2014.0520 TUE

起きて朝飯ビュッフェくん。スロースターターのチームハバカリなので食堂に行っても誰もおらんがな。8時に起きて8時半に朝飯、とか言っていたのに寝坊してしまい9時、出発まであんまり時間がない。レストランにはかなり豊富に食べ物があるけど最初はどうしても果物、マンゴーはうまいのにパイナップルは何だか果汁が少なめで、あんまし。韓国人向けにキムチまでありましたがなんかカンボジアでキムチってのもね…、と最終日まで手は出さず、普通にパンとか食っているうちに食欲が出てくるので結構食べてしまったもののこの辺で時間切れ(明日はもう少し早めに来よう)。部屋に戻って大急ぎで支度をしていると電話が鳴りフロントから、「ドライバーが来ました」のお知らせがあった時点で9時55分(約束は10時)。遅めの時間で頼んでおいて良かったとは思うもののこれが11時でもほぼ同じ展開だったであろう、という気はする。

急いでロビーに降りて、自覚的には涼しい顔してドライバーさんとこんにちは。意外な事に若い男の子であるがこの3人の中では唯一運転が出来る人なので勿論この人が一番偉い。では行きましょう、とすたすた歩いて行くので外に出るとそこは既に猛暑空間で、直前まで冷房馴れしていた身体がしばらく付いていかない。あ、そうだと自分はフロントに戻って昨日のATMで出てきてしまった100$札(は非常に使いづらいので)をくずしてもらっている間にイマイズミコーイチが彼に名前を聞いたらしくキムくんだそうでした(良く見たら車体に「Mr. KIM」と書いてあった)。キムくんは座席の隙間に差し込んであったパウチされた地図付き案内板みたいなものを取り出し「どこへ行きますか」と訊いてくるので「まずバイヨン、午後にアンコールワット」という超ひねりのないリクエストをすると「判りましたそのルートだと途中でタ・プロームに寄れます」何それ知らない、などと不勉強ぶりを露呈すると初手から舐められるかもしれないので、では本日はそれでお願いします、ゴー。


向こうの森がアンコールワット

有名な遺跡は大体ホテルから見て北側にあるので北上すると、道順としてはアンコールワットの方が近いので先に着く、のだけれど午前中は逆光になるため、早起きして朝日を見るとかでなければ午後の方がよいらしい(と、ガイドブックにはあった)。遺跡エリアに入る前に自分らはまずチケットを買わないといけない。いくつか種類があるが3日間使えるのが40$、というのが今日から最終日まで通う自分らに一番合ったプラン。トゥクトゥクは美術館の券売所みたいな建物に着いて、自分らはウェブカムみたいなカメラで顔写真を撮られて2人分の料金を払うと模造紙みたいなチケットがやって参りましたわーい。では、と車に戻って先に進むと青いシャツを着た係員が道路沿いの交番みたいなところから出てきて「チケットを」と言うので渡し、そこにパチン、と丸穴をあけてこれが「1日目」と言う事のようでした。有効期限は今日から1週間になっているのでこの間で3日使えますよ、という事らしい。これでようやくアンコール遺跡観光の準備が整いました。

また走り出す。キムくんは「アンコールワット」と濠に囲まれた向こうを指さしてくれる。うん、これは後回しだけど入口からだと写真で見た感じとは違うね、と思いながら通り過ぎ、しばらく森の道を走ると石造りの建物が見えてきた。「サウスゲート」、これがアンコール・トムの南大門でした。最初の目的地はこの塀に囲まれたちょうど中心にある。何枚か写真を撮ってまた走行(ここからは徒歩?と聞いてキムくんに笑われる)して、これは歩けないわなあ、と思い始めた頃に車はバイヨン【Bayon】前に到着した。すげえ。車を降りるとキムくんは「では近くで待っているので」というような身振りをしてトゥクトゥクを動かしてどっかへ行き(伏線)、自分らは眼前の巨大な石の山を前に茫然としている。でけえ。でけえ&すげえ、しか言えないままの自分らは入口に吸い込まれていく。正方形の寺院なので取りあえず直進していくと階段でどんどん上にあがって行く。有名な四面体の顔がだんだん近づいてくる。上に、と言っても頂上には上がれないのでそんなに高くへは行かない。以前言ったボロブドゥールに少し近い感じかも。内部はかなり修復工事中で瓦礫が山になっている部分もあり、こんなにばらばらに崩れちゃったのをどうやって戻すんだろうか、と思いますがこの遺跡はこの国との、というフラッグが掲げられていてバイヨンは日本も修復事業に関わっているようでした。イマイズミコーイチはしごく気に入ったようで「しかしこの顔四面体はよい。作った人は頭がおかしい」と妙な褒め方をしていました。


よんめんたい【Bayon】

で、この建造物はピラミッド型なので中をぐるぐる回っていると自分たちがどこから入ったのかよく判らなくなってくる。ここは見た…ような気がするけどここはまだだっけ、と何周したのかもあやふやなままですが全部見たかな、と適当な所で出てみたところあれ、入ったのはここだっけ?何台かトゥクトゥクは待機してるけど自分らのはない。ここじゃ無かったのかなあ…と外側を一周してみるがキムくんはおらず、途中イマイズミコーイチが「みず…」とふらふらと売店で2本1ドルで購入したりしているうちにやっぱりここから入った…はず、と元の場所に戻る(打つ手なし)。客引きしているドライバーが木陰で座り込んでいる自分らのところに寄ってきて「君らのドライバーは帰っちゃったんだよ、ウチのに乗って行きなよ」と適当な事を言うが、まだ1ドルも払ってないのに帰るわけがないので無視してホテルに電話する。ここらは電波が弱くてデータ通信は途切れがちなのだけど電話は普通につながった。「ハロー332号室ですけど、ドライバーとはぐれまして(バカすぎる)連絡取れますか?」「オー・ケー(バカすぎる…)」という会話ののち、わりと電光石火、と言う感じでキムくんがのったトゥクトゥクが予想外の方向からやってきた(よかった)。「この辺は車を止めちゃいけないので、少し離れた駐車場で待ってた」との事。この先も毎回ホテル経由で連絡するのもアレなのでキムくんの携帯番号を教えてもらった。

さて次。しばらく走ってタ・ケウ【Ta Keo】の前を通り過ぎ、タ・プローム【Ta Prohm】に到着する。「ここで待ってるから」とキムくんは今度は割と場所をはっきり示して笑う。ここでチケットをチェックされる(見せるだけ)で、係の人はこちらが日本人と察したのか「アリガト・アジノモト」と言われた。「何故かは判らないけどこれを言うとウケる」と判っているらしい。さてタ・プロームはバイヨンと同じくジャヤーヴァルマン7世が作った寺院。樹木による浸食がかなり進んでいるので至る所で巨大な木が遺跡を割っている。元々は一直線で進めるはずが途中いくつも瓦礫で通行止めになっているので横に行ったり回ったりしているうちに急に「こっち←」みたいな看板に出くわしたのでどうやら一応存在する順路を逆に歩いていたらしい。木の床を追加して整備されている辺りに出てくるとそこでは韓国人団体客が「アンジェリーナ・ジョリー」などと訳の判らない事を言い合いながら代わるばんこに写真を撮っていて全く進まないのでまあいいやオッパー江南スタイル、とルートが逆のまま適当に歩いてまた馬鹿でかい木が建物にめりめりめり込んでいるのを口をあけて見上げるのみ。反対側ではトンカントンカン音がしており、足場を組んで修復している。ここはインドが直しているようだ。日陰があまりなくて寺院内の狭いスペースに避難するとこちらは意外と湿度が高く、何だか軒下にもぐりこんでいるような気持ちになる。イマイズミコーイチは「ぼくは爬虫類なので薄暗くて湿ってて涼しいところがすき」などと言いながら隣でにょろにょろしているが。バイヨンと違って縦長なので端まで行ったらまた同じだけ戻らないといけない。一直線に戻れないので果たしてこの方向でいいのか、と悩みながら何とか元の入り口にたどり着いて、今回は(当然ながら)キムくんはちゃんと居たので、車に乗り込む。


めりめりめりめりめり【Ta Prohm】

「どうしますか、ランチにしますか」と言うのでそうだね、イマイズミコーイチは「ぼくは食事はしないけど、お茶が飲みたい」というので寄ってもらうことにする。キムくんは「どんなところがいいですか」などとは一切聞かずに中華料理屋みたいのに直行、到着したら店の前の休憩スペース(ハンモックが吊ってある)で速攻寝だしたので何か提携しているのであろう。まあ自分らもレストランを知らないし、何でもいいと言える。注文をして交代で煙草を喫っていたら土産物売りの女の子に捕まってしまった。絵葉書とかマグネットとか、「イッコイチドル、サンコデニドル、ゴコサンドル」とお経のような日本語で攻めてくるので「要らない」と言うと「イラナクナイ」と返事をするので「『要らなくない』という日本語はややおかしい」などと通じるはずの無い事をくどくど言ったりしているうちにご飯が来たようなので店に戻る。五目麺のような汁そばを食べながらイマイズミコーイチがアイスコーヒーと一緒に頼んだマンゴーを少し分けてもらっていやあマンゴーがうまい。食べ終わって外に出ると今度はイマイズミコーイチが土産物ガールに捕まり、最終的に根負けして椰子の葉を編んだ魚のマスコットを買っていた。「いや、一個買ってぶら下げておけばこの先も寄って来ないかと思って」だそうですが逆に「買う客」としてマークされるのでは。

いまは15時前くらいか、大抵の遺跡は18時前に閉まるらしいのでちょうどいいかもしれない。では、とアンコールワット【Angkor Wat】に向かってもらう。さすが超メジャー観光地だけあって道を挟んだ遺跡の反対側は売店などが並んでいて整備されているが、遺跡側では人工物を極力排しているようで、やたら人が居る事を除けば絵葉書のようである。でも入口からだとまだ、写真で見なれた例の塔は見えないのだね。チケットチェックがあって(見せるだけ)濠に渡された石の参道を結構歩く、日差しが強烈でして首筋が痛い、とここでようやく自分が日焼けをしているのではないかと気が付く。今朝はバタバタしていて日焼け止めを塗ってくるのを忘れていた。美肌とかそういうことではなく自分は焼けやすい(そして剥ける)のでまずい、とリュックから手ぬぐいと帽子を取り出して…手遅れっぽいですがお父さんお母さん、僕はここまで来ました。外側から見えていた門をくぐると有名な中央祠堂が見えてきた。さすがに整備されているのでさっきのタ・ブロームとは違って迷わず行ける。何だかやたらどんどん上へ昇るようになっているのでギシギシ言う木の階段を上って塔の最上部へ(行く階段は結構こわい)、レリーフのアプサラ(天女)の胸の部分だけつるつる光沢があるがみんなが触るので光ってしまっているとの事。


塔は5本なのです【Angkor Wat】

塔から降りて、またぐるぐると中を廻る。バイヨンでもそうだったけど要所要所に後から持ち込んだらしい仏像があって、これがまたちょっと立ち止まって見てしまうような絶妙な感じで置いてあるのでついぼんやりと佇んでいるとそこに居た尼さんが何かを唱えながら赤と黄色の紐を僕らの腕に結び始め、最後に両手でそれを包み込むように握ってくださり、どうしたもんか判らないけど一応拝んでお布施を入れて立ち去りました。そこから更に闇雲に歩き、一応ドン突きまで行ったのであまり人も居ないので座り込んで風が汗ばんだシャツを涼しく乾かして行くのに任せていると下の方に物売りの子供が作戦会議をしているのが見えたので降りるのは止めよう、と遠くに見える猫の集団を眺めながらガイドブックを開き、一番外側のレリーフを観ていなかった事が判ったのでまた歩き出す。アンコールワットを一周しないといけないので結構たいへん。しかしどうも向こうからばかり人が来るなあ、と思っていたら「こっち←」という看板があってどうも自分は注意しないで歩くと順路を逆回りしてしまうらしいオッパー江南スタイル。乳海攪拌の浮き彫りは評判通り凄かったです。これで一通り観たかな、と一番裏側の所から地上に降りて、そろそろ日が暮れ始める中を直進するとそこはエリア内の売店街。何か飲もう、と氷水の入ったケースを見るが飲みたいようなものがなかなか無くてやっと100%リンゴジュースを見つけたのでそれを買い、途中何度か座り込みながらお濠の外までやってきて一服する。思ったより夕陽は赤くなくて、少し離れたところで民族音楽みたいなのを演奏しているのが聴こえている。自分らが居る辺りにはザルに山盛りにされた虫の佃煮を売りにきたおばさんが居てそれを子供がつまみ食いしているなど。

結局3時間くらい居てしまった。観ようと思えば半日居られるね、とイマイズミコーイチと言いながら道路に出た途端、まだ物凄く遠くに居るのに既に僕らを見つけたキムくんが手を振っているのが見えた(視力いいなあ)。「良かった?」と笑うのでうん、と返事して「ホテルへ」とお願いする。「夜は出かける?」と聞くので市街地で飲むのもいいかな、と一瞬思いましたが流石にちょっと体力が残ってないのでいや、今日はこれでお仕舞いにします。ホテル前に止まって、ここで初めてキムくんと支払いの話をする(朝にしとけよ)。「3日で50$」というのは自分の聞き間違いで「1日20$、3日で60$」の普通に×3日でした。まあこの人なら信用できそうなのでいいです。「支払いは最終日で、ホテルにではなく自分に直截」ということで全部クリアになり、では明日も10時にホテルの前で、と約束をして部屋に戻った。…かなり健全な客だと思います。3日ぶっ続けで遺跡巡り、というスケジュールでなければ一日くらい市場とか飲屋街でも良かったんだけど今回はそれは無しかな、大人しくレストランで食事をして昨日買った黒ビール(恐ろしい事に8度もある)を呑んで就寝しました。


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2014.0521 シェムリアップ3日目
2014.0522 シェムリアップ4日目、帰国