2010.1011 MON

 朝起きると今日はママが呼びに来てくれ、昨日預けた布をヒラヒラ持っている。あれあれもう出来たんですか、早え。建替えてくれていた仕立て料を払って、早速イマイズミコーイチはそれを穿いてみる。うむ、やっぱズボンだね。これはこれで穿きやすくて良いけれどサルンとは違うなあ、と鏡の前でひとりごちている。朝ご飯を食べて、部屋でメールを開けるとジャカルタのプートリからメッセージが届いていた。「元気?ジョグジャに居ると聞きました。私もジョグジャの映画祭で来ているので、もし会いたかったら連絡してね。ちなみに夜はオープニング上映がある」だそうでそうだね彼女とはあんまりジャカルタでも一緒ではなかったし、向こうが忙しくなければ…と昼飯の時にパパに話してみるとプートリを知っているようで「そうか、じゃあ電話してみたら?もし市内に行くのならタクシーを呼ぶよ」と言ってくれる。パパは自分の携帯でプートリに電話してくれ、かかったので自分と替わる。「ハイ、午後は時間があるから会える。どこか判るところで待ち合わせましょう」とのことなのでじゃあ5時にマリオボロ・ショッピングモールにあるマクドナルドの前でどう?と提案すると「オーケー」で約束完了。パパにもそのように伝える。


ごはん

 部屋で支度をして、ついでにジョグジャの地図があったのでそれを拝借してから本館に戻ると、何故かママが口紅引いたりしておめかししている。???と思っているとパパが「タクシーは来ないので行きは送っていく。帰りはタクシーを拾ってこの地図を見せなさい」と小さなメモ用紙に青インクのボールペンで細々書き込んである手製の地図を渡してくれて、本当にタクシーが来ないのか、親切なのか不明ながら(もしかしたら呼べるんだけど来るまですごく時間がかかるという事だったのかも)ともあれご厚意ではあるが、それにしてもママが化粧をしている理由は不明である。美々しい格好になったここんちの大奥様は立ち上がって手をハタハタさせながら「マダム・バタフラ〜イ」などと言うのでますます僕らの頭は混乱する。まああれは一応日本モノなのでサーヴィス的な意味合いかもしれませんが確か蝶々夫人は洋妾だったはずですけれどいいんすか奥様、とは思いつつとにかく「いや、実におうつくしい」などと口々に言ってみる僕ら。

 で、奥様も車に乗り込んでくるのでやはり一緒に市内に出るようだ。どう考えても僕らの事が無ければ無かったはずの外出なので、何かついでを思いついたのかもしれない。昨日も通った道を走りながらパパは「この道を憶えておくんだよ」と言うので、特に家に一番近い建物(とは言え木々に遮られて非常に見別けづらいのだが)を記憶する。帰りはあの骸骨みたいな白い門扉がある家を過ぎたら次がニーノんち、ってこんな憶え方でいいのか、帰りはきっと暗くなってるし。ガソリンスタンドで給油してから走り出すと、道路脇にだんだん建物が増えてくる。それにつれ道も渋滞し出すが、約束の5時までには時間がありそうだ、ということで地図を確認し「あの、マリオボロの先がミロタ・バティックだと思うのですけど行ってもいいですか」とパパに言うとはいはい、てな感じで(助手席のママは「ミロタ、ねえ…」と呟いている)非常に交通量が多くて進まない中を電車の線路に差し掛かり、ここは踏切かなと思っていたら直進では交差していないらしくぐるっと右旋回に迂回して立体交差をくぐり、見慣れたマリオボロ・ストリートに到着した。


このガソリンスタンドが目印

 駐車場から戻って来た2人を待って一緒にミロタ・バティックに入る。ここは一階はファブリック中心の店だが二階はその他土産物もあり、ちなみにオーナーはTSの方。そのせいか知らないけどとにかく友人知人、と言うよりニーノに勧められて2年前に行き、今日仕立て上がったバティックもここで買ったものですが大有名店のようです。確かに色々面白いものがある。入ろうとすると自分だけ呼び止められたので、受付の方を見ると背中を指差しており、どうも大きいバッグは入り口で預ける決まりになっているようだ。ナンバープレートを受け取ると「アリガトウ」と日本語で言われる。さてママは入ってすぐの婦人服のところでブラウスを掴んだりしておりパパお伴。そこを通り過ぎて2年前と同じく布コーナーであれこれひっくり返していると割とすぐにママが2着ほどブロウチの付いたシャツを見せて「どうだ」といった感じで差し出すのでもう選んだのか早いねどうも、と驚きつつも確かになかなか似合っていました。「じゃあ我々は帰る。気をつけて戻っておいで。タクシー乗り場はプートリに教えてもらえばいい」ということで僕らを送るついでにママが服を2着買って、ご夫妻はお帰りになられました。どうもすみません。

 僕らもしばらくシャツやら布やらを矯めつ眇めつしてましたが約束の5時まであと10分、そろそろ出ないと間に合わない、でも決められない…でも仕方が無いので出る事にして、預けたリュックを受け取るついでに店員さんに「ここは何時まで?」と聞くと「9時までです」ということでじゃあプートリと別れた後で来ればいいやね、と一旦店を出る。感覚的はすぐ、なのだけど歩くと結構距離があって、着いたのはちょうど5時、マクドナルドが見えて来た、プートリ居ないね、と言っていると急にイマイズミコーイチが「トイレ」と建物内に行ってしまった。自分はしばらく外で煙草を喫っていたが、ふとマクドナルドの中を見るとまさにプートリが入って来て僕らを探しているところでした。急いで入っていって「ここだよん」と捕まえる。お疲れさま、というかちょっと久しぶり。「イマイズミさんは?」「トイレ行った」ので待っているとやがて「信じられないくらいの(略)出た」などと言いながら戻って来たのでどうする?どっか入ろうか?と聞くとプートリは「そうね、行きたいところはある?ミロタにはもう行った?」と言うので僕らは渡りに船、と「(行ったけど、また)行こう」といま来た道をせかせか戻る。


マリオボロ・ストリート

 プートリが「バンクーバーはどうだった?」と聞くのでとても良かったよ時間が足りなかったけど、と答えてからこっちもスラバヤとマランの映画祭はどうだった?と質問する。ジャカルタを終えたQ! Film Festivalはこの2都市に巡回し、当初は自分らの上映も予定されていたのだけどバンクーバーが挟まったためにキャンセルになって、まあ現状からすると予定通りだったとしても「家族コンプリート」の上映は中止だっただろうが、「保守的な土地柄なので」とジョンが言っていたので気になっていた。プートリは「問題なかった。抗議行動も無かったし」と教えてくれ、少し安心する。「今日がジョグジャカルタの初日なの。いまのところトラブルも無い感じ」だそうで彼女はこれからその会場に行くらしかった。僕らも行きたいんだけどそれは夜遅くて、そうすると帰りがかなり遅くなり、ニーノ一家に迷惑がかかるのでそれは避けたい。ホテルじゃない(+ニーノも居ない)のでそこがつらいとこだが仕方ない。さてまた来てしまいました、とさっきの受付の子に再度「アリガトウ」を言われつつリュックを預け、それぞれの買い物に没頭する。イマイズミコーイチはバティック地のシャツを、自分はバティックじゃないけど異様にカラフルなシャツと臈纈染め風のTシャツ、プートリは、と見るとなんか10着くらいもりもり服を選んでいて笑える。考えてみたら彼女もここの人じゃないのでそんなしょっちゅう来られないわな。プートリはイマイズミコーイチに、自分のボーイフレンドにプレゼントするシャツについて意見を求めたりしてました。

 お会計が終了、と同時にプートリはもう行かなくてはいけない、と言う。2日振りに(初めて)市街地に出て来たものの結局ミロタに始まりミロタに終わりましたがいい買い物だったかな。別れ際にバリには来るの?と聞くと「行く」とのことでもしこれでジョグジャ最後でもまた会えるかも、ああそうだタクシーってどこで拾ったらいい?「マリオボロ・ショッピングモールの手前にあるホテルで拾える」とついでに間違いの無いタクシー会社も教えてくれて、プートリは(服をもりもり持って)去っていきました。またね。さてまだ時間があるのでもう少しどこかへ入ろうか、ちょっとお腹減った、ということでショッピングモールに入り、なんかインドネシア料理じゃないものにしようか、ハンバーガーとかさ、とマクドナルドを見るとけっこう高かったので止め、ピザハットを見つけてそこに入る。ピザは普通においしかったですが、自分が頼んだドリンクは上部が7割くらい真っ青、で下部3割がマンゴーピューレ(山吹色)という見た目もすごい濃厚なもので、しかもなんかの果物の種が入ってる。これは混ぜた方がうまいな、とぐるぐるかき回してみたら緑色になりました。最後に地下にあるスーパーに寄って毎回買ってる「234」というガラム煙草を買おうと思ったらショーケースには無く、でも棚が半分シャッターが下りてるのであるかも、と自分が持っていたパッケージを見せたらありました。2人で一個づつ買って、ああそうだマンゴスチンも買おう。おやつも買おう、とポッキーのようなものが書かれているお菓子を買って会計し、じゃあそろそろ帰るかね、とタクシーを探しにまた路上へ出た。

 プートリが言っていたように「ホテル」はあるがタクシーは停まっていない。これはフロントで頼まないとかな、と思って一応(ちょっと古めの)持参ガイドブックを広げてみると、さっき通った駅にタクシー会社の事務所があるようだったので、地図があるとは言えニーノ宅は「特殊物件」なのでその辺のタクシーでは辿り着けないかも、と空港での事を思い出したのもあって探してみる事にした。駅は左右に延びているが自分のいい加減な勘に基づいて右側にずんずん進む。出店みたいな店が延々続いているがタクシープールのようなものはない、バス停はあったけど。諦めて戻り、今度は左手を探してみるがやはりそれらしいものはない。こっちはすぐに暗くなっちゃって更に可能性は無さそうだ。一応ここにも「ホテル」はあるけど…仕方ない最初のホテルのところまで戻るか、と歩き出したらすぐのところにあるまた別のホテル(すごく豪華そうなホテル)の前あたりで一台のタクシーが僕らに気付き、というかこれを止める気はなかったのだが(プートリに教わった「サデワ」というタクシー会社ではなかったし)運転手さんが非常に熱心に勧誘するのでまあ住所と地図を見せたら判らない、と言うかもしれないし、とひとまず交渉してみる事にする。パパの地図を見せるとふんふん、という感じで見ていたがすぐに「オーケーオーケー」と言うのでこれは行けるだろう、と判断して乗り込む。乗ってすぐ、助手席の自分にメーターを示して「オーケー?」と聞くのでこの人は多分大丈夫だ、と思う。


疾走する。ただし逆方向に

 マリオボロ通りはメインストリートではあるが一方通行で、ニーノ宅からはまっすぐ来られるのだけど帰るとなるとどこかで回らないといけない。一旦逆方向に進むので僕らが不審に思わないようにという配慮なのか、運転手さんは「何とかストリートを通ってどこそこで曲がってそれから何とかストリートに出て…」と説明してくれる。まあいきなり言われても感じが掴めないのではありますがこの人は親切で、道中近隣の観光案内などもしてくれる。とある交差点で「これをこっちに行くとボロブドゥールで、あっちにいくとプランバナン、であっちが…」てなかんじ。プランバナンは2年前も行けなかった(直前に起こった地震による倒壊で立ち入りできなかった)が今回も無理そうだなあ。そしてタクシーは真っ暗な道に突入し、こっから迷わず行けるかな、なのだがどうもパパが地図に書いてくれたのと違うルートを使おうとしているようだ。なので僕らもあんまりどこがどうか確信が持てないのだがこの人は優秀らしく、途中誰にも道を聞かずに朝に寄ったガソリンスタンドのところを入り、さあこっからは自分の記憶があってるかどうかのテストですが幸い例の白骨門扉が見えたので「もうすぐもうすぐ」とインドネシア語で言いたかったのだが何と言っていいのか判らず身振りで示す。とそこへニーノ宅の踏切が見えて無事に到着。パパが出てくる。料金は80,000ルピアくらいだったので空港で前払いしたのよりかなり安い。ありがとう、と多めに渡して無事、家に戻る。ただいま。


インドネシア・ジャカルタ編
2010.0929 成田発仁川経由ジャカルタ行
2010.0930 二泊目
2010.1001 三泊目
2010.1002 「傘脱」上映

カナダ・バンクーバー編

インドネシア・ジョグジャカルタ編
2010.1008 香港経由ジャカルタ経由ジョグジャカルタ行
2010.1009 二泊目
2010.1010 三泊目
2010.1011 四泊目
2010.1012 五泊目
2010.1013 ジョグジャカルタ発バリ行

インドネシア・バリ編
2010.1014 クロボカン2時間徒歩
2010.1015 長編1本
2010.1016 バリ発ジャカルタ経由仁川経由成田行