2007.0907, fri

 起きる。田口さんの部屋の前で鳥の声がする、と思ったらすぐ先の木に鳥籠が吊る下がっていて小鳥が一羽、と思っているうちにスタッフがカゴを持ってまたどこかへ行ってしまい、しばらくしてまた別のカゴを持ってきて隣の、自分たちの部屋の前に吊した。何だろうなあ。今日は帰国の日、ホテルもお昼にチェックアウトとしないといけないのだが、フライトは23:55、丸一日バリで過ごさないといけない。着いたときに気付いて手を打っておくべきでしたが、チェックアウトして半日も荷物を全部抱えて動くのはあまりにしんどいので、一部屋だけ延泊できないかな、と話し合う。そこへジョンが来たのでその旨を話して、その分は自腹で払うから、いま田口さんが一人で宿泊している1号室を一泊取ってもらう事にした。「5時までだと半額、それ以降は100%支払わなくてはいけないが、いずれにせよスポンサーに聞かないと料金が判らない。話はしておくからちょっと待ってて」と言ってくれる。


ぴよ

 フロントで話は付いたようなので取りあえず自分たちの荷物を全部田口さんの部屋に移し、鍵を返して昨日と同じように待たせてあるタクシーに乗り込む。ヴィクトリックくんが乗っている。お待たせしました、と車はまた昨日と同じ道をたどり、同じ店かなあ、と思っていたら更に数軒先の「ザンジバル」というレストランで止まった。5人で席に付いて、ジョンを交えてヴィクトリックくんと話す。シンガポールのクィア映画はどう?と聞くと、「政府が厳しく規制しているので、なかなか発表の機会がない。でも自分は将来きちんとした場所を作るつもり」と言っていた。彼はとても意志の強そうな眼をしているし、きっとやるね。じゃあ実現したら呼んでね、とお気楽な返事を返したが、シンガポールとは全然接点が無かったので、これがきっかけになればいいなあ、と思う。

 朝ご飯はナシゴレン目玉焼き付き、付け合わせにいつも揚げ煎餅が付いているのだけど、日本だと大抵エビせんだがここでは魚味。そこへスサント兄弟が遅れて到着、おはよー、と抱き合ったニーノはなんかやたらシャツが湿ってましたが、走ってきたの?彼らも朝食を頼んで、向かい合わせでのんびり食事を(この店はあまり蠅が出ない)していたが、その内ニーノが名刺みたいなカードを見ながら携帯で話を始め、それはいいんだけどそのカードの片側には裸ムキムキ写真(男性)が印刷されているので何コレ、と聞くと「僕ら(ジョンも)泊まっているホテルのカード」と言うので見せてもらったら、ここよりちょっと北のクロボカンにあるホテルで「会員制、プールあり」とか書いてあるが、う~ん会員…何のだろう。次回はそこに、泊まりたい。


うみべのれすとらん

 朝ご飯はおしまい、うまかったー。昨日と同じく海岸を歩いて帰る事にして、彼らはまた今夜も上映があるから(今日はどんなになるのやら)行かないといけない。ジョンは「またホテルに行くよ」と言ってくれたけど、スサント兄弟やヴィクトリックくんとはここでお別れだ。ヴィクトリックくんはもうバリにちょっと居るみたいだったのだけど、帰国を一日早めることにしたらしくて、ジョンに頼んでガルーダに電話してもらっていた。路上に立っていたらニーノがててて、と僕らのところにやってきて、「ここでさよならをしないといけない。また会えてよかった。今度は来年の4月にジョグジャカルタで、オーケー?」と言う。インドネシアに毎回来る度に不思議なのは、こういうお別れがあんまり悲しくならないところだ。それは別に冷たいと言うんじゃなくて(むしろ、とてもあたたかい)自然に「じゃあまた」という気持ちになれるという事で、考えてみれば日本でだって3年くらい平気で会わない人は珍しくないし、実際会えそうな気がするんである。

 ま、でもお別れはお別れなので、僕らも名残は惜しい。じゃ一発写真でも、と田口さんにスナップを撮ってもらったりしたあとで、細っこいニーノ(前より乾いてた)とギアを抱きしめ、「またね」を言って車を見送った。昨日のクラブで見ていて改めて思ったけど、しかし仲のいい兄弟だ。そう言えば昨日はおそろいで「ジョグジャQ映画祭Tシャツ」を着ていた。スタッフとヴィクトリックくんを乗せたニーノ運転手の車は非常に大胆な方向転換をするので、向かいから来た車のすげえ邪魔になってたけれどあまり意に介する感じもなく、シルバーに赤のラインが入った乗用車は悠々と走っていった。バイバーイ。

 海岸へ出て、さっそく靴を脱いだイマイズミコーイチだがそこはまだ焼けた砂浜なのであちあちあち、と水辺を求めて駆けだしていく、「走り出したら止まらない」ってこういう事か、と妙に感心しながらでも暑いすね、と自分は田口さんに言う。ようやく水に濡れた砂の上に立って止まったイマイズミコーイチを激写してみましたが、ジャカルタの時とはまた違った感じで難民風、でもここはリゾート地です。砂浜には無数の小さな穴が開いていて、何だろうね、と言っていたらイマイズミコーイチが小さな蟹を発見する。近づくとささ、っと穴に隠れてしまうのだけど、全長5mmくらいの本当にちいさなカニがいっぱいいるのだった。歩いていると靴の裏で何かが割れるような感触がして、カニを潰していたらやだなあと思っていたのだが、よく見たら打ち上げられた貝殻で、とても脆いので踏むとパリパリ砕けていく。無傷なのを選んで拾いながら歩いていたら、すぐに最寄り海岸まで達してしまった。


砂に水

 プール脇の水道で貝殻を洗って、もう部屋は一つだけなので、元田口さんの部屋を3人で使う。もう午後はそれぞれが好きな事して過ごしましょう、とイマイズミコーイチはマッサージ予約再び、田口さんは部屋で休んでから散歩、自分はビンタンスーパーマーケットに土産の買い足し&両替に行く事にし、夕方に集合しましょう、と約束して解散、さて。

 部屋に帰って気付いたのだが、出国するときにrp.100,000(約1,300円)を払わないといけないらしく、でも自分はもう手持ちのルピアが50,000くらいしかない。延泊の精算と夕飯と空港までのタクシーと、と考えると足りなそうだし、でも一万円も替えなくていいな、と思っていたらイマイズミコーイチが「じゃあ僕と五千円ずつにしよう、僕も足りないかもだから」ということでセイフティーボックスから日本円を出して、受付の男の子がやたら「いい笑顔」なのでこれはもしや田口さんのバリ可愛いちゃん♥#2ではないか(受付でニコッ、て笑った笑顔が素敵で、と言ってた)、と思いつつどうも、と赤道付近の日差しはやっぱ違うね、とか呟きながら歩き出した。やはりタクシーの勧誘が声を掛けてくるが(これまでで一番笑ったのが「ヘイタクシ、マサージ、オンナ」とかいうフルコース)無視して歩く。


ホテル近く、「売却中」ってのは惜しい

 まずは途中のインターネットカフェでメールを見たり。あ~東京に帰るとあれとこれとあれをやらないと、と思い出させられたがまだ実感は薄い。メモを取ろうと床に置いたカバンを持ち上げたら何故だか底がびしょびしょ、よく見たら床一面に水が。受付の女の子は気付いていないみたいだったので拭いてくれるようお願いする。この天気だからカバンはすぐに乾くでしょう。スーパーに着いて両替、前回よりほんの少しだけレートが下がって¥10,000=rp.802,000。ピーナツを少し、煙草を少し、理想のツナ缶を探す、というのがライフワーク(他にもっと重要な事はないのか…)の自分は1個150円くらいのツナ缶を6個も買ってしまう。

 店を出て、その辺の路地や空き地に入り込んで写真を撮ったりしながらホテルに戻ると、フロントにはさっきのバリ可愛いちゃん♥#2と元祖バリ可愛いちゃん♥が話をしている。田口さんはこの光景を見ただろうか、と思いながら部屋を覗くけれど外から鍵が閉まっていて居ない。プールかなあ、と思って行く途中に飼い犬親子が庭で遊んでいるので、プールの手前で写真を撮ったりちょっと遊んだり。でプール際に行くとイマイズミコーイチが泳いでいる。「田口さんは?」と聞くと「今さっき出掛けちゃったよ」と言うので追っかけていったけど居なかった。残念でした。

 自分もちょっと泳いで、寒くなったので部屋へ。イマイズミコーイチは先に戻って昼寝をしている。部屋の外の椅子に座って、可動式スプリンクラーが水を撒いているのをぼんやり眺める。その操作をしているこの子は田口さんのバリ可愛いちゃん♥#3かなあ、「見られていると全く気付かずに犬と戯れているのを見ちゃって、もう」とか言ってましたが、今ならばここで普通に見られたのにねえ。朝方この辺に吊されていた鳥籠はどこへいったのか、もう見当たりませんでした。


わんこあそぶ

 やがて田口さんが戻ってきたので、レストランでバリ最後の夕食をとる事にした。自分はオックステールスープ、イマイズミコーイチはナシゴレン、田口さんはミーゴレン。あとビールにフレンチフライ、毎回ガーリックトーストを出してくれるのでそれを食べながら、今回はバリで過ごせてよかったねえ、とちょっと和む。自分たちのこれまでの海外上映は、もちろん充実していたけどいつもバタバタしていて、しかも決まって出発が早朝だったりしていたので帰国がとてもあたふたしていたのだけれど、こんなにゆったり帰りの飛行機を待つのは初めてだ。

 食べ終わって部屋に戻ってから最終パッキングをし(ツナ缶6個をなんとかスーツケースに納める)、ほどなくジョンが現れた。フロントで話をしてもらって延泊分の精算をして(ジョンの力なのか、格安)、タクシーを呼んでもらい(なに一つ自分たちでしないゲスト)荷物を積んだら、いよいよジョンともお別れだ。ありがとう、何もかもスバラシイでしたよ。ジョンに「来年のジョグジャには行く?」と聞いたら、「うん、僕は何処にでも行くよ」と笑うのでじゃあ8ヶ月後、ジョグジャカルタで。もうすぐ始まる上映会場までは道筋だし、乗ってく?と誘ったのだけど、「僕はいつもタクシー移動ばっかりだから、健康のために歩くよ」とまた笑った。元気でね。

 道ばたで携帯を掛けているジョンはあっという間に見えなくなり、タクシーは夜の道をぶんぶん進む。割と空いている。来るときに見たでかい石像を横切り、広い道に出たらたぶんもうすぐ空港だ。駐車場に降りた途端に勝手に荷物運んでチップ請求というのもあるらしい、とガイドブックにはあり、まぁあり得る、とは思っていたのだけれど、運転手さんは国際線の建物ギリギリまで付けてくれたので幸いそんな事態にはならず、料金も行き(空港で紹介)よりかなり安かったので、かなり多めのお釣りだけどいいよ、とそのまま渡して外で一服。ふー。

 チケットを発券してベルトまで外させられるセキュリティーを通り、出国審査を済ませて内部に入るとさすがに観光地だけあってショップがたくさん、しかも遅くまで開いている。あとは空港使用税10万ルピアを払うだけなのでそれをより分けるともうほとんど残らない。両替しても1000円にもならないのでこれは来年のジョグジャまで取っておこう、と財布のお金を日本円と入れ換え、まだまだ時間はあるのでうろうろする。さっきから僕らの乗る日本航空のアナウンスばかりが流れるが、なんか心配なのだろうか。ものすごく並んでいる列に付いてってゲートに入り、入った待合スペースはものすごい混雑、椅子には座れないので床にべたっ、と腰を下ろしていたら「ご搭乗をお待ちのイワサヒロキさま、イマイズミコウイチさま、タグチヒロキさま、××××さま(知らない人)、いっらしゃいましたら係員まで…」などとアナウンスされるので何だろ、と行ってみたら発券手続の時に係員がチケットの何かを切り忘れていたようで、「タイヘンモウシワケゴザイマセン」と現地スタッフに日本語で謝られてしまった。あの係員はなんかとろとろしてると思ったが…。韓国に引き続きまた帰国便で呼び出しを食らってしまいました。


マンダラ航空でございます

 引き続き床座り中にまたアナウンス、「誠に勝手ながら手荷物は一つまでとさせていただきます」って今更言われても、と自分はスーツケースに入りきらなかった着替えなど(あとヘルメットとか)を入れた巨大なトートバッグを見、えい、とか言ってそこにショルダーバッグを無理矢理突っ込んで手提げヒモを結わえほーら一つ、ひとつですよーとか言いながら乗り込む。機内は行きのジャカルタ方面とは違ってえらい混んでいる。定時になっても動き出さないので何かトラブルか、と思ったら機長アナウンス、「出発時刻を過ぎておりますが、まだお着きにならないお客様を二名ほどお待ちしております、もうしばらくお待ち下さい」やはり空港であれだけ言うのはその為でしたか。でも遅れたけど。

 で、その「二名様」もやっと来たので(なんかこりゃダメだ、な感じの男女カップル)ヒコーキ出発。日本の新聞をもらっていた田口さんに見せてもらったら、全日は台風9号で大変なことになっていたらしく、時間差で放送されたNHKニュースも台風関連ばかり。何度か見たメールでも「こっちは天気大荒れで大変、帰れるの?」というのがあったから、一日違っていたら自宅までの帰りがかなり劣悪なことになってたらしかった。機内ではなかなか寝られず、時計を一時間早めて着いたのが朝の8時半で日本、暑い。リムジンバスで帰るというイマイズミコーイチと田口さんはうっかり買ったチケットのバスを乗り過ごし慌てて次のバスに乗って行き、自分は京成八幡まで特急に乗って乗り換え(が一番安くて便利よ、と行く前に近所のおばさまにお聞きしたのだ)たのだが確かに安いけど京成八幡→本八幡(新宿線)の移動がキツイ。下に行くには階段しかないんだもの。逆(行き)だったら全部エスカレーターだから良かったのだけど。そのエスカレーターと階段の分かれ目には何故か[BINTANG]の缶ビール未開封が置かれていた。


2007.0830 ジャカルタへ
2007.0831 ジャカルタ第一回上映+写真展
2007.0901 ジャカルタ第二回上映  ↓
2007.0902 ジャカルタ第三回上映+写真展撤収
2007.0903 バリへ
2007.0904 オフ一日目
2007.0905 オフ二日目
2007.0906 バリ第一回上映
2007.0907 帰日