2014.0514 WED

昨年夏。来日したジョン・バダルと上野か新宿辺り(全然違うじゃない)を歩きながら彼が「あ、そうだカンボジアでクィア映画祭があってプログラミングを手伝ってるから、行きたければ新作を含めて特集を組もうか?」と言われてそれはいいアンコールワットもアンコールワットもアンコールワットも、と自分らが小躍りしていると「そうだね、プノンペンから移動すればいいよ」てな気楽な感じで話して何となくそのまま今年になり、ジョンも忙しいので連絡しそびれていましたがああそうだ、そろそろ有りか無しかだけは聞いとこう、とメールをしたところ「映画祭は開催予定、時期未定、詳細後日」との返事が来てからややあって主催者を紹介してくれて直截やりとりを始めたもののどうもこの人は一人で全部やっており、かつ会場も自分で運営している所らしい、ということは映画祭以外の仕事もあるわけで、連絡もかなり途切れがちになりつつも結局カンボジアでは『すべすべの秘法』のみ一回上映、ということで話はついて、どうもこれは主催者であるニコ(ドイツ人らしい)の運営する会場での特集上映っぽいな、という感触がしてきたのでいわゆる「映画祭」的な対応はないものとして自分で宿を手配しスケジュールを決め、国内移動の飛行機を取って米ドルの小額紙幣が一番有用、ということで前々日に大黒屋で買ったりしつつもうほとんどこれはアンコール遺跡観光のついでに上映がある、というくらいの気持ちで行くのがよろしいであろう(かつてなく観光メインっぽくなるらしい。アンコールについての予習は時間がなかったのでプノンペンでします…)。

今回は初めて乗るベトナム航空のホーチミン経由でプノンペン、で映画祭を終えたらカンボジア・アンコール航空でシェムリアップに移動してアンコール遺跡を3日で回り(ジョンからは「3日トゥクトゥクを借り切って回るといい」てな助言をいただいた。ちなみに彼はその時期はカンヌだそうで、会えない)そのままホーチミン経由で帰る事にした。成田からホーチミンまでは特に問題もなくて、空き時間があるのでお茶でも、とフードコートに入ったらもしかしてWiFiが使えるのでは、と気がついて聞いてみるとレシートにパスワードが書いてあると言う。ので試してみるがなかなかつながらない。別の店(ちなみにバーガーキング)の信号も来ているのでそれほど食べたいわけではなかったアップルパイを注文してまで試してみたが接続したり切れたり、でぼちぼちとつながるばかりで一応緊急連絡はないことを確認して切り上げ、搭乗ゲートに向かう。がチケットに書いてある番号のゲートには自分らの飛行機名はなく、出発リストモニタを見ると全然別になっている。そちらのゲートに向かうと更に「遅延」となっており、もう少しあのフードコートにいても良かったという事だがこのまま待つ事にする。イマイズミコーイチは売店の赤地に黄星のベトナム国旗デザインのTシャツに引っかかっており「でも同じようなのを持っていたような気がする…」とぶつぶつ呟いている。自分は蓮花茶に魅かれるが自宅にまだあるので我慢した。


この「緑茶」は砂糖入りで何と言うか、はちみつレモンみたいな味でした。

やっと搭乗開始で飛行機に乗り込む。既に暑い。自分はベトナムには長年意味不明な憧れがあっていつか来たいと思っていたのだけど今回は乗り換えだけか、とお釣りで来てしまったドン(米ドルで払ってもセント以下のお釣りは現地通貨で返ってくる)をカバンにしまってプノンペンへ、とは言え45分くらいですごく近い。機内でペットボトルの水だけ貰ってあっという間にカンボジア王国に到着いたしました。日本以外の「王国」に来るのって初めてかも。スーツケースを引き取り、自分らはインターネットでヴィザ(観光でも必要)を申し込んでいたので2枚プリントアウトしたうちの1枚と、これはずいぶん久々に書いたような気がする「入国書類」を入管で渡し、やっぱり手数料とかで800円ほど割高だけど事前に用意してきた方がラクだわ、と現地発行する為にまず写真撮影コーナーに並んでいる人の列を尻目にすんなり入国できたので、飛行機が遅れた割にはほぼ予定通りの時間進行。税関もスルーパスだったし。

ニコは空港に車を手配しておく、と言っていたがその前にやることがある。自前のWindows PhoneとiPad mini(どっちもアンロック)に入れるSIMカードを買うこと。事前に調べて国内3位だけど唯一LTEを提供しているらしいキャリア「Smart」にする事に決めていたので探すとあ、出口を出ていきなりあった。誰も並んでないので店員くんに「音声+データ通信マイクロとデータ通信ナノを1枚ずつくらはい」と言うと「ではパスポートを」とコピーを2枚取られてそれにサインをしたら後は全部やってくれる。電話はデータ2.5GBで5$+通話量のチャージを5$、iPad用は念のため5GBが10$で合計20$。これでも十分安いけど、結果として実質9日間滞在して結構使ってかつSIMロックされてる国内携帯2台にテザリングしてもそれぞれトータル1GBも行かなかったので、半額くらいで済んだかも。しかしこの若い店員くんは非常に優秀で日本語表示になってるiPadをすいすい操作してました。かいつうかんりょう。


プノンペン一発目写真

一服してから駐車場方向に向かうとドライバーさんが自分の名前を持って(逆さまだったけど)待っていてくれた。「(飛行機が)ディレイ」と困ったような顔で言うのだが、いやそれは自分が携帯SIMを買ったりしていたからです。ニコからは「後で払うから、着いたらひとまず払って領収書をもらっておいて」と言われていたのでこの人は単なるタクシーの人。車の中から見える風景は、知っている中ではやっぱりジャカルタに近いかな、クメール語(文字)は全く理解できないので目が回りそうです。途中交通違反で警官に止められたドライバー氏が絶妙な手つきで賄賂を渡して見逃してもらっているの眺めたりしていたら30分くらいでホテルに到着し、料金を払う。宿は自分で手配したのでとにかく会場に歩いていける距離のところ、という選択肢では悩むほどの候補は残らなくなり、値段もお手頃なこの「ロイヤルイン」つうのにしてみましたがどうでしょう。チェックインして部屋に上がり、十分広いしバスタブもあるしバルコニーも付いてるしツインベッドだし、とほぼ満点だが残念ながら禁煙。予約時には喫煙室をリクエストしていたのでフロントで聞いたら「喫煙可の部屋はありません」とのことで全室禁煙に変わったのかもしれない。バルコニーから見ると花火が上がっているので何かのお祝いか、と思うと今日はシハモニ国王の誕生日だったのでした。

シャワーを浴びて(少し待てばちゃんとお湯が出る)部屋ですこし休憩して、ニコに電話する。「今着いた、まだ会場にいるならちょっと会いに行っていい?」と聞くと「もちろん」と言ってくれるのでお土産セットを持って行くことにした。地図によると近いはずだが方向も自信が無いのでおずおずと出発する。で、ここで小関門があって信号も横断歩道もないのであります。会場とホテルは道を挟んで反対側にあるはずで、また向かう方向にもT字路がいくつか、そして交通量はかなり多い。ええと2010年のジャカルタ以来久しぶりに自分の裁量で渡る、をやらないといけない(特にバイクがおっかない)のでしたがまあ何とか渡って会場「Meta House」が見えてきた。一階はギャラリーのようでなんか展示しているが既に閉まっており、左手の階段を見上げるとレインボーフラッグが掲げられているのでここでやんしょう、と上がってみると吹き抜けの「屋外」の白壁になんやら投影中で、シアター部分に屋根はあるものの他は室外、道路の音がダイレクトに聞こえてくるので昔バリ島でゲイクラブの向かいで『初戀』上映した時の事を思い出しました。


この上やな

ニコらしい人が見当たらないのでSMSすると「中のカフェに居る」との返事が来たので既に端っこの座布団席で寝始めていたイマイズミコーイチを揺り起こして冷房の効いたカフェと言うかバーに入る。でかい白人がいたのでこの人がニコであろう、とご挨拶して上映ディスクを渡し、土産(とらやの羊羹詰め合わせ。最近はこればかりで外国人に羊羹食わせて反応を見る、というのが恒例となっている)をでは皆様で、と差し上げてから「なんか飲む?」と言われたのでおおHoegaardenがメニューにあるしかも安い、と喜んで乾杯する。食事もできるよ、と自分は麺を、イマイズミコーイチは炒飯を頼んでニコと話をする。ちなみに「マイワイフが」とか言い出したので少なくともゲイではない(お土産にBadiをあげちゃったけど、ゲイの友人も多いそうなので見せてやってください)ようだ。彼はベルリン出身で自身も映像を作っており、かつこのシアターというかアートスペースを持っているが、現地の性的少数者の運動を応援したいという気持ちもあってプノンペンで毎年この時期に開催される「プライド・ウィーク」に合わせて5年前からLGBT映画祭をやっているそうだ(やっぱり特集上映っぽいです)。UPLINKみたいな感じかも。

プログラムを見る限りではカンボジア物はドキュメンタリー、それもトランスとレズビアンが多いので「カンボジア人ゲイについての映画って無いの?」と訊いてみたのですが、「やっぱり見た目の華やかさのせいか、レディーボーイを撮った作品なら結構あるんだけど(ありすぎて自分は少々食傷気味、とニコ)そうではないタイプのゲイが登場する作品はなかなか難しい」という返事。つうかこの会場も欧米人ばっかりで未だカンボジア人ゲイに出会えておりません。そもそも「ゲイ・シーン」というかバーやクラブなどでさえここではまだ10年未満の歴史しかない、自分が来た頃は本当に何も無かった、とニコは言う。カンボジアの都市部では割とゲイ男性は比較的生きやすいけど、それと比べるとレズビアンへの不寛容はかなりなものがある、とも。何せ女は結婚して子供を産むものだ、という強い社会的圧迫があるようで、ニコの奥さんはカンボジアのレズビアンカップルについての映画を撮ったそうだ。とここでその「奥さん」が出てきて(カンボジア人でした)ご挨拶。なかなか豪快そうなお姉さん。明日上映されるようなので観に来よう。

しばらくニコとぐだぐだ話してビールをお代わりしてさて帰るかね、とお会計をお願いしたらウェイターさんに「会場持ちです」と奢られてしまいましたありがとう。タクシー代を精算して、さすがに疲れたのでホテルに戻って寝ます。途中でかいコンビニと言うか生鮮の無い小さいスーパーと言うかみたいのがあったので水を買って歩いて帰った。夜も遅くなったせいか車もバイクもあんまり多くなくて、行きより安全だった。「明日は必ず朝ご飯(無料)に行く」と毎回これにだけ妙にこだわるイマイズミコーイチが何度も宣言するので、ではバルコニーで煙草を喫ってからベッドの蚊帳を吊りましょうか。


2014.0514 出国、プノンペン1日目
2014.0515 プノンペン2日目
2014.0516 プノンペン3日目、『すべすべの秘法』上映
2014.0517 プノンペン4日目
2014.0518 プノンペン5日目
2014.0519 プノンペン→シェムリアップ1日目
2014.0520 シェムリアップ2日目
2014.0521 シェムリアップ3日目
2014.0522 シェムリアップ4日目、帰国