込み、約一時間の航行。

 船の中で意外だったのは香港を出てかなりの区間で携帯の電波が入ったことで、今回は香港・マカオを含む東南アジア6カ国で10日間使えるeSIMを入れてあるのだけど、ただもうすぐマカオという辺りになっても時折3Gで電波を掴むくらいでマカオ側ではなかなかつながらない。じゃっかん不安要素がありつつ船はマカオに着いたので入境し、外に出ると…暑いな。フェリーターミナルの外にはバス停があるのだけど、今回はカジノ(ホテル)が出している無料シャトルバスに乗ってタダで市中に行こうという計画である。カジノの客ではない人間が乗っても問題ないらしいのだが、乗り場も時刻表もまとまった情報がないのでさてどこで乗ったらいいのかな、と思っていると前の方にいた集団がみな同じ方へ歩いていくので付いていったらやがて道沿いにホテル名を書いたシャトルバスの掲示がベタベタ貼ってあるのでどうもこの先らしい。見ると各ホテルごとに簡易乗り場が作ってあって、自分らはいちばん有名なカジノホテル「リスボア」行きのバスに乗ることにする。リスボアまで行ければ後は何とかなるはず。

 そしてバスはホテルリスボアに着いた。はるか昔に来たことがあるというイマイズミコーイチは新しくてけばけばしくて下品な建物を前に「こんなんじゃなかった、たしかに下品だったけど、なんか違う」とブツブツ言っている。自分には何とも判断しようがないが、イマイズミコーイチが「入ってみる、誰でも入れるから」とずんずん先に行ってしまうので付いていく。中に入る時にセキュリティーの人に「帽子は脱いで」と言われる。イマイズミコーイチは「違う…昔はそこら中にスロットがあって…」とまだブツブツ言っているが一周りしてもいまいち納得できないようだったのでホテル側にも入ってみるが、適当に歩いていたら外に出てしまった。自分はようやくスマートフォンが4Gを掴むようになったので地図を見ながら何度来てもここだけは外せない目的地、マーガレット・カフェ・エ・ナタに向かう。ここのエッグタルトは本当においしい。18年ぶりか…とその時は考えませんでしたがリスボンの「パステイス・デ・ベレン」のエッグタルト(うまい)ともまた違った喜ばしさがある。値段は11マカオパタカ(ちなみに香港ドルと混ぜても使える)で絶対値上がりしているはずだと思うけど、昔の値段はさすがに覚えていない。


18年ぶりのナタ

 しかしマカオは香港と同じくらい暑いので、不用意に歩き回ると汗だくでヘロヘロになる。メイン観光スポットであるセナド広場に行くと案の定すごい人出で、しかも周囲は軽めのショッピングモールみたいになっているのでもう記憶にある風情もへったくれもない、が冷房はあるのでドラッグストアの入口にへたり込んで体力が回復するのをじっと待つ。今年はとりわけ世界各地で暑いのだと思うが、前回来たのは11月だったのでその違いもあると思う。マップで見ると近くにスーパーマーケットがあるようなので入り(涼しい…)、マカオ名物アーモンドクッキーと、けっこうレアらしい澳門啤酒(ビール)を買うが、ビールは500ml入4缶パックしかないのでリュックが途端に重くなる。ここの通貨マカオパタカは同額の香港ドルでも支払えるのだけど、マカオでデビットカード払いすると自分のソニー銀行に作った香港ドル口座からではなく、円口座から両替されて引かれてました。まあそらそうか。マカオ半島側の観光はこれで切り上げることにして、無料バスに乗るべく再度リスボアに向かう。が、どうもホテルからバスに乗るには何かチケットのようなものを入手しないといけないようだ。それが有料か無料かは不明だがもう面倒なので普通に路線バスに乗ることにして、近くのバスターミナルからタイパ島に渡るバスに乗り込む。タイパ島に何があるのか、マカオ半島よりも開発されていないらしい、という程度の話しか知らないがとにかく行ってみよう。

 着いたのは「官也街」という商店街みたいなところで広場があり、こちらも充分観光地っぽい(&観光客もけっこういる。自分らは日本人らしい女の子2人組とすれ違いましたが「何か中華街みたい」というすごい感想を述べておられました)ものの、少し道を外れると裏路地っぽところがたくさんあってそうそう自分が好きなマカオはこういう感じだった、と嬉しくなる。それにしてもまだまだ暑いので途中のナイキショップに入って涼んだりしつつ、途中「北帝廟」というお寺があってその前の公園でも休憩、日陰のベンチもものすごく温まっていて尻が焼けるようだ。お堂の中にも入ってみたけどもうもうと線香が焚かれていて涼しい要素が全然ない。イマイズミコーイチは疲労困憊してしまい、更に先に進んだ木陰のベンチに座ると「ちょっともう動けないので、ここで待ってるね」と言う。では、と自分はさっきの商店街に戻り、反対側にある階段を登ったり裏側を覗いたりして、最初にバスで来た時に通過した廃墟みたいなところに入れることに気がついた。どうも100年くらい前の爆竹工場の跡地が整備された場所のようだ。例によって自分はミュージアム逆回りの術をしてしまったようで敷地内で廃墟の建物をさんざん見て廻った最後に「本来の入口」にたどり着き、この一帯について説明する小さな展示室を見つけたのでした(涼しいな、ここ…)。すぐ近くが繁華街なのにも関わらず全然人がいませんでした。面白かったけど。


整備が終わって公開されたのは2022年末のことらしい

 この廃墟をイマイズミコーイチにも見せたい、と暗くなってきた未知を戻る途中で、もっと細い路地を見つけて適当に進んでみたら先の方に猫がいた。逃げるだろうなあと思いながらしゃがんで目を合わせると「ナ〜〜」とか言いながらやってきて自分の足の上に乗ってくる。随分痩せているけれど地域猫なのか、少なくとも人間に虐められてはいないのでこんな簡単に寄ってくるのかもしれない。しばらく遊んでから猫と別れ、イマイズミコーイチが寝ているベンチに戻る。2人でさっきの廃墟に戻ったら係の人が「もう閉館の時間」というようなことを言う。ならば仕方がない夕飯を食べて帰ろう、昼間に通りかかって美味しそうだった海南鶏飯の店に行って(全然マカオじゃないけど、マカオらしい料理店で気軽に入れそうなのがなかった)、英語がぜんぜん通じない中を注文する。うまい飯を食いながら携帯で帰りのバスを検索しようとするのだが、どうも接続が遅い。実はこの時気づいてなかったのだけど少し前に表示の反応がワンテンポ遅いな?と思ってスピードテストをしたら100MB以上出てすげえ、とか思っていたらそのせいで一日1GBのデータ制限に達してしまい、後の通信が異様に遅くなってしまったのでした。超低速でも一応通信はできるのでフェリー乗り場までのバスルートとバス停を確認し、バス停に行ったら路線番号は合ってるけど行き先の名前が違うので並んでいる人に聞いてみるが英語が通じない。もしかして方向が反対側か、と道を渡ったら正しい方面行きのバスが来た。ので乗り込む。

 思えばデータ制限くらったあたりから雲行きが怪しかったのでありますが、ここからは自分がポカを重ねることになります。まずバスの中で帰りのフェリーのチケット予約をしようとする。前に故宮博物館のチケットを取ったKLOOKで見つけた「香港⇔マカオ片道オープンチケット」だとクーポン利用でちょっと安く買えるのでそれにしよう、と通信がままならない中なんとか注文を完了してクレジット決済まで終えたのですが、いざコタイジェットのカウンターでQRコードを見せたら全然通らず、係員の人に指摘されてようやく気づいたのですがこのチケットは「香港発」の片道チケットで、マカオ発には使えないものでした。しかもキャンセル・払い戻し不可。泣きたい気持ちになりながらチケットを買い直し、予定したフェリーには間に合ったので乗り込んで自分はぐったり座席に沈み、追い打ちをかけるようにイマイズミコーイチが「さっき入った海南鶏飯のお店、昼間見たのとは違う店だったね」と言うのでああもう何だかどうしようもないようだ。今日はこれ以上あまり行動しないで早めに寝よう、と心に決めて香港着、2人で眠り込んでいたらしく係員に「着きましたよ(早く出ろ)」と言われる。地下鉄で佐敦に戻り、セブンイレブンでビールを買って(何故なら背中に背負ったリュックの中のマカオビールはまだ冷えてないからです)宿に戻り、シャワーを浴びて眠りについた。うむ、総括いたしますと今日は暑かったのが主な敗因です。再び澳門を踏めただけでも良しとしなくては。


つかれたねえ

目次
2023.0918 出発までと出発当日、香港到着
2023.0919 M+、『犬漏(SOLID)』上映
2023.0920 香港故宮文化博物館、ディック、映画1本
2023.0921 マカオ
2023.0922 エイドリアン、パトリック、映画2本
2023.0923 映画1本、映画祭クロージングパーティー
2023.0924 ジョナサン、クリフォード
2023.0925 帰国

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