2007.0903, mon

 飛行機の出発が13:30(日本にいるときにJALから電話があり、「ジャカルタ→デンパサールの便が10分遅れます」という連絡があったのだが、たかだか10分、それも遅れるのでも連絡してくるのであるJALは、マメだなあ)、では空港には真面目に11時半に行くとして10時起床で、と約束をしたものの僕らが大幅に寝坊。朝飯食ってる余裕はないので急いで支度、ざっと荷造りをしておいたのがせめてもの救い。田口さんにおはようございますをして、昨日買った果物の残り手荷物に詰めたりしているウチにジョンがやってきた。昨日撤収した写真の内、ここから東京へ配送にするものをジョンに託し、宛名を書いている間にもイマイズミコーイチはうつろな顔して部屋の外に置いてあるベンチに座り、昨日買った500ml牛乳を飲んでいる。何か額に傷が出来てるよ、と言うと「昨日の打ち上げでどこかにぶつけたのかも」と言う。このあと座っていたベンチ(まあ、かなり古そうだったが)をバキとかいってうっかり壊したりと、なかなかの与太郎ぶりではあった。

 スカルノハッタ空港までの道は比較的空いていて、晴天の中タクシーは快調に進む。出発前にジョンが説明してくれていたのか、僕らは何も言っていないのに国内線の入り口まで車を寄せてくれる。セキュリティーチェックをしてチェックイン、搭乗券をもらって荷物を預け、このまま入ってもまだ時間はあるのでまた出て、気軽そうな食堂でさっきセマラで食いっぱぐれた朝ご飯。好きなお菜を選ばせてくれる方式なのでご飯と鶏と牛肉と、なんかお浸しのようなもの。手荷物の中のマンゴスチンの外皮を苦労してかち割り、まだ冷えているところを食べる。もう一度セキュリティを通って入り、今回は国内移動なので出入国は無いからその脇を素通りして、相変わらず空港と言うよりはリゾートホテルみたいな待合室でのんびり写真を撮ったりしているウチに出発時間、飛びます。


空港の庭、カントリークラブみたいです

 計算外な事に3人まとめて発券したチケットは、僕とイマイズミコーイチが通路を挟んで離れてしまい、田口さんに至っては僕らの遙か後方に席を飛ばされてしまっていたのでなんかバラバラ。そしてこれもまた計算外な事に割としっかりした機内食が出てしまい、それでも食えるわなぁ、と完食して後は寝ていたが、フライト自体は2時間もない。ジャカルタとの時差が+1なので、機内で腕時計を一時間遅らせる。眼下の海がどんどん近くなる、と思う間もなくどがっ、と機体が揺れて飛行機はデンパサール、グラライ国際空港に到着した。

 着いた途端になんか空気の匂いが違う、で重さも違う。後ろの出口から来た田口さんと合流して建物まで移動、これまた異様に呑気な感じの建物内で預けた荷物を受け取り、出口へと向かった。出迎えの人々が大挙してそれぞれプラカードを出しているが、なんか妙にハングルが多いので韓国のツアーと同時なのかも知れなかった。一通り見てみるが映画祭の迎えらしい人は見えず、取りあえず離れたベンチで一服、ホテルの出迎えにレイを(花輪で歓迎、に見せかけて要は目印だわな)掛けられている韓国人カップルや、あからさまな白タクに捕まっているサーファーなどをぼんやり眺めたりした。白タクは僕らにも日本語で話しかけてくるが適当にあしらって、やっぱ来ないね、自力で行こう、と空港のタクシー案内所で「スミニャック」と言ってジョンにもらったメモを示し、料金rp.60,000(約780円)を前払いすると運転手さんが駐車場まで案内してくれた。


世界の車窓からタクシー編

 「バリは初めてですか」とか、最初だけ会話があった後、途中バカでかい石像や極悪そうなデューティーフリーの建物を過ぎ、あとはぼや~っとした僕らを乗せたタクシーは田舎道のような道路を走り、やがて細い道へと入って、ホテルや商店が見えてきた。やたら凧があがっているけど何だろう。地図によると映画祭会場の一つである"Q Bar"はホテルの近くのようなので、もしかしたら通るかもね、と言っていたら本当にあり、後で行ってみようかねー、でもまずはホテル「プリ・チェンダナ」へ。

 タクシーはホテルの中まで入ってくれ、僕らと荷物を降ろして去っていった。フロントでチェックイン、田口さんが1号室、僕とイマイズミコーイチが2号室、同じ建物の一階部分の階段を挟んで右と左。木製のキーをもらって入ると、これがまたセマラ6に引けを取らないリゾート仕様で充分広く、やっぱり蚊帳付き天蓋ベッドと高い天井、浴室にはバスタブもある。セマラには謎のお厨子にご本尊様があったが、この部屋で電話を置いている箱には謎のお面、コワ。荷物を置き、ウェルカムドリンクが出るらしいので受付でもらったチケットを持って、プールサイドのレストランに行く。テーブルについて運ばれてきた飲み物は黄色みががって白くつめたい。飲んでみると生姜と柑橘系(グレープフルーツかも)の果汁を混ぜたものらしく、おいしい。プール際でぼんやり煙草をふかしながら、あ~来たねえ、と木に吊る下がったぼんぼりのようなものを眺める。イマイズミコーイチはもう20年近く前にバリに何度か来ていた時期があったのだが、当時滞在していたクタという地域とは別エリアなので、「もう、全然記憶のバリとは違う」のだそうでした。


プールがございます

 まだ日が暮れていないので海へ行ってみることにする。ホテルから浜辺までは歩いて300mもないくらい、行く途中に大きなリゾートホテルがあり、ここ、機内で宣伝していたやつじゃないのかなあフランス資本のチェーンのさ、と田口さんが言うのでそんな気もしますね、と広大な入り口を眺める。見通しの良い道は一直線、海より先に空が見えてきた。夕日が沈み掛かっている。わーい、とか言ってよたよた走り出し、砂浜手前に積み上げてられて異臭を放つ生ゴミを撮影したりしながらも、海岸線へ。ギリギリ間に合ったインド洋に沈む太陽を、多分口を開けたまま眺めていたと思う。サンダル履きのイマイズミコーイチはそのまま海にちょっと入り、しばらくして「なんか不安な気持ちになる」と言いながら帰ってきたが、自分はとても安心した。浜辺では少年がサッカーをしているが、サーファーも泳いでいる人も居ない。浜はとてもきれいだったので、もしかしたらさっきのゴミは多分漂着物を誰かが掃除したものかも知れない。

 しばらく浜にいて、暗くなってきたのでホテルへ戻る。さっきのレストランで夕飯を食べることにし、「バリハイ」というバリのビールで乾杯して、鶏の焼いたのをご飯に添えたヤツを頼んでみた。米が部分的にベチャっとしていたのを除けばとても旨く、しかも安かった。部屋に戻ってジョンに電話をし…ようとしたらフロント経由なのでなかなかつながらず、まあいいや、と切って貴重品をセイフティーボックスに預けに行ったら電話はまだつながっていて、すいませんひーとかいいながらジョンと話す。「無事着いた?部屋は気に入ったか」と気にしてくれるので「エヴリシングナイスサンキューソーマッチ」とかヘンな英語で明後日来るというジョンにお礼を言った。


波はちょっと荒い

 ちょっと散歩がてらさっきの"Q Bar"に行ってみようか、ということになって、部屋の鍵を閉めて出掛ける。ホテルの前にはタクシーの客引きがいつも居て、「ドコイクンデスカ」とか「タクシタクシ」とか声を掛けてくる。無視して、海とは逆方向に500mほど歩くとさっきの"Q Bar"なのだが、その途中ヘルメットを売っている店があった。合皮製でかわいい。日本では6,000円くらいで売っているのを見たことがあるよ、とイマイズミコーイチが言うので、ちょっと見てみていいのがあったら買ってみよっかな、と店に入る。すかさず店員の小僧が出てきて何やかや言ってくるが、適当に返事をしながら探してみる。イマイズミコーイチは黒、自分は茶色のを選んでこれならいいかな、と値段交渉、初めは随分高いことを言っていた小僧も段々まけてきて、最終的に2個でrp.300,000(約3,900円)で決着した。握手して代金を支払い、小僧が「名前は?」と聞いてくるので何で?と思いながらも正直にそれぞれ名乗ると小僧、「そっか、僕の名前はアジノモト、またよろしく」などと返して僕らは腰が砕けました。何だ味の素って。こういう展開だと知っていたら「バルサン」とか「カネボウ」とか答えたはずであるが不意を突かれました。くやしい。


道沿いには垂れ幕

 やがて映画祭のポスターが貼ってあるQ Barの前に着き、中を覗きながらふ~ん、バーと言うよりはクラブだね、と話していたら客引きの男の子がしきりに「入れ」と言う。行く前には入って一杯飲んでもいいかな、と思っていたんだけど中には誰も客がいなくて、僕らだけで飲むんだったら別なとこがいいなあ、とか二の足を踏んでいるとそいつは「23時と1時からドラァグクィーンショーがある。オカマ・ショーだよ」と気を引き立てるように言い、「オカマ・ショー、オカマ・ショー、フォーユー(そりゃ他にいねえのだもの)」とうるさい。イマイズミコーイチはもうちょっと営業モードでない対応にならないものかとポスターを指さしつつ「僕はこのね、First Loveっていう映画の監督で、6日に上映するの」とか言うのだがそいつはまったく意に介さず「あ~そうなんだ、でオカマ・ショーだけど、見てけば?」とまったく態度が変わらないので諦め、退散することにした。

 貼ってあるポスターをよくよく見ると明後日の『初戀』上映会場は言われていたこのQ Barではなく、"Kudos Bar and Lounge"となっている。それはどこだ、と思ったら道を挟んで向かい、Q Barよりもっとでかい建物がKudosで、この建物のどこで上映するんだか判らないけれどいずれにせよ映画館じゃないから、ジャカルタよりは環境が良くないね、と思った。こことQ Bar、Q Barに向かって一軒挟んで右側にはあからさまにゲイのお客で溢れているバーがあったので、この辺はバリの「ゲイ・エリア」なのかも知れなかった。しかしQ Bar、全然客がいないけどいいのかな。どの店からもひっきりなしに「ハロー」または「オカマ・ショー(うるせえ)」とか声が掛かるがまあ適当に聞こえない振りをして、買ったヘルメットを持って途中スーパーに寄って水とかを買ってからホテルに戻り、さすがにちょっと疲れたので今日は早めに寝ましょうか、と田口さんと別れ、チェックイン時にフロントでもらった「朝ご飯券」があるのであまり遅くないように起きましょう、とまた蚊取線香に火を付け、シャワーを浴びて(これがまた温度調節がむつかしい)就寝した。


部屋はこんな。全体を照らす明かりがとても弱いので、夜はちょっと不便


2007.0830 ジャカルタへ
2007.0831 ジャカルタ第一回上映+写真展
2007.0901 ジャカルタ第二回上映  ↓
2007.0902 ジャカルタ第三回上映+写真展撤収
2007.0903 バリへ
2007.0904 オフ一日目
2007.0905 オフ二日目
2007.0906 バリ第一回上映
2007.0907 帰日