2014.0518 SUN

昨日は朝の7時から活動していたのでかなり良く眠れて、でも朝飯には間に合うよう起きる。今日はパンメニューにしてみるけどしかし毎回このフルーツジュースは微妙な味、まあ大した量じゃないのでいいですが。気がつけば今日がプノンペン最後の夜になるのか、まだ自発的な観光をしてないね、と昨夜気付いたので今日くらいはどっか行こうか、ここはあんまり観光名所があると言う感じでもないので街歩きだけでもいいのだけど、とは思いつつ来る前には博物館くらいはアンコールワットの予習として、と言っていた事を思い出したので地図で調べだす。国立博物館は王宮の隣、あと博物館ってあったっけ、とガイドブックを見返すと…あ、ポルポト時代のジェノサイド博物館があった。これは観ておこうか、とは思うもののイマイズミコーイチが観たいかどうか判らないので一応聞いてみる。「あの、ぜんぜん楽しくないと思うのですが虐殺博物館に行きたい、あと普通の博物館」と言うと「いいよー」との返事が返ってきた。では出かけましょう。


乗り込んでゴー

で、2つの博物館はホテルからはそれぞれ同じくらいの距離のところにあるのだが残念ながら方向が全然違うためあそこにいくならついでに、という感じではない。いずれにせよトゥクトゥクに乗る必要がある。昨日雨で足止めを食っていた自分らにすかさず営業してきた運転手がホテルの前にいたので「トゥール・スレン(ジェノサイド博物館)」と言うと5ドルだ、と言うのでこれはたぶん高いのだけど自力で頼むのが初めてなもんで了承する。取り敢えずその次に国立博物館に行けたらいくし無理そうならホテルに戻ろう。頑張れば一箇所くらい、明日の朝に行けなくもないし。所要時間は10分くらいだったと思う。しかしトゥクトゥクは便利、というか街がトゥクトゥク仕様になっているというべきですが正直交渉しなくて良い交通機関(電車とか)がなくて徒歩も困難、というのはちょっと面倒くさい。

「戻ってくるまでここで待ってるから」とドライバーは言うのでまあそれでもいいか、と博物館に入る。正直気が重いが何で観光一発目をここにしたのか、と言うといくつか回った最後がここになってしまうとどんよりした気分のまま一日を終える事になるだろう、という思ったからではありますが、入場料2ドル、ガイドはいいですカタログもいいです。70年代後半、元々高校だった建物を政治犯収容所にした場所がそのまま博物館として残されている。建物の造りからして学校なところがまた辛い。室内は涼しいが、尋問(拷問が行われた)に使われた部屋にしろ部屋を煉瓦でトイレの個室くらいのスペースに区切った独房にしろ、居心地がいいとは言い難い。最初の棟を見たところで(閉まっている部屋もあるが基本的に3階まである)イマイズミコーイチはへばり、中庭のベンチで動かなくなってしまった。売店で水を買ってきて渡し、じゃあちょっと途中は先に見てくる、と一人で鉄のベッドが置かれただけの、或いは何も置かれていない元教室を見て回って、まあここは飛ばしてもいいと思うよ、と戻ってきて声をかけたイマイズミコーイチの背後ではなんだか知らないけど見事なジャックフルーツが成り下がっている。


この中だけ時間が止まっていました。

その他、逮捕時に取られた膨大な量の写真が一面に展示してあるのや、生還した人(14000~20000人がここへ送られたとされているが、生きて出られた事が確認されているのは現在8人のみ)が描いた絵、自白調書、元職員の証言、特別法廷で裁かれている幹部たちについて、の展示を見て回るのは、まあ普通に学校の全てのフロアを回る以上に疲れるものでした。ああちょっと俗っ気が不足してきたので煙草を、と売店の隣でぼんやりしていたら立てかけてあった(何故)魚の干物をものすごいガッツで喰い千切ろうとしている猫がいました。彼方の門前では例の運転手が僕らを見つけて「行くよ」みたいな(勝手に決めるな)感じで呼んでいるが、うん全て観た、ということでトゥクトゥクに乗り込む。「次はどこだ?ランチか?」ってどこへ連れて行こうとしているのか、まだ時間はあるので「ナショナル・ミュージアム」と言うと「OK」でまたしても10分くらいかな、国立博物館へ。照り返しが厳しい。

入口からいきなりでかくて間抜けな石像がお出迎えしてくれるのでうれしい。ジャカルタ国立博物館の中庭に匹敵する間抜けさだが、なんか相撲を取ってるガルーダみたいな像でした。昔からクメール彫刻(特に人物像。どことなく古代エジプト美術っぽいところとか)には惹かれるものがあるので照明を落とした展示室内をゆっくり移動する。途中供花の押し売りのようなものがあり適当な神像の前に供えてお金を入れる。そんなに大きくはないので一周するのもそんな大変ではないけれど、一通り観終わったところでイマイズミコーイチが座りたそうなので中庭に出る。暑いけど日陰ならなんとかしのげるかな、中庭は仏像を中心に4面の池があり、睡蓮が咲いていて、傍らのプルメリアの香りも強くする。池の周りでは子供が鯉に餌(売ってた)をやるのに夢中になっている。明後日からのアンコール遺跡が楽しみになってきた。そろそろ、帰ろうか?


いらっしゃいませ

運転手が待ちかまえているので「ホテルへ」と一言だけ言って、やはり10分くらいで戻る、とその前に「お茶飲みたくないか、お茶」とホテルと反対側の店の前に止まった。まあ飲んでもいいかと思ってではまず車代は、と訊くと「3区間走ったから3倍で15$」…でぐぬぬ(ちゃんと計画立てて最初に交渉しておけばよかったドライバーさんさようなら)。お茶屋は「POPTEA」という名前のチャラチャラした感じのお店でプラカップに好きな飲み物と具(タピオカとか)を入れてオーダーする奴ですね、自分はミルクティーにでかい黒タピオカを入れて甘さ普通、で正解でしたうまい、そして結構いいお値段。あっという間に氷だけになってしまうので根性で全てのタピオカを吸い上げて、外で一服してから道を渡り部屋に戻って、昼寝しよう。

昨日の眼鏡くんが「僕の映画」と言っていたのが何だか判らないものの7時半に上映があるらしい。のでそれまでに会場へ行くのですがその前に夕飯だな、外食がしたい実は何度か目にしていて行きたい店がある、と自分は提案する。Meta Houseのちょっと先に「PHO24」というチェーン店みたいな店があってあれはきっとベトナムフォーの店だ、隣の国だからこういう店でもそこそこうまいかも知れん、と言うとイマイズミコーイチは「いいよー」との返事、では出かけよう。いつもの道を途中まで行って会場は通り過ぎ、右手にぐっと曲がるとまさにファミレスなフォーの店、一時期日本にもあったらしいけど。自分は普通に鶏のフォー+ビール、イマイズミコーイチは炒飯頼んで食後にベトナムコーヒーが旨かった、と言うておりました。料理はまあ普通のお味でした。あまり落ちつける感じでもないのと時間も無いのでささっとおしまい。

会場に入るとなんか「ミス○○」みたいな白のスーツの化粧バッチリなお姉さんが「キャー来てくれてありがとうー」とか抱擁してくるのでああ眼鏡くんこんな姿になっちゃって、と思いつつ、どうも今日は眼鏡くんの友人知人がわんさか来ているようで誰かが入ってくるたびにそんな事をしている。で、今日は何の上映されたものは何か、と言いますとこのBeing-meプロジェクトというもののドキュメンタリー短編企画でした。作家の参加国は中国・シンガポール・フィリピン・ネパール・カンボジア・インドネシア・タイ、でカンボジア作品の主演が眼鏡くん。ちなみ中国作品の監督は友人ファン・ポポでした。内容は千差万別、ですが基本的にはポジティヴな内容(と登場人物)なので作家主義と言うよりは「観た人が元気になれるようなものを」てな企画なんであろう。眼鏡くんの場合も誤解されたりいじめられたりもしたけど理解者もできて…てなラストでした。終わった後のQ&Aは眼鏡くんと監督(女性)のほぼ講演会と言ってもいいもので質問も尽きないし眼鏡くんも「私がもし首相になったとしたら」などという壮大な話を始めてこのまま選挙にでも出るんじゃないかという感じではありますがさすがに喉が渇いたのでバーに避難しビール。とそこにサオが居て「上映が終わったらゲイバーに行きましょう」と言うのでおお、それは嬉しい。プノンペンに居るうちに一度入っておきたかった。


左より監督&眼鏡くん(眼鏡外してたけど)

で、かなり押しているけどこの後がクロージング作品。韓国のイ=ソン・ヒイル監督の三部作 "ONE NIGHT AND TWO DAYS"、日本で観たけど観られるものならもっかい、ということで席に座る…があれ、自分ら以外は誰も席に着こうとせずぞろぞろ帰っていく。眼鏡くんも「これから一緒に食事でもどう?」と声を掛けてくるが「次を観るので、ごめん」とお断りする。サオもじゃあ行きましょうか(ゲイバー)みたいな感じでやって来たので「え、この韓国映画は?」と訊くと「???」みたいな顔をしたのち、やがていきなり上映が始まった。どうも忘れてたっぽい。でも相変わらず僕ら以外誰も客席にいないけど。1本目が終わった時点でサオがやって来て「(これから観るならゲイバーは中止して)私は帰るわね、明日シェムリアップに移動なのよね、気を付けて」と言ってくれて帰って行き、この時点でニコはそもそも居なくなっており、何なんだこの映画祭閉幕。

映画は観た事があるので英語字幕でもかなり堪能できましたが途中の音飛びがひどくて、それも肝心なところで飛ぶのでがっくりする。この作品は3本で160分と長いので最後は本当に誰もいなくなってバーも閉まってしまい、映画が終わる頃には自分らとバーのオーナー(兼テクニカル担当らしい)だけになっていて、お互い微妙な表情をしたままどうも、と挨拶をして何とも釈然としない感じの「クロージング」でした。こんなんだったらさっきの「Being-me」をクロージングにした方がよほど良かったんじゃないか(事実そうなりかけてたけど)と思いますし第一、誰も嬉しくないだろう。勝手に来ちゃったゲストみたいな自分らが言うのはお門違いだけど、今回のは「映画祭」と言うには上映がぐだぐだ過ぎた。プライドウィーク関連の上映イベント、と呼ぶしかない。主催者ニコの善意からのイベントであるのは間違いないがカンボジアには今、インドネシアにおけるジョン・バダルのような人は居ない(日本にだっておらん)ということだ。ただしインドネシアと比べていいのかどうかも判らない。むしろより共通点も多そうなタイにも継続的なLGBT映画祭は無いようだし、それよりも何よりもまだ若い国なのだ(人口の七割が20歳以下らしい。1991年頃までに生まれた人は何らかの形でクメール・ルージュ〜内戦下を生き延びざるを得なかった訳で)。カンボジアで生まれ育った人間が他国でクィア映画祭を経験して、そういったものを渇望して主催するようになれば、或いは変わっていくのかもしれないし、この先もご縁があるといいと思う。


さようならプノンペン

帰り道のスーパーすら閉まっているので何も買わず、仕方が無いのでイマイズミコーイチが買っていたクッキーを食べてミニバーのビールを開けてプノンペン最後の夜、お疲れさまでした。何かホテルの前の道では交通事故があったみたいで人が集まってるけど大丈夫か。明日はいよいよアンコール遺跡に向けて移動。


2014.0514 出国、プノンペン1日目
2014.0515 プノンペン2日目
2014.0516 プノンペン3日目、『すべすべの秘法』上映
2014.0517 プノンペン4日目
2014.0518 プノンペン5日目
2014.0519 プノンペン→シェムリアップ1日目
2014.0520 シェムリアップ2日目
2014.0521 シェムリアップ3日目
2014.0522 シェムリアップ4日目、帰国